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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
我が道

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96 人気作家(2)

 翌日、マセール王国出身の選りすぐった学生たちは、予定通りマセール学園へと向かった。

 6人は中等部で教育実習を行い、2人は高等部で教育実習を行う。

 3日後の発表だが、今回の教育実習の目玉として、聖マーヤ総合大学が人気作家【ブルー・アース】をゲストに招いて講演会を開催する。

 中等部と高等部の学生は、誰でも講演会に参加できることになっている。


「それでは分かっていますね。今日から王孫のお2人には、【学園監察官は今日も暗躍する】に書かれていた主人公の行動を真似ていただきます。

 ショーヤは中等部、シャレアは高等部の担当です。

 そのノートがいっぱいになる量の情報を集めてください。

 特に、お金を受け取り成績操作した教師は罷免しなくてはなりませんから」


「はいマシロ様」と、2人は神妙な表情で返事をする。


「マシロ様、成績操作を依頼した学生の調査はしなくていいのでしょうか?」


 シャレアも【学園監察官は今日も暗躍する】を何度も読んでいたようで、主人公の行動を真似るなら、調査する必要があるのではと質問してきた。


「ああ、それは大丈夫、今日の午後、抜き打ちテストをします。全員の回答用紙は廊下に貼り出されるので、真の実力は白日の下に晒されます」


「えっ、テ、テストですか・・・解答用紙の貼り出し?」


「そうですよショーヤ。私は本当のミリアーノではありませんが、姉のように貴方の活躍を期待していますよ」 


 テストと聞いて嫌そうな顔をしたショーヤに、私はにっこりと微笑んでおく。


「小説では、採点する教師が点数操作をしていましたが、大丈夫でしょか?」


「ええ大丈夫よシャレア。今回は優秀な教育実習生がすべて採点します。

 実習生ですもの、テストの採点だって経験しなきゃいけないわ。

 それにね、今回の試験内容は教師たちも知らないから、内容を教えることもできないの。フフフ、抜かりなんてないわよ」


 私は悪戯っぽく笑って、簡単な台本のようなモノを2人に渡し、完璧に演じてねと指示をだす。

 そして、決して監察官の仕事中だと気付かれてはならないと念を押し、この作戦には国の存亡が懸かっているのだからと、脅しも忘れない優しい私。


「あ、あの、マシロ様は、本当に商人の娘として中等部の下級クラスに編入されるのでしょうか?」


「もちろんよ。だって私16歳だし、本当に商人の娘ですもの。ちゃんと商人っぽく見えるでしょう?」


 私はマセール学園の制服を着て、クルリと回ってスカートをふわりと揺らす。

 濃紫の髪は焦げ茶に染め、特殊な瞳は眼鏡をかけて誤魔化している。ついでに美しい顔には、チャームポイントのそばかすを描いてある。


 ……よし、完璧! フハハハハ、これで堂々と潜入できるわ。


 王族専用馬車に乗り込むと、その他諸々の注意事項を確認し、台本を読みながら学園へと向かう。

 このまま王族用馬車止めまで行ったら大騒ぎになるから、少し手前で降りる。

 王族の馬車で送ってもらう商人の娘なんて、この国には絶対に存在しないから。


「私はミヤナカ・マシロよ、忘れないでね」と、軽く手を振り2人と別れた。


 ……いやー、久し振り・・・40年振りの制服。テンション上がるわー!



 お上りさんよろしく、学園の中をキョロキョロしながら歩く。

 目立たないようにしながらも、人間観察は怠らない。

 

「うわー、如何にも高位貴族だぞって感じの奴等が来る」と小さく呟き、通路の端に寄って視線を合わさないように歩く。


「総合大学から、教育実習生が来るんだろう兄貴?」


「ああ、教師不足も深刻だよ。自習も増えたし、学園長もヤル気なしだし、卒業生は貴族のプライドを捨て商会に就職するし、バラス公爵領は崩壊した。もう世も末さ」


 サラサラの金髪を風に靡かせ、黒光りする高級革のカバンを持った2人は、間違いなく一級品の貴族って感じだ。

 兄の制服のタイは紺だから高等部で、弟は中等部だね。

 ちらりと私を見たけど、興味なさげに通り過ぎて行った。


 ……今や優秀な卒業生は、自国だけじゃなく世界に羽ばたく時代よ、坊やたち。


 実習生の話を聞いて、少しは国外にも心が動くといいわね。

 始業の鐘が鳴る10分前、バタバタと忙しそうにポットを持って廊下を走る学生の姿がちらほら・・・

 どうやら教師たちは、始業の直前までお茶を飲みたいようね。


 ……へ~っ、私の本を読んで少しは自重しているかと思ったけど、長年の習慣は止められないってことかしら? それとも本を読んでないのかしら?




 簡単な挨拶をして下級クラスに紛れ込んだ私は、昼食時間に食堂へ行ってみた。

 下級クラスの学生の半数は家から通いで、弁当持参の者が多い。寮暮らしは学食に行く必要があるから、午後のお茶くみは通いの学生がするみたい。

 私は季節外れの編入生だから、ここの常識は知らないんですって感じで、わざと上位クラスの学生の近くのテーブルを狙って座る。


 何コイツ?って感じでジロジロ見られるけど、私の身分が分からないからかスルーされる。

 折角だから、どんな話をしているのか聞いて、次の本のネタにしよう。

 ざわざわしている食堂内の会話の中心は、教育実習生と午後から行われるテストの話しだった。


「ご覧になりましてセリア様? 歴史の実習生は眉目秀麗でしたわぁ」

「ええシーニア、素敵な先生だったわ。実習生の身分が秘密なのは残念ね」

「この学園の教師は古臭い年寄りばかりで、若い教師は高等部にしか居ないわ」


 シーニアという学生が、学園の教師は年寄りばかりだと不満を漏らし、2人とも若い優秀な大学生を思い出し、目がハートになっているのが笑える。

 確かに王族が学園長に提出させた資料では、中等部の教師の平均年齢は52歳だった。


「おいお前! そこは俺たちがいつも座る席だ。どけ!」


 若いっていいわねって、おばさん根性でニヤニヤしていると、小説の悪役モデルのような学生に大声で怒鳴られた。

 人数は3人で、全員が私を睨み付けイライラしている。


 ……あらあら、初日から当たりを引いちゃったのかしら?

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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