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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
新時代

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88 対面と体面(8)

 マセール国王を説得に向かったディードによって、一行は進行方向を反転させ被災地領都バラスへと向かっていった。

 その集団の中には、聖マーヤ救援隊交渉担当ケトラ教授と、教会長が同行している。同行を条件に、聖マーヤ救援隊は先触れ男の不敬を許すことにした。

 王孫ミレアはディードと一緒に戻り、私たちと合流した。


「マシロ様、到着が遅くなり大変申し訳ありません。先触れの不敬な言動や態度については、王都に戻り次第厳罰を与えます」


 避難民たちに冷めた視線を向けられながら、ミレアは深く頭を下げて謝罪する。聖マーヤ救援隊は許すことにしたが、私は許すとは言っていない。

 

 ミレアの話しによると、王都に戻って直ぐ国王と面会し、震源地はミレル大河に近い場所で、バラス公爵領は大きな被害が出ているはずだと伝えたそうだ。

 大至急救援隊を向かわせるよう願い出たが、地震の知識がない大臣や高位貴族たちは、王都に被害が出なかったことで、その必要はないでしょうと聞く耳を持たなかった。


 王は厄災に備えるようバラス公爵に指示を出していたし、救済の用意もしていると最近役人が確認しているから、国が動く必要はないと大臣たちは言った。

 だが王太子妃と王孫ヒルトラが、現在領都バラスにお忍びで滞在していると王太子が暴露したことで、急遽救援隊の派遣が決まったけど、国としては救済品等の準備をしていなかったので時間が掛ったらしい。


「へえ、それじゃぁ王太子妃や王孫が居なかったら来なかったってことね」


 私はにっこり黒く微笑み、現在領都バラス内で瓦礫撤去をしているレスキュー班と総合学科班を、即時撤退させると決めた。


 ……放っておけば教会や聖人が何とかしてくれるという前例は作らない。


 ……誠意には誠意を、悪意には天罰をというのがマーヤ・リー(予言者)の方針だ。


「ミレア、貴女はよく頑張ったわ。でもね、聖人認定式の時、予言者である聖人エレルは参列者全員に向かって断言したの。

 マセール王国とミレル帝国は、民を救うため食料や生活物資を備蓄しなさい。神は、()()救おうと努力する者をお救いになり、務めを果たさぬ者を、お許しにはならないでしょう・・・とね」



 ◇◇ マセール国王 ダグラス ◇◇


 可愛い孫のミリアーノは母国マセール王国を思い、聖マーヤ救援隊を設立し役立とうとしてくれているのだと、私は都合よく勘違いしていた。

 先に到着していた聖マーヤ救援隊に労いの言葉を掛け、実父イツキノに会わせればミリアーノが喜ぶだろうと思った私は、大きな間違いを犯していたことに気付かなかった。



 ……私はミリアーノ可愛さで、予言者である聖人エレルのことを忘れていた。

 ……そして、聖人を敬うことなく下に見てしまった。



 天罰? 公爵とヒルトラの不敬に天が怒り、教会の柱を天から降らせた?

 バラス公爵屋敷の迎賓館が天罰で倒壊した?

 天はバラス公爵の日頃の在り様を見て、今回の厄災で務めを果たすかどうかを試された? 

 国王でもある私も、同じように天に試されるはずだとミリアーノ、いや、聖人ホワイト様が仰った?


 移動する馬車の中で、教会長と総合大学のケトラ教授から話を聞いた私は、こうして救援に来たのだから問題ないだろうと思ってしまった。



 馬車の窓から見えたのは、完全に倒壊した城郭だ。よく見ると、バラス公爵家自慢の2つの見張り塔は1つになっていた。

 領都バラス内に入ると、無残に倒壊した街並みや血を流し倒れている住民たちの姿が目に飛び込んできた。


「な、なんということだ!」と、それ以上の言葉が続かない。


 住民たちは、助けてください、食料をくださいと、私たちの馬車に向かって懇願してくる。

 想像を絶する被害の様子に、ヒルトラたちは無事だろうかと不安になった。



 500メートルも進まないうちに、突然馬車が止まった。

 この先は瓦礫で道が塞がれており、馬車での通行が困難だと騎士が報告する。

 馬車から降りると、前方で聖マーヤ救援隊らしき者たちが、原初能力を使い瓦礫撤去をしているのが見えた。

 我々に気付いたはずだが、手を止めて挨拶しようともしない。


「おい、早く馬車が通れるようにしろ! 王様が王孫ヒルトラ様の救助に向かわれる」と、国務大臣が大声で怒鳴って命令する。


「皆さんは何故、自国の為に尽くしてくれる者に対し、感謝の言葉を掛けられないのです? それに、聖人ホワイト様が指揮を執る聖マーヤ救援隊に向かって、勝手に命令して許されるとでも?」


「なんだと! 王様の御前で、大臣である我々に向かって戯言を吐くか!」


 国務大臣の隣にいた建設大臣が、ケトラ教授に向かって怒りの声を上げた。


「やめろ馬鹿者!」と大臣に向かって私が叱咤した時、建設大臣が乗っていた馬車に天から白い何かが落ちてきた。

 ドーンという大きな音がして、馬車は木端微塵になった。

 辺りには馬車の破片が飛び散り、大臣や騎士たちに木片が直撃する。

 よく見ると、落ちてきたのは教会の柱だった。


 ……こ、これが天の怒り?!


「ああ神よ、民を救う尊き者を貶め、感謝もできぬ愚か者ですが、命ばかりはお助けください」


 教会長が平伏し、天に向かって懸命に赦しを請う。

 天の怒りとか天罰などと言われても、信じきれなかった私は、目の前の現実を見て言葉を失う。


 

「ここに居る王族や大臣たちは、民ではなく王太子妃と王孫ヒルトラの救済に来た。それは、予言者である私の命に背いたということだ。

 残念ながら、これから起こる天罰はもう避けられない。

 愚か者に下される天の裁きを覆す術など、私は持っていない。


 民を守る務めも果たせない王など必要ない。

 お前たちは忘れているようだが、国王とは、マーヤ教会の土地と民を守ると誓い、教会に統治を許された者に過ぎない。

 任命権も統治権も、全て教会が持っているのだから。そうであろう国王ダグラス? お前は国王就任式の時、そう書かれた誓書にサインをしたはずだ」


 聖人のみが着ることを許された神服を着て、紺色の聖布を被った見覚えのある聖人が突然私の目の前に現れ、恐怖で固まっていた私を、更なる恐怖へと突き落とした。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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