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孫弟子と無理難題

 オレはラグリアへ移動して、広場でしばらく待つことにした。その間露店を一つ一つ巡り掘り出し物を探す。


 すると、もう新装備が取引されているのを確認して、思わず足を止めてしまった。


 ナイト用の片手剣で、76レベル以上から着用できるらしい。カインの剣よりも一回り以上も性能が上だ。名前は『ゴッドキラー』か……ちょっと、ダサい気がする。


 買取インターフェースにドット絵で表示されたゴッドキラーは、赤い刀身の両刃の剣だった。


 カインがこれを装備した姿を想像する。赤い刀身の剣と、青い鎧を装備したカイン……いいかもしれない。けれど、ダメだ。カインでログインすることはできないし、何よりこの剣の値段が法外すぎだ。


 とても買える金額じゃない。でも、きっとすぐに値下がるはず。その時は、買ってしまおうかな。


 ……いつか戻ったときの為に。


「あの~><」


「え?」


 誰かがエルトの前で立ち止まると、チャットで語りかけてきた。見慣れないプレイヤーである。


 種族は珍しくフェイブだ。サイドテールの銀髪を揺らし、黒いワンピースのようなローブに身を包んだ少女であった。


 ヤマモトが見ればハアハア確定。そんな容姿である。


「おやつくださいっス ><b」


「は?」


 何だろうか? いきなり物乞いとは、フェイブを選ぶ人間というのも、やはり変わり者しかいないのだろうか。


「ちょっと、いきなり何の話? おやつとか、意味が解らないんだけど」


「師匠が、おやつくれるって言ってたっス! 自分、ウソ付いたりしてません><」


「いや、オレは君の師匠じゃないし、おやつとかそんなアイテムないんだけど」


「自分、リドキアサーバーから移住してきた、ピリ辛直火炒め高菜炒飯と申しますっス! 昼間ログインしてさまよってたら、punpun321師匠が右も左も解らない哀れな子羊状態の自分をあるべき姿へと導いてくれたのっス! そして師匠は申されました『暁の空に入ったら、おやつ食べ放題だよ~^▽^』と!」


 ピリ辛直火炒め高菜炒飯は、熱弁を振るう。サーバー移住者か。フェイブは珍しいからおかしいと思ったが、さっそく移住者にでくわすとは思わなかった。


 それにしても、いきなりおやつをたかられるとは……。


 でも、昨日ぴゅあにも『おやつも食べ放題だよ^q^』とかヘンなことを言っていたが……まさか他のプレイヤーにも吹聴しているとは思わなかった。


 しかもそれを真に受けるプレイヤーがいるだなんて。


 この冷凍食品みたいな名前の体育会系フェイブ娘も、プンと同じニオイがする。他のサーバーにも同じ様な人種がいるんだな。世界は広大だ。


「エルト大師匠! 自分めをどうか、暁の空の末席にお加えくださいませっス! 自分、フェイブウィザードの上級職『ブラッドハウリング』の60レベルっス! かならずや敵御大将の首を取って、大師匠に差し出して見せるっス!」


「いや、戦国時代じゃないんだから、首とかいらないし」


 なんて物騒な奴だ。無下に断ったりしたら、切腹とかしそうな勢いだ。ちょっとこのテンションの高さは遠慮したい手合いだが……仕方がないな。


 プンめ、とんでもない拾い物をしてくれた。


 オレは観念して、冷凍食品侍こと、ピリ辛直火炒め高菜炒飯をギルドに勧誘した。


 ギルドチャットに視線を移すと、さっそくピリ辛直火炒め高菜炒飯が自己紹介を始める。


「このピリ辛直火炒め高菜炒飯、命の限り働いてプン師匠をお守り致しますっス!」


「何これ?」


「えっと、グラム。なんだか知らないけど、プンの弟子らしい。フェイブの女の子で、ブラッドハウリング……仲良くしてあげて」


「エルトがそういうなら、問題ない」


「ピリ辛直火炒め高菜炒飯さん、よろしくね、ケルって呼んでね^^」


「よろしくっス! グラム殿! ケルの姉御!」


「ぬ、ぬおおおおおおお!? 第二のフェイブっ娘!? ぼくちんの野望にまた一歩近づいたお。ハ、ハアハア(°q°)」


「あなたがヤマモトさんっスね! プン師匠からお噂はかねがね聞いておりますっス!」


「ぬを、ぼくちん有名人? σ(°д°)」


「はい! 暁の空最強のアタッカーにして、才色兼備、みんなの心のオアシス、ヴァルガスサーバー抱かれたい男ナンバーワン、キラ・ヤマモト!」


「ぬを。才色兼備! フフ、どうだ、聞いたか中尉よ。ぼくちんの時代が来たのだ。モテない中尉もご相伴に預からせてやってもよいぞv(`ω´)v」


 面白い冗談だと思う。ピリ辛直火炒め高菜炒飯は非常にギャグのセンスがいい。


「ウケる」


「ピリ辛直火炒め高菜炒飯さんが、楽しそうな人でよかった^^ ギルドチャットが盛り上がるね!」


「『ってみんなの前で言ったらウケるから、一度言ってご覧^▽^』と、師匠が申しておりましたが……ふむ。師匠の言うとおりですね! やはり、師匠は偉大っス!」


「ぬを。(?д?)」


 ヤマモトは冗談であることに気が付いていない。


「では、みなさんこれからピリ辛直火炒め高菜炒飯をよろしくお願いしますっス! 粉骨砕身、猪突猛進、疾風迅雷、下克上! 自分、ヤりますよ~d><b」


 何をヤるつもりだ、この冷凍食品は。


「やあやあ。プンが戻ってまいりましたよ~^▽^ノ」


「師匠! お会いしとうございました~~><」


「おお、イドちゃんだ! 暁の空に加入してくれてありがと~^^」


「イドちゃん?」


「うん! ピリ辛直火炒め高菜炒飯だから、イドちゃん! ふふ~ん。いかにもって感じの愛称でしょ^^ プンのネーミングセンスは今日も冴えています。テヘへ≧▽≦ヽ」


「ごめん、プン。どこからこの冷凍食品みたいな名前から、イドちゃんが出てくるか理解不能」

 

「エルくん、さては英語の成績悪いな~! あわわわ。でも大丈夫! プンは出来の悪い子ほど可愛がっちゃうから!」


「ぬを。ぼくちん、英語も国語も社会も数学も理科もぜんぜんできないお! 保健体育は何でも聞いて欲しいけど! こんなぼくちんだけど、ぜひとも可愛がってね(*°д°*)」


「ヤマモト、お前はただのアホ」


「ひどす! (;д;)」


 グラムは本当にヤマモトに容赦が無いな。


「で、どうしてイドちゃんなの?」


「炒飯って、英語でFried riceっていうんだよ。フライドライス。フライドライスのイドちゃん、かわいいでしょ!」


「自分、イドちゃんっス! ><b」


 やはり、プンを理解するのは不可能かもしれない。でもまあ、ピリ辛直火炒め高菜炒飯は呼び辛いし、本人も気に入っているらしので『イド』と呼ぶことにしよう。


 プンとイドは性格の相性がいいのか、とても仲が良さそうだ。


「で、プン? ちゃんと転クエの内容は確認してきた?」


「ばっちりだよ! アントの巣でロックアントを50匹狩って、悪魔の森でシャドウビーストを20匹、カーズプラントを20匹、ダークミストを20匹狩って、アイスバレーでアイスゴーレムを100匹。魔竜の巣でエビルドラゴンを……あ! これは一匹でいいみたい! ラッキー^0^」


 唖然とする。合計210匹も狩らなければいけないという苦行。しかも、最後の対象MOBは……。


「プンちゃん、それってマジなの@@?」


「ほんとだよー^^ ケルさんも手伝ってくれたらすぐ終わっちゃう><」


「え? う、うーん。すぐはちょっと無理かも……だって……最後のが……ね」


 ケルが言葉に詰まる理由は一つ。エビルドラゴンだ。


「最後のはたった一匹じゃない^0^」


「お前はアホか! エビルドラゴンだぞ! 瞬殺間違いなしだ、ヤマモトが一万回リザなしで特攻してもHPの100分の1も削れない」


「ぬを。なんでぼくちんが一万回も特攻を(°д°;)」


「プンちゃん。エビルドラゴンはね、カオス・クロニクルで5本の指に入るエリアボスなの。普通のエリアボスと違って、100人単位で挑まないと討伐する事が難しいの」


「ヤマモトが100人いれば大丈夫」


 グラムがぼそりと言った。


「ぬを。ぼくちん、どっかの物置のCMみたいだお。けど、100人のダークエルフのお姉さまになら、乗ってもらいたいかも(*°д°*)」


「きもちわるい」


 グラムのシンプルな一言はかなり威力がでかいと思う。


 エビルドラゴン……か。灰色の狼の連中なら狩れるかもしれない。今回のアップでエビルドラゴンの能力が下落して、報酬も上向きされたらしいので、討伐しようという有志を募ればなんとかなるかも……。


 とにもかくにも、運営もドSだな。こんな無理難題な転クエを用意するとは……。


 さて、どうするべきか。

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