対立する瀬玲奈とセレナ
ユリスさんの部屋をさ飛び出した私は、屋敷の通路にある柱にしがみついていた。
なぜ柱にしがみついているのかと言うと、私の中にいるもう一人の人物、"セレナ"が影響している。
『瀬玲奈!なぜ部屋を飛び出した!ユリスを殺す絶好の機会だったと言うのに……!』
「だからダメなのっ!」
『なら体を返してもらう!この体は元々私のものだ!』
「だめ~!絶っっ対に返さない!返したら大変なことになるでしょっ!?」
セレナはそう言うと体の主導権を私から奪いにかかる!
しかし、私はそれに抗い死に物狂いで柱にしがみついていた。
セレナに……ユリスさんは絶対に殺させないんだから……!
原作のようにセレナとユリスさんを悲劇的な結末にはさせないんだから……!
『いい加減に柱から手を離せ……!』
セレナは私の左腕の主導権を奪うと私の頬を抓ってくる!
「痛い!痛い痛い痛い痛い……!セレナ痛いから……!」
『ならさっさと離せっ!』
そんな私の様子を他のメイド達が冷ややかな目で見ていた……。
「ねえ、あの子って確か今日ここに来たセレナって子でしょ?一人で何やってるのあの子……?」
「さあ……、とりあえずあたしはヴァン様かメイド長に知らせてくるわ!」
『くそ……!これでは埒が明かない……!』
セレナは自らの支配下にある左腕を使って右の太ももに隠されているナイフへと手を伸ばそうとする。
まさか強硬手段に出るつもり……っ!?
「させないわ……!」
私はそう言い左腕へと噛み付く!
『ぐ……!お前人の体に噛み付くな!』
「あなたが強硬手段に出ようとするからでしょっ!?」
『この小娘が……!』
「何よ!大して変わらないでしょっ!?」
私とセレナは心の中でいがみ合っていた。
まさに一触即発の状況だった……!
と、その時騒ぎを聞きつけたヴァンさんが私のもとへとやって来た。
「他のメイドから騒ぎを聞き付けて来てみれば……セレナ・ラティクスお前は何をしている……?」
柱にしがみつき、自分の左手へと噛みつき、何か一人で騒いでいる私にヴァンさんは呆れたような顔をしていた。
『チ……っ!見立ちすぎたか……。ここは一度身を引く……だが次がお前とユリスの最期だ!』
そう言い、セレナは奥へと引っ込んでいった。
ふう……助かった……。
「えっとですね……これはその……」
「お前はカイゼル様よりユリス様の所に行くことになっていたのではないのか?ユリス様はどうした?」
「は……はい……!ただいま向かいます……!」
しどろもどろに説明をしようとするも、ヴァンさんに睨まれた私はすぐさまユリスさんの部屋へと向かったのだった。