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ほじくられた過去、三代目ギルドマスター

 怒られた渡辺くんは、かなりしょんぼりしていた。一体何があったんだろう……。席に着いた渡辺くんは、『バージョン2は不発』みたいな独り言をなにやらつぶやいていた。


 なんだか相当疲れている様子だ。大丈夫だろうか?


 そんなことを考えていると、一時間目が始まった。


 私はすぐに頭のスイッチを切り替えて、勉強モードに入る。一時間目は、数学だ。文系の私としては数学は苦手だ。


 予習してはいるけど、それが絶対ではないし、当てられたりしたらきつい。


 数学の教師は、山本という老教師で、今月末日をもって定年退職するらしい。その後釜はすでに決まっていて、入れ代わりになると言っていた。


 なんでも、若い男性教師らしい。すでに一部の女子の間で噂になっていた。……私は興味が無いけど。


 それよりも、授業だ。


 今日は最初の方で少し例題をやって、山本先生が人生を語りだした。クラスメイトによると、たまにあるらしい。


 そうなると自習同然で、寝ていたり、こっそり携帯ゲーム機で遊んでいたりと、皆自由に時間を過ごせるらしい。


 私も寝ようかな……。


 私の意識はゆっくりと落ちていく。


 気が付けば、そこは草原で……カインがいた。


 これは……そうか、夢か。カオス・クロニクルをプレイしている夢だ。


 私はカインを操作して……誰かと一緒に狩りをしている夢のようだった。相手のレベルは低い。


 初心者を支援していた頃の記憶かな……懐かしい。この装備から察するに、一年前くらいか……それにしても、夢にしては妙にリアルだ。


 初心者のほうはヒューマンのウォーリアクラス……誰だっけ? この頃、私は3人の初心者を育てていた。


 1人は、椛。もう1人は、左 翔太朗。そして、もう1人が……。


 ――ルシエド。


 突然、全身を悪寒が駆け巡る。ルシエド……! ずっと蓋をしてきたのに……何で今になって……思い出すの?


 そうだ。これはルシエドだ! 忘れていた記憶が……封印してきた記憶が次々と蘇る。


 忌まわしい記憶。私がカインを捨てざるを得なかった理由。カインが築き上げてきたモノを粉々に砕いて壊して、それを踏みにじって嘲笑った……。


 ――ルシエド!!


「相羽さん?」


「え?」


 体を揺すられて、私は顔を上げる。どうやら、いつの間にか授業が終わっていたらしい。


「次、移動だけど……」


 クラスの女の子に起こされて、目を覚ました。


「あ、ありがとう……」


 まだ頭がボーっとする……。


 ルシエド……思い出したくなかった……1年前の元凶。


 でも、どうして今になって思い出したんだろう……。



 *****



 4時間目の授業が全て終わり、学生達は昼休みという、仮初の自由を手に入れる。


「ナベ! 俺、決めたよ」


「何が?」


 学生でごったがえした食堂の片隅で、稲田はきつねうどんをすすりながら、真剣な目で俺の顔を見た。


 俺は親子丼をほおばりながら、話半分に聞いておく。どうせ、新しいエロゲーの話だろう。こいつはいつもそうだ。


 今の俺にとって、そんなことはどうでもいい。


 せっかく5時間かけて練習した対相羽 真理奈専用挨拶Ver2が、不発なまま一日が始まったのだ。ショックは計り知れないくらい大きい。くそう。


 俺の相羽 真理奈センサーが、反応を示さなかったというのか……何故だ。


「っていうわけでさ、俺、次の生徒会選挙で生徒会長に立候補するよ」


「あっそ。無理だと思うけど、頑張って」


 100%無理に決まってる。


「俺が生徒会長になった暁には……女子の体操服をハーフパンツから、ブルマにする」


「応援してるぜ、稲田。お前なら絶対やれる! 俺にできることは何だ? 対立候補の闇討ちか? それとも、応援演説か?」


 俺はこいつに全てを賭ける。


「フフ。俺の計画は完璧だ。ブル魔を味方につけようと思っている……」


「な……あの、お前以上にドヘンタイの!? 桜井 浩次こと、ブルママニアこと、ブル魔をか!?」


「あいつのブルマに対する情熱は並々ならぬモノがある。そのエネルギー……きっと俺を高みに導いてくれるだろう!」


「ガンバレよ、稲田!」


「ああ!」


 俺達は学食で固い握手を交わした。


 そして、その日の授業は瞬く間に終わりを告げ、放課後がやってきた。


「相羽さーん。一緒に帰らない?」


 相羽さんに話しかけたのは、火曜日の放課後に一緒に帰るよう誘った女子グループのリーダーだ。


「うん、いいよ。一緒に帰ろ」


 相羽さんはそれに笑顔で答え、二人は教室を楽しそうにおしゃべりしながら出て行った。


 そうか。今朝、俺の相羽 真理奈センサーが、反応を示さなかった理由がわかった。


 何かが……彼女を包む空気が変わった……? たったこの二日で彼女に何があったのだろうか。


 まさか!? 好きな男ができたとか? 恋愛をすると女性は変わると聞いたことがある。


 誰だ……俺のライバルは誰なんだ! 真正面から堂々と罠にはめてやる! そして住所を突き止めて、5万回くらいピンポンダッシュして、逃げ切ってやる!


 ……って、言ったところで何がどうなるわけでもないし……。そうだ。潤だよ! 俺には相羽 潤という秘密兵器があるじゃないか。


 今日、ぴゅあがログインしたら聞いてみよう。


 おっと……今日はもう一つ大事な用事があるんだったな。むしろそっちのほうがデカイ問題だ。


 カインの戻る家を守らなくちゃいけない。暁の空加入を蹴ったんだ。吐いた言葉は飲み込めないぜ? 渡辺 翔。


 その為には。


 ――俺が連子を倒して、灰色の狼の新しいギルドマスターになってやる。

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