大凧と愛とお田鶴様
学園コンサートで、千尋がしゃべってしまった。
「ある時、ネックレスが欲しくて、父にお願いしたんです。服の裾をツマミ、甘ったるい声を出して“お願い!買って!” 目は上目使い……大概これでOK。
しかし 洋服となると、此がまた ムズカシイ!!
父は、肌の露出が、嫌いで…一切禁止!!
ミニスカートなど、もってのほか。
父は、絶対権力者で、父の言葉ですべて決まります。
皆さんは、自由で 羨ましいですね。」
質素で、気の弱い私が、千尋のおかげで、エロイ がんこ親父となってしまった。
「ミニで足を見せないで……ワタシだけが見たい!」
と 言った。あやねさんは、水を吹き出して笑い、家内には頭をはたかれた。
ある時は
「皆さん 彼氏居ますか?オトコノヒトって焼きもちやきですね。ヤキモチ妬かない人は、あなたの事を何も 思っていません。“信じてる”って言葉 便利ですね。一人のヒトを好きになったら、その人だけ!!
あとは カボチャ!それが出来なければ……。パ-。
今 ワタシの彼は、父だけです。焼きもちやきで拘束します。それが苦痛では有りません。
私が、幸せなら それでいいんです。皆さんも、私の様に拘束されてますか?ケンカもしますか?
それが、心配されるシアワセなんですね。
生きた長さが、教えてくれています。
彼氏の作り方は、母にコッソリ聞くと良いですよ。
すてきな父と出会えたのですから。」
千尋よ 母には絶対聞くな!下心丸出しの男であった事がばれる。私も口には、気を付けようと思う。
学園祭から、3日後 学長に呼ばれた。
学長と望月先生と和美 3人が待っていた。
「何ですか?奇妙な取り合わせ?」
学長が
「和美君の、お父さんより頼まれまして、お父さんは、ヤマハお勤めで、お兄さんもヤマハなんです。
この度、御結婚されると言うことで、ステージをお願いされました。当然、撮影隊も入ります。」
「千尋ちゃん、なんか会社命令で千尋ちゃんに歌ってもらえって、広告写真やCMに使いたいらしいの、
お願い!豪華料理出るから…。」
「あの~?出演料は、豪華料理だけ?」
「ヤマハから、イベント対応となったから、おこずかいが出ます。」
「ヤッタ-!!」と望月先生
それからが、大変だった様です。
新郎新婦と司会者と友人の進行係で、煮詰めて曲を決め千尋に打診。
千尋は、衣装をどうしようか悩み私まで引っ張り出され、あやねさん共々百貨店巡りとなった。
結局、純白なス-ツ姿 地模様が薔薇で、左肩に真っ赤な薔薇が刺繍されていた。靴からバックと えらい出費。あやねさんはドレスを決めていた。当然、靴やバックも……。
「な!な!なぜ!!支払いは私なの?」
当日、結婚式場は、歩いても行けるが、千尋とあやねさんは、ド派手なファッションで、マンションから駅まで歩き、スマホで写真を撮られまくり 仕方なく駅からタクシーで向かった。
式場は、西洋のシャトーのような、教会のようなオシャレな建物であった。
スタッフの案内で、会場に着くと望月先生はもう来ていて、一緒に、和美の父母に挨拶を済ませた。
会場スタッフの案内で、友人の進行係、司会者そして和美が居て、曲目確認をして、ステージ確認と動いていると、あちらこちらから、声を掛けられ、その場で、来賓の方々と記念写真を、撮らされていた。式場に、ピアノが在るのを見付けると、スタッフに、マイクをセットして貰いピアノの前に座り 音の確認として“愛の讃歌”を弾き始めた。知らぬ間に、ガヤガヤざわざわした式場が、静かになり千尋のピアノに聞きいっていた。
式が始まる前に和美が、やって来て、
「千尋ちゃん、ピアノ出来るの?」
式まで、30分程あった。和美の目がキラリ!!
ヤマハの撮影隊が、音響の確認中の出来事。録音係もカメラマンも、慌てて撮影•録音と色めき立った。
「千尋ちゃん、ピアノで何かやって!!」
「じゃあ!アナウンスして!」
和美は、司会者の所に行きマイクを借りた。
「みなさ~ん!式が始まる前に、今日のステージを務める 千尋ちゃんに、今から2•3曲やって貰います。
楽しんで下さい。」
突然のピアノ演奏に、喜んでいた来賓から、盛大な拍手が起こった。
静かに 異邦人 から始まった。そしてイエスタデーとつづきハレルヤの英語バ-ジョンで終了した。
盛大な拍手と歓声。式場スタッフまで、聞き惚れる始末。式場スタッフにヤマハのCMの歌姫と分かり
ちょっとした、騒ぎになっていた。シルクハットのような純白の帽子に真っ赤な薔薇1輪とサングラスそして純白のス-ツ
TV以上の迫力が、皆に伝わりその少女が、テ-ブルに着くと、また拍手が起こった。千尋は、演奏終わりからペコペコ頭を下げ愛想を振り撒くっていた。
親族の老人達が、なにやら動きだし、司会者の所に集まって注文を出していた。司会者に和美が呼ばれ、あやねと進行係とそこに呼ばれ、両家関係の企業役職も呼ばれ、祝辞は短く、友人の芸は無し、千尋に1曲でも多く歌って貰おうと意見が一致した。
演歌の注文も、殺到していた。
式が、始まろうとした時、トラブルが起きた。作為的なのか、音源がでないとスタッフが、慌てていた。ヤマハスタッフも、確認するとマイクとカラオケは、生きているがCDなど使えないとの事、新郎新婦入場など、音が出ないと顔色を変えていた。
「私にやれって事?」
千尋が “自分が やるしか ないか!”
諦めてステージに向かった。
途中、和美のテ-ブルにより、
「和美!図ったな!!」
「千尋ちゃん!私じゃないよ!事故よ。」
千尋は、司会者と進行係と話をして、使う予定の曲目を確認して、頭の中で秒数を数えると
「和美!手伝え!」
ピアノで、演奏して歌う事にした。新郎新婦の位置が、分からないので和美が合図を出すことになった。
5•6分遅れて、結婚式はスタートした。
粛々と式は進み千尋の出番となった。
3曲は歌謡曲そして3曲は演歌 最後の 夫婦坂を歌い終わると、美しい美声と演歌の節回し聞く人の心を揺さぶり歓声と拍手は、盛大だった。
千尋は、カラオケからピアノに、位置を移し新郎新婦入場の合図を待った。和美から合図がありピアノ演奏で海外の愛の歌を熱唱した。4曲ほど歌ったところで終了した。千尋は、司会者にお願いしており、新郎新婦着席したところで、5分 時間を貰い
あらためて、1曲歌わせて貰った。
「戸田平治さん由紀さん 御結婚おめでとうございます。この様なめでたい席でなんですが…。
ここ浜松で、愛と言える一筋の光があります。それは、椿姫観音です。
浜松祭の大凧ですが、飯尾豊前守様とお田鶴様に、
御子が生まれ大凧をあげて祝ったのが、始まりの様です。お田鶴様が、ご主人の城を守りたかった。
愛故に……幼子を逃がして、城に火を掛け…ご主人に代わり武士の意地を通す為打ち出て、血戦したのでしょう。愛在ればこその、女の意地ですね。
今日の為に作りました。“愛 椿姫”聞いて下さい。」
千尋は、ギターをとりスリーフィンガーで、鳴らし始めた。結婚式場が、コンサート会場に様変わりしたかのように、拍手が鳴り響いた。
千尋は歌った。
お田鶴様の、心情を切々に、愛に形なく、女の道は
1本道だと。そして タヌキの家康より、城を明け渡せと書状が届いた。飯尾を、蔑ろにした書面に、飯尾の意地を…。主人の無念を…。武士の意地を…。主人への想いを…。 ……戦を決意した。
鎧に身をつつみ、18人の供廻りと共に、薙刀担いで斬り込んだ。………主人の名をよび、主人のもとへ帰ると………自決した。
涙腺が崩壊する感動。そして後から心をじんわりと暖めていた。
花風ただよう引馬野に 夢を求めし遠江
彼の背を見て追い掛けた 多々の戦よ懐かしき
無口な彼の一言その笑顔 瞼と心に焼き付いて
生まれし我が子を祝うため 大凧上げたは夢の中
乱世の日の本 大空見立て 泳ぎきれよと祈り足る
大凧上げよ 天高く
雨に撃たれし義元公 野分け吹き荒れ引馬の地
彼が帰らぬ真白き朝 愛の証の引馬城
天狗に成りし古タヌキ
全て寄越せと文が来る
彼と愛したこの城を おめおめ渡して成るものか
彼の愛を守る為 彼の意地を通す為 彼の誠を守る為 薙刀担いで 死での旅
乱世の日の本 薙刀担ぎ 本陣めがけて駆け上がる
天に暴れし 大凧よ 野分けに暴れしケンカ凧
との~ お田鶴 今 参ります~
注)彼との、想い出残る引馬野なら、彼のもとへ行けると……自決を選んだ事にしました。烈女の彼女を、雑兵に討たせる訳にいかない。今の時代では、あり得ないけど、男としたら、こんな彼女が欲しい。
千尋は言った。
「椿姫観音に守られし両家です。後で、お参りに行くと お田鶴様が、喜ばれます。
ここ 浜松は 家康の出世城。
でも、愛を守るのが、椿姫観音なんですよ。
両家は、すべて飯尾家と家臣団の一族です。
今日の、良き日に お田鶴様に手を合わせて、感謝して下さいね。」
突然、和美のおばあちゃんが、大きな声を上げて泣きだした。心配した和美が、駆け寄ると
「お祖父様の言っていた事が、本当だったんだ!!
飯尾家の末裔だからと言って、飯尾様と椿姫観音へも行っていた。お嬢ちゃんの言葉で、思い出した。
大変な失礼をしてしまった。申し訳なかった。申し訳なかった。」
その場で座り込み 手を合わせ謝罪の言葉を口にしていた。
「おばあちゃん!ここから車で、10分掛らないから
後でお参りしましょう。」
新郎の戸田平治さんが、司会者からマイクを借りて
「御親戚のみなさん!宜しかったら、この後、一緒にお参りしましょう。千尋ちゃんが、さっき皆様の顔を見てニコニコしてた理由が解って、こんな嬉しいことはありません。千尋ちゃんに来て貰い
お田鶴様の想いや言葉をききたいですね。」
結婚式が、あらぬ方向に向いたが、司会者が、タイミング良く元に戻した。つつがなく式は、終了したが、親族衆は、各々タクシーを呼ぶと椿姫観音へ向かった。千尋達も、付き合わされ、小さな祠は50人を越える人達で、溢れた。
祠の前に千尋が立ち、1家族づつにお田鶴様の言葉を伝え 家族の悩み相談をして、とんでもない結婚式の本当の終了となった。
しかし、此が原因として、親族衆の“椿の会”ができ
和美の兄 戸田平治さんが、飯尾の殿と呼ばれ、奥さんの由紀さんは、奥方様と決定した。親族衆の年寄り5名が、家老衆となり全てを取り仕切っていた。
千尋のことは、観音様と呼び、和美が巫女様となっていた。家老衆は、歳を取っていても 歳を取れぬと何故か動きが早く 会合においての内容が、会社員時代と変わらぬ程であった。
これで、やっと、京都へ 本題へ入って行けます。




