紫雲で一杯
掲載日:2026/04/24
紫雲は溶けて
パチッパチッと弾けるような燃焼を終えて緊張したタバコは赤みが引き緩やかな煙を立たす。もわりと立ち昇る煙をを押しのけて、少し、グラスに注がれた宝石の如き氷をぬらぬらと濡らすラフロイグを飲む。
やつれた見た目に誰も声を掛けるものは無い。男は変な人とのしがらみが嫌いであった。過去に何度その理由で人を突き放したことか、思い出しようもないが確かそういう事をしたことは分かる。
彼はようやく分かったのだ。最も人との関わりを嫌ってたはずなのに、今しがた拒絶していた者が、自身にとって最も充実させてくれる存在だったのだ。何たる皮肉であろうか?しかし今さら、彼は追いかけることはない。元来そういう性格なのだ。
灰が落ちきったガラムを執拗に缶に押し付け、新しい1本を取り出してはライターに力を込める。うまく火がつかない。こういう時にふと、彼女を思い出す。その煩わしさを振り切ろうとしてラフロイグの入ったグラスを一気に傾ける。急にそんな事をすればむせ込んでしまうのも無理はない。酒を飲んでむせるとまた彼女がよぎるイヤになった彼は、手早く会計を済ませて外へ出る。
ラフロイグの空き瓶を叩き割り、ガラムを力いっぱいに叩きつけて、疲れた彼はサイダーを2本飲み干し、ペットボトルをゴミ箱へと投げ捨てた。




