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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
我が道

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97 人気作家(3)

「あら、この学園の食堂は指定席があるのですね。知りませんでした」


 悪人顔の3人の男に向かって、私は恐れることなく媚びる態度も見せず言う。


「なんだお前、俺はクローノ侯爵家3男のアーホデン。高等部の2年だ。見たことがないということは、下級貴族か平民だな。無礼な態度を取ると痛い目に遭うぞ!」


 アーホデンという侯爵家の3男は、小説の中に登場する悪役とほぼ同じ台詞を吐きながら、皆の前で私を堂々と脅す。  


「痛い目?」


 当然私も、小説と同じ台詞でお返しし、どういうことか分からないって感じで首を捻ってみせる。


「アーホデン様の父上は法務大臣だ。貴族に対する不敬罪にすれば、お前など即刻退学だぞ!」


 アーホデンのお付きの男が、虎の威を借る狐感を丸出しで威張って怒鳴る。


 ……いいねいいねぇ。まるで台本通り。素晴らしい俳優たちだ。


「侯爵家の()()ですか・・・それじゃあ、私や私の親が侯爵家以上の身分だったら、貴方たちを不敬罪で処罰しても構わないって事かしら?」


 全く臆することなく問う私に、3人は一瞬怯むように顔を見合わせたが、直ぐに「あり得ない」とバカにして笑った。


 3バカの声が大きいので、食堂内の学生や教育実習生たちは、私とのやり取りに耳や目を向け様子を伺っている。

 耳を傾けていた学生の中に「今のって小説の台詞?」って囁く者がいて、コアファンを見付けた私はにんまりする。


「お三方は、読書をなさらないのね。フフ、私、本日編入学したばかりですの。因みに、マセール王国の高位貴族ではありませんわ」


 ……嘘は言っていない。取りようによっては、他国の高位貴族のように聞こえるかもしれないが、しいて言うなら体はマセール王国の王族だ。


 これ以上問答をしている時間が勿体ないので、私はトレーを持って下級クラスらしき席へと移動する。

 下級クラスらしき席では、私を他国の高位貴族の可能性があると思ってか、誰も視線を合わせようとしないけど、私は「お邪魔します」と言って微笑んだ。



 毎日がとても楽しい。

 まるで動物園にいるようで、猛獣から爬虫類、小動物まで居て観察のしがいがある。特に古狸の教師たちは、小説のネタをたくさん提供してくれる。

 王孫の2人も、頑張ってネタ・・・じゃなくて監察結果を報告してくれる。


 今日は編入3日目で、学園では第一皇子の名で【学園改革に関する決定】と書かれた警告・改革事項が貼り出された。


① 学園の学生は身分に関係なく平等に学ぶ権利がある。よって、教師は学生にお茶汲み資料整理等の雑用をさせてはならない。


② 今回のテストで上位30位に入った者を、身分に関係なく上位クラスとする。

 実行は来月からとし、4月の試験までクラス替えはしない。


③ 今回のテスト順位と、以前のテスト順位に大きな違いがある学生は、再テストを行う。

 成績操作などの可能性が確認された場合は、停学処分又は留年処分とする。


④ 学生の成績操作を行った教師は、即日罷免される。


⑤ 今回のテストを真面目に受けず、たまたま成績が悪かったと主張する学生がいた場合、学園長と王孫監視の下、再テストを受けることができる。


⑥ 高位貴族家の子女が下級貴族や平民に対し、暴言・暴力行為、不敬罪をちらつかせた脅し等、貴族として相応しくない行いをした場合、ペナルティーを与える。




 また同日、聖マーヤ総合大学後援で、作家【ブルー・アース】講演会を開催するとのお知らせも貼り出された。


【学園監察官は今日も暗躍する】を読んでいた学生や教師は、第一皇子の学園改革の内容が、小説の内容とほぼ同じであると気付いただろう。

 成績操作を頼んでいた勉強嫌いな学生は、幸か不幸か私の本を読んでいないようで、フンと悪態をついて顔を顰めるが平常運転だ。


「この学園には、本当に学園監察官が居る」という噂が学園中で囁かれるまで、あっという間だった。


 いったい誰が? という監察官探しが直ぐに始まった。

 小説の中の主人公は侯爵家の引き籠り男子だったけど、そんな学生は存在していない。であれば誰だ?と皆が首を捻る中、もしかしたら王孫では?という噂が流れ始めた。


 監察官探しと同時に、前々から噂になっていった【ブルー・アース】は学園の学生では?という疑念も再燃していく。

【ブルー・アース】探しで有力な候補となったのは、聖マーヤ総合大学から来ている、この学園の卒業生でもある教育実習生だった。

 悪くない推察だが、ブルー・アースは16歳だと自身の年齢を明かしている。




 教育実習も、いよいよ明日で最終日。

 高等部では、第一皇子の学園改革指示があったにも拘わらず、教師ではなく教授と呼ばれる者たちは、お茶くみや資料整理は学生としての義務だと豪語し、態度を改めなかった。


「学生の義務と言っているのに、準貴族や平民だけが仕事をさせられています。

 なので昨日、私は平民の学生に代わり教授にお茶を淹れました。

 すると教授は、まさか王孫であるシャレア様が、くだらない監察官の真似事をなさっているのですか?って、見下すように訊いたんです。

 だから私は、残念です教授と言って、一般教師へ降格すると書かれた戒告処分書を渡しました」


 小説の監察官の真似をしたことで、学生間の不平等や理不尽さ、高位貴族の目に余る態度がよく分かったと、シャレアは反省しながら昨日の出来事を報告する。

 不正に働かされていた学生から実態を聞いたショーヤも、王族として見て見ぬ振りをしていたことが恥ずかしいと反省する。


 馬車の中で毎朝2人の話を聞いていると、どんどん成長していくのが分かる。

 王族とは、学園とはどうあるべきかを考えるようになった2人は、きっと総合大学に進学して更に成長するだろう。うんうん、おばさんは嬉しいよ。


 

 さて、午後からは【ブルー・アース】の講演会である。

 王孫の2人も、【ブルー・アース】に会えるのを楽しみにしている。

 今頃は掲示板に、ホワイティ株式会社主催、読書感想文大賞のお知らせが貼り出されているだろう。


 ……よーし、小説家の卵を発掘するわよ!

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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