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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
我が道

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95 人気作家(1)

 1月に入って直ぐ、ホワイティ商会はタラト大陸で最初の株式会社になった。

 株の55%は私の所有で、5%が父様、5%を総合大学が持ち、10%を社員用にした。一般公開したのは25%だ。

 証券取引所の仕事は、商業連合が新に株式取引所を設立し、株式会社は最低25%を公開する必要がある。


 父様のミヤナカ商会も少し遅れて株式会社にして、株の30%が父様所有で20%が母様、私が20%で、残りの30%が一般公開される。

 現在ミヤナカ商会のメイン商品は、ハンドクリームや基礎化粧品になっている。

 もちろん固形燃料や卓上コンロも販売してるけど、高級基礎化粧品は他の追随を許さず、貴族女性が争うように購入している。


 ……基礎化粧品は私と母様の合作なので、特許料の25%が私に入ってくる。


 ……さあ、美を追求するお金持ちのマダム、カモーン!



 

 そして1月中旬、私はマセール王国を公式訪問した。

 今回は先ず王族と軽く挨拶のお茶をして、宰相や大臣を含めた公式な会談は15日後に行うことにした。

 公式会談が15日後なのは、教会が望む改善ができているかを調査する必要があるからだとビビらせてある。


 そう、今回は滞在期間が長い。


 なんせ教育実習という名目で、マセール王国出身の大学生の中から、優秀な8人を選りすぐって連れてきたのだ。

 今後大学では、教育学部を含む全学部で、希望者に教育実習を1~2週間許可することにしている。

 表向きは各国の教師不足問題に、大学と聖人が一肌脱いだ形だ。


 ……だから私は、堂々と学生をマセール学園に送り込むことができるんだよね。フハハハハ。


 ……まあだけど、教育実習に来たからと言って、就職するわけではないことも伝えてある。


 【学園監察官は今日も暗躍する】が寄贈&発売されて1ヶ月以上が経過し、売れ行き好調で印刷が追い付かないくらいだ。

 当然マセール学園の教師も読んだはずだから、物語の舞台とマセール学園が酷似していると気付いただろう。

 だからって教育実習を拒否なんてできないよ。こっちは恩を売ってるんだから。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ショーヤくんは、昨年まで聖地マーヤの原初能力学園に在学していて、今はマセール学園の中等部ですよね。私が寄贈した本は読まれましたか?」


 王族のお茶会に出席していたミリアーノの弟であるショーヤ14歳に、私はにっこりと優しく微笑みながら声を掛けた。

 お茶会に出席しているのは、国王、王妃、王太子から外された第一皇子ダリウス、側室から第一皇子妃になったエザール、第二皇子夫妻、そして王孫5人である。

 第三皇子イツキノは、領地の復興が忙しくて参加していない。


「はい読みました。とても面白くて3回も読みなおしました。

 謎の監察官が学生で、しかも侯爵家の引き籠りと言われていた学生だったのには驚きました。

 だから目立たないように行動して証拠を集め、ダメな教師を辞職に追いやった。もう大興奮です」


 聖地マーヤでは全く会話もしたことがなかった弟だけど、はにかみながらも嬉しそうに答えてくれた。

 次に私は、【マシロ様を崇める会】に入っているミレアの弟シャレア18歳に視線を向けた。

 隣に座るミレアが、自分も発言したくてうずうずしているのが笑える。


「私は高等部の3年なのですが、著者が16歳というのに驚きました。

 彼が本当に16歳なのだとしたら、中等部か高等部の学生ですよね。

 あれだけ内容がマセール学園に酷似しているのですから、ブルー・アースという人物は、うちの学園の学生である可能性が高いと推察します」


 シャレアが気になったのは作者のようで、残念ながら自国の学園の腐敗についての言及はなかった。


「ダグラス王、この物語を書いた作者は、旧貴族学園と現マセール学園の学生を取材し、実際に行われている腐敗を世間に知らしめ、学園の風紀及び腐敗を正して欲しいと願って執筆したようです。

 私は聖人として、王族である皆さんとこの国を、このまま存続させても良いかどうか天に問わねばなりません。

 学園の腐敗・・・このままでは確実に天罰が下るでしょう」


 私に断罪された経験のあるダグラス王は、ちらりと視線を合わせると慌てて下を向く。彼の目には、私は恐怖の存在として映っているはずだ。


「も、申し訳ありません。総力を挙げて学園改革を行います」


「フッ、貴方には無理です。

 小説を読んだら自国の学園と酷似していると分かったはずなのに、現在学園に在学している孫でさえ、反省し改革しますと言わなかった。

 私がこの本を渡した意味を、誰も真剣に考えていない。

 それは何故か。

 王族こそが腐敗しているからですダグラス王」


 和やかだったお茶会の雰囲気が一気に凍り付き、弟のショーヤもミレアの弟シャレアも顔色を変える。

 ミレアだけは「私が命懸けで改革します。どうか、もう一度だけチャンスをください」と言って頭を下げる。


 その時、意図せずして地震が起きた。規模は小さく震度は2か3くらいだ。

 キャーッと女性は悲鳴を上げ、男性も立ち上がっておろおろする。

 予言者として予知してなかったので、きっと震源地は王都で規模は小さいだろう。何故だかそんな気がする。

 全員が私に畏怖の視線を向け、顔は恐怖で引き攣っている。


 ……いや、今の地震は私が起こしたんじゃないから。違うから!



「ミレア、貴女は私の影響が強いから、直ぐにそう言えるのでしょう。

 ですが、その言葉は本来、第一皇子や第二皇子が言うべきなのです。

 は~っ、がっかりを通り越して、もう直ぐ怒りに変わりそうです・・・が、私は幼くして亡くなったミリアーノを憐れに思い、その体に降臨しました。

 ミリアーノの体に免じて、こちらから改革案を提示しましょう」


 私は秘技アルカイックスマイルで、王族の皆さんに救済措置を提案する。

 当然のことながら、この場に居る誰にもノーと言う権利などない。

 そしてさり気無く、ミリアーノは亡くなったのだと認識させる。


 ……私は傍若無人を許された聖人である。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

いよいよ次話で、学園に乗り込みます。 

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