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サイアクの帰還

 ギルドメンバーのみが閲覧できるギルド掲示板。


 そういえば、設立以来ほとんど利用していなかった。インすれば皆たいていいるし、人数もまだ数えるほどなので、連絡事項もチャットで全て流せばこと足りる。


 ギルドイベントの主催も特に考えていなかったし、それほど必要としていなかったからだ。


 どれ。ちょっとのぞいてみよう。もしかしたら誰かが何か書き込んでるかもしれない。


 カーソルをギルドウィンドウへ持って行き、そこから掲示板タブをクリックする。すると、思ったよりギルド掲示板は盛況で、色々と書き込まれていた。


 へえ。以外だな。


 その中の一つを適当に開いてみることにする。


 『~キラ・ヤマモトのアニメ日誌~


 ぬを。今日は深夜アニメ『ブレーキワールド』を観たお(°д°)


 ヒロインがぼくちん好みの先輩美少女で、ロリ系妹キャラもでてきて、30分ハアハアしてしまったお(*°q°*)


 やっぱ、俺TUEEEして、ハーレム展開はぼくちんのツボだお。


 明日は期待の新フォームが登場する、仮免ライダーオーゼも観れるし、ぼくちん幸せv(`ω´)v』


 すぐにバックして一覧に戻り、削除ボタンを探す。だが、エルトに権限が無いためそれはできなかった。


 こんなくだらないことを書き込むんじゃない! ギルド掲示板は個人のブログじゃないんだぞ! ヤマモトめ。


 憤慨して、ヤマモト以外にもヘンな物がないか探してみることにした。


 『プンのにっきちょう☆


 ○月×日 はれ


 お腹が空いたので寝ます』


 それだけ!? もっと何か無いの、プン!? ていうか、一日一体何してるの!


 ちょっとプンの生態が気になった。他にも日記は無いのだろうか、そう思っていたら別のがあったので覗いてみる。


 『続プンのにっきちょう☆


 □月△日 あめ


 木綿のお豆腐に、ブルーベリージャム乗せて食べてみたよ。おいしい?』


 おいしいの!? てか、最後疑問系で終わってる。


 でも、最近お豆腐のスイーツなんてあるし、フルーツソースをかけて食べる豆腐もあったような気がする。


 けど、文章見る限り普通の豆腐っぽいし……後でプンを問いただしてみよう。


 そう思って、他にもヘンなカキコが無いか目を光らせた。


 すると、すぐ見つかった。


 『ぶっ殺したい奴リスト


 名称      罪状


 バイトの上司  毎日いやらしい目つきで私を見てくる。あと、ハゲ杉。


 バイトの先輩  七三分けが気に入らない。汗かきすぎワロタ。


 ゼミの同級生A 香水が臭い。


 ゼミの同級生B 私の貸した消しゴム。こともあろうに角を使った。万死に値する。


 ゼミの同級生C 大学にフィギュアとか持ってくるな。オタク乙。


 これを見たやつ 呪う』


 ……恐ろしいものを見てしまった。これはたぶん、グラムだな……。


 う~ん、削除したら本当に呪われそう。ていうか、いい年した大学生が学校にフィギュアなんか持ってくるのか?


 他にもケルやすぺりおるも書き込んでいたが、この2人は比較的まともだった。


 いつの間にこんなに書き込まれていたのだろう。なんだか、自分1人が取り残された気がして寂しくなる。


 何か書き込んだほうがいいのかな……。


「エルト。寝落ちしそうだから、少し昼寝するね。今日もバイト疲れた」


「あ、うん。グラムはバイトやってるんだ?」


「うん。クソマズイハンバーガー売ってる。客も社員も全てがウザイ。あと、おっさんが臭い。風呂に入って溺れ死ねばいいと思う。子供はうるさいし、親はDQNばっかり。時給あげて欲しい。精神的な重労働」


 クソマズイって店員が言うハンバーガー屋……行きたくないな。


「なんか、たいへんそうだね」


「たいへん。でも、楽と言えば楽。笑顔がぎこちないって言われたから、一生懸命練習したのに、次の日。君は普段どおりでいいよって店長に言われた。理解不能」


 それはたぶん……グラムの笑顔が……。 


「じゃあ、寝るね」


「おやすみ、またね」


 ……バイトか。一度はやってみたいと思うんだけど、中々時間が取れないからやったことはない。


 でも、大学生になったらやってみたい。ケーキ屋さんとか……アイスクリーム屋さんとか……この前そんな話をしたら、三上さんに『マリーってかわいいね』と笑われた。


 ちなみに三上さんは公務員になりたいと言っていた。『だって、安定してるじゃん』とのこと。なんだか夢が無い。


 あと、マリーはあだ名だ。……恥ずかしいからやめて欲しいけど。


 渡辺くんにあのヘンな挨拶付きで『おはよう、マリー』なんて言われたら、たぶん私は顔面に思い切り蹴りを入れるだろう。


 バイトは置いといて……さて、グラムもいなくなって1人だ。


 1時間程度で野良のPTに入るのは少し気が引ける。交代要員を同時に募集すればいいのだけど、ヒーラーはなかなか引っかからないから難しいし、途中で抜けますっていうのは、気心の知れたフレぐらいでないと中々言い出せない。


 ソロをするか。ラグリアで露店巡りでもするか。掲示板でも眺めていようか。


「ぬを。ヤマちゃん参上! 今日もばっちりいつも通りだぜいm9(°д°)」


 いきなりうざいのが出た。


「ヤマモト、こん。暇? ならず者の島にでも行ってペア狩りでもしない?」


「ぬを。中尉ではないか! さてはさては、ぼくちんを待っていたな! ぐふふ。よかろう、冴えない上に面白みの無い人生を送る中尉に、すこしばかり付き合ってやってもよいぞv(`ω´)v」


「お前にだけは言われたくないんだけど……あ、そうだ、ヤマモト。ギルド掲示板見たぞ」


「ぬを。ほうほう。ぼくちんのアニメ日誌を見ましたか! 中尉も大好きなロリ巨乳ちゃんが出てくるアニメは今期はやってないけど、来期のアニメに原作が有名ラノベの、ママのいうことを聞きなさいに――」


「全部消しなさい、今すぐ」


「(°д°;)」


「ギルド掲示板は個人ブログじゃないでしょ?」


「ぬを。そ、そんな……プンちゃんだって、日記いっぱい付けてるし、グラムたんのぶっ殺したい奴リストだっていっぱいあるのに……」


「その2つも後で削除するように言っておく。とにかくいい子だから削除しなさい」


「ぐすん(;д;) ぼくちん唯一の楽しみだったのに……」


 ……ちょっとかわいそうな事を言ってしまったかな。


「……わかったよ。とりあえず、最新のだけ残して他は全部消して。1人1つくらいなら、そういうのがあってもいいと思うし」


「ぬを。中尉もやはりママききに興味があったか。フフ。ロリとツインテールとメイドは人類共通の宝ですな(*°д°*)」


「いや、興味ないから。それよりペア狩り。行くのか行かないのか。はっきりしろ」


「ぬを。行きますとも! そうだ中尉。久しぶりにセイラちゃんで出撃したいのですが、よろしいか(?д?)」


 セイラちゃん……確か、ケルと初めて会った日に披露したドワーフの女キャラのことか。


「ああ。あの、セカンドロリ巨乳キャラか。レベルは?」


「ぬを。71ですお(°д°)」


「71!? それって、メインのキラ・ヤマモトより高いじゃないか! 何やってるんだお前……」


「ふふ。セイラちゃんは魔法少女(ドワーフウィザード)なのです。ソロでまったりしてたつもりが、いつの間にかこんなに育っちゃって」


「……普通にキラ・ヤマモトしてくるか? そのほうが落ち着くから」


 中身がヤマモトだと思うと、なんだかヘンな感じになる。


「ぬを。了解しましたであります、中尉!」


 それからしばらくして、オレ達はならず者の島に移動した。


 ならず者の島は海賊の島だ。ヒューマノイドに分類される海賊達が、主な狩り対象になっている。


 南国の島然とした、ヤシの実やらが生い茂る浜辺に、海賊達のアジトがある洞窟や船がダンジョンとして存在し、浜辺はソロで狩が可能だ。


 浜辺に降り立つと、眩しいくらいの太陽が照りつけ、白い砂浜と蒼い海が目の前に広がっている。


 BGMは無いが、波の音がSEとして再生され、目を閉じれば波打ち際にいるような気さえしてくる。


 こんな所で泳いだり、バーベキューをしたら気持がいいだろうな……確か、夏限定の課金アイテムで水着とかあったっけ。別に装備したところで防御が上がったり、特殊スキルが追加されるわけでもない、単なる趣味装備だから興味が無いけど。


 狩りを始めようと、エルトのバフを掛け終えた時だった。


 異変に気が付いた。


「MOBがいない?」


 普段ならこの辺りに下っ端海賊がごろごろしているのだが、どういうわけかどこにも見当たらない。


 もしかすると、他にもプレイヤーがいて、狩りつくされた後なのか……。


 何にせよ、悪い予感がする。


「ヤマモト、ちょっと様子を見てくるから、そこで待っててくれ」


 ヤマモトをそこに残し、慎重に浜辺を進む。少し進んだところで、剣撃のSEや、悲鳴が聞こえてきて、とっさにヤシの木の陰に隠れた。


 GVG。PT同士でPVPを行っていたようで、彼らのまわりに海賊達の死体が無数転がっていた。


 片方のグループには見覚えがある。


 漆黒のレザーアーマーに身を包んだPK。斬魔。心機。比高。戦禍。


 彼の率いるPKギルド、ヴァーミリオンの面々だ。


 そのヴァーミリオンはたった1人のプレイヤーにいいようにやられている。プレイヤー名は7というキャラで、ヒューマンの女だった。


 さらに7の背後には、楓というキャラクターがおり、その隣には……。


 ヒューマンの少年。一見すると、少女のように見えなくも無い。


 細身の体に、キレイなブロンドのロングヘアをなびかせて、愛らしく人懐っこい笑みを浮かべている。


 けど、私は知っている。あの笑みの裏側にあるあいつの本当の顔を。


 忘れもしない。ああ、思い出した。


 あいつだ。


 戻ってきていたんだ。


 ――ルシエド。

ちょっと最近、目の調子が悪いので来週はお休みして

6月20日に更新します。

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