瀬玲奈の野望!
──瀬玲奈──
(あいたたた……)
突然セレナに放り投げられ、体の主導権をセレナに奪われた私は頭を擦りながら意識を取り戻すと、今まさにセレナがユリスさんへとナイフを向けようとしていた!
(ま……マズイ……!)
しかし、セレナは私が意識を取り戻した事に気が付いていない……。
チャンスは今だ……!
『はい、お疲れ~!』
(んな……!瀬玲奈きさま……!)
私はセレナの意識を後ろへと放り投げると私が体の主導権を奪い返す。
「ユリスさん、大丈夫ですか……?」
私はナイフを太ももに着けられている鞘へとしまうとユリスへと手を差し伸べる。
「セレナさん……、ありがとうございます。どうやら助けられたようですね」
「いえ、これが私の仕事ですから……」
『ふん!何が"私の仕事だ"だ!刺客を退けたのはこの私だ!』
そんな私の言葉に対しセレナが激怒しながら文句を言ってくる。
(そうは言うけど戦闘は終わったんでしょ?なら日常生活は私の担当のはずよ!)
『誰がそんなこと決めたっ!さっさと私に主導権を明け渡せ!』
(あらぁ~、そんな事言っていいのかしら?あれほどの騒ぎよ、きっとすぐにヴァンさんやミレイユさんが駆けつけるはずよ!その時にセレナだったらヴァンさんたちはどう出るかしら?きっとセレナは捕らえられて、私が受けた以上の尋問をされるはずよ?いいのかしら?)
『ぐ……!くそ……!悪知恵だけは一人前に働くようだな……!』
そう言うとセレナは渋々奥へと去っていった。
ふう……、これでひとまずは一安心ね……。
「あの……セレナさん一つお伺いしたいのですが……」
「はい、なんでしょうか?」
「言いにくいのですが……貴女は一つの体に二つの心を持っていませんか?」
「え……っ!?」
ユリスさんの言葉に私はドキっとする。
な……何で分かるの……っ!?
「その反応……やっぱりそうなのですね。僕は目が見えない代わりに目では見えないものが見えるようになりました。ですから誰がどんな事を考えているのかと言うことが大体ではありますが分かります。人の心とは色のようなものです。セレナさんからは優しい光と冷たい刃……2つの色が見えます」
「え……えぇと……、それは……その……」
な……なんて説明しよう……。
実は私とセレナは別人なんですって言う……?
いやいやいや……そんなの誰も信じないでしょ……っ!?
「なんにしろセレナさんは僕の命の恩人です。そこで折り入ってお願いがあるのですが……僕の友達になってくれませんか?」
「と……友達……ですか……っ!?」
突然の展開に私は目を丸くする。
「はい、僕はこの通り目が見えません。そのせいか屋敷にいる人たちはどこか僕に気を遣っているんです。ですが、セレナさんにはそれを感じられません。ですから僕と友達になってはくれませんか?」
「えっと……まあ……私なんかでよければ……」
私はユリスさんが差し出した手を握る。
そういえば、原作ではセレナとユリスさんは幼馴染だったっけ……。
うまく行けば恋人関係に発展するとか……っ!?
あのセレナがデレデレになったりするのかな……?
例えば顔を赤くしながらユリスさんに「好きだ……」とか言ったり……?
見たい……!保存したい……!録画したい……っ!
そんな下心を抱きながら私はセレナさんと友達になったのだった。
~サイドストーリー~
──ヴァン──
「カイゼル様、ご報告致します。つい先ほどユリス様のお部屋に何者かが侵入し致しました……」
「ほう……、それでどうなった?」
「はい……、刺客と思われる人物はセレナ・ラティクスによって撃退されたようです」
俺はつい先ほどあったことを執務室に設けられている椅子に座っているカイゼル様へと報告をする。
俺が目を離していた隙に刺客の侵入を許すとは致命的なミスだ。
しかし、何より驚いたのはその刺客をあのセレナ・ラティクスが撃退したということ……。
どう見ても普通の小娘が撃退したとは俺にはどうにも思えん。
まさか……あれは演技だとしたら……?
そう考えればある程度は納得はいくが、そこまで演技をする必要があるのか……?
あるとすればセレナ・ラティクスこそが真の刺客……。
「なるほど、セレナ・ラティクスが刺客を撃退したか……。あの娘は実に興味深い。最初会った時のような冷たい雰囲気とは打って変わり、突然ごく普通の少女になったかと思えば今度は刺客を撃退する……。中々持って実に面白い……そうは思わないか?ヴァン……」
「しかし、セレナ・ラティクスこそが刺客と言う可能性は……」
「勿論それはあるだろうな……だが、あの少女のような人格がそれを許さないだろう。ヴァン、私は引き続きユリスの事はあの娘に任せてみようと思う。そしてその先に彼女が自らの意思でどう動くか、何を選ぶか、そして少女の人格がどう影響するのか……見てみようではないか」
「は……かしこまりました……」
カイゼル様はそう言うと俺から背を向け窓の外へと目を向けていた。
このお方には一体どれほどのものが見えているというのか……。
理解できない……そう思いながらも俺は執務室を後にした。