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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
新時代

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84 対面と体面(4)

 マセール王国マルイ男爵領で、仲間と合流したのは昼前だった。

 現地では、チーム【聖人の僕】の活躍で、行方不明者の捜索が完了していた。

 残念ながら8割の人が亡くなっていたが、2割の人が奇跡的に助かり医師の治療を受けていた。


「本当にありがとうございます。食事の用意くらいしかできませんが、どうぞお召し上がりください。感謝の気持ちを込めて皆で作りました。

 領都バラスで行う救済活動よりも早く、我が男爵領をお助けいただいた御恩と僥倖を決して忘れず、子々孫々に伝えていきます」


「本来救援隊は、被災者から食料提供を望んではいけないのですが、感謝の気持ちであれば断れませんね。有難く皆で頂きましょう」


 深く頭を下げるマルイ男爵の後ろで、私を拝んでいる住民たちの必死な表情を見たら、この厚意は断るべきではないと判断し、私は仲間たちと食事を頂くことにした。


 食後直ぐに亡くなった方々に祈りを捧げ、動ける住民全員の見送りを受けながら、全隊員を連れて領都バラスへと出発した。




 移動すること30分、領都バラスを囲う崩れた壁と、高台に在るバラス公爵屋敷が見えてきた。

 仮避難所と街の確認に調査班を向かわせ、避難民からギリギリこちらが見えない位置で作戦会議を行う。


「途中で見た断層や地割れ、そして領都バラスの壁が崩壊していることから推察すると、震源地はマセール王国側で間違いないでしょう。

 もしもこの状況で領主が民を救済していないとなると、上手く活動しないと民の怒りが我々に向くかもしれません。薬剤等の管理を厳重にする必要があります」


 救援隊副隊長であり医師であるバート教授は若干顔を引き攣らせながら、医療班に収納ボックスの管理を厳重にするよう指示を出す。


「ご指示通り我々レスキュー班は、領都バラス内のメイン通りの瓦礫撤去を行います。住民の救出はしなくていいのでしょうかマシロ様?」


「ディード、私の知るところでは、閉じ込められた者が生存できる確率は、地震発生から72時間が経過すると大きく低下します。

 確実に生存反応がある場合に限り救出を許可しますが、領都バラスにおける我々の活動は、ケガ人や弱者の救済がメインであることを忘れてはなりません。

 本来、大通りの瓦礫撤去も救出活動も、領主や国が行うべきものです。


 聖マーヤ救援隊は、救済の責任を負うべき領主が亡くなっている場合か、懸命に救済している領主の協力要請があった場合に限り活動します。

 マセール王国は多くの原初能力者を有し、大陸一の国力と財力を持っています。

 そもそもバラス公爵は【動力】持ちを束ねる長です。なのに自分の屋敷の瓦礫撤去に、民を守るための兵士や警備隊員を総動員させています」


 ディード25歳を含めレスキュー班の多くは、マセール王国の出身者である。

 自国の惨状を見て、なんとかしたいと思うその気持ちは間違っていない。

 だが責任を果たすべき者が他にいる場合、率先して救済すべきではない。

 私はマーヤ・リーデ(先導者)だ。だから、道を説く聖人として厳しく言う必要がある。


「我々は聖地マーヤを出て、ミレル帝国で救済活動をしてから此処に来た。

 既に3日も経過したのに、この国の王族や役人は何をしているんだ!

 公爵も他の貴族も、王孫までもが現地に居るのに何もしていないとは・・・恥ずかしいを通り越して怒りが込み上げる」


 マセール王国の出身で、原初能力学部を牽引しているカーセ教授57歳が、悔しそうに顔を歪めながら言う。

 この場に居るマセール王国出身の学生や騎士も、悔しそうに拳を強く握った。



 15分後、領都の外で避難している住民の様子を見に行った調査班が帰って来て報告した。

 報告によると、避難民たちの世話をしているのは教会だけで、役人の姿も兵士の姿も見当たらず、炊き出しも昨夜の分で底をついたらしい。

 避難者の数はおよそ3千人で、未だに多くの者が領都内に残っているらしい。

 

「責任ある立場の者が無知だった場合は、指導しながら共に救済するしかない。

 だが、無知ではなく責任の放棄であった場合は、その罪を問うべきだし、罪を償わせるのが当然だ。

 もしも王が許しても、聖人たる私は決して許しはしない! 神もお許しにはならないだろう」


 ほんの少しだけ持っていた期待も裏切られ、私は頭にきて語気が鋭くなる。

 まさか本当にこの時まで、完全放置されるとは思っていなかったのだ。


 ……甘かった。私は何に期待していたんだろう。午前中には国王とミレアが、救援隊を率いて到着すると思っていたけど、それも間違いだった。 



「マシロ様、食料が足りません。10歳以下の子供だけに限定しないと、食料の奪い合いで暴動が起きるかもしれません。本部設営の準備を始めてもよろしいでしょうか?」


 現状が分かったところで、聖マーヤ救援隊の学生を率いているヨンド共和国出身のノイエン20歳が、黙り込んでいた私の前に来て訊ねた。


 ……いかん、ちょっと現実逃避しそうになってたわ。


「そうね、そろそろ移動しましょう。先に私とバード教授とノイエン、そして教会騎士のスピカとアステカの5人が、避難場所の教会メンバーと合流するわ。

 残りのメンバーは、ゆっくり移動してきてね」


 皆に指示を出して、私は教会の馬車で移動する。

 私の空間収納には、常に聖マーヤの旗を立てた聖人専用馬車が収納してある。


 ……こういう場面では最初が肝心。舐められると危険だから、神々しく、いや、最高権力者の如く威厳を持って登場しよう。



 馬車の窓を少しだけ開けて外を見ると、不安そうな表情の被災者が多い。

 昨日マルイ男爵領に残したスピカによると、夕方から余震が始まり、夜明け前に起きた地震は結構大きかったらしい。

 倒壊寸前だった建物が、その地震で倒壊してしまったくらいに。


「聖人ホワイト様が、聖マーヤ救援隊を率いて到着された。皆、礼を取れ!」


 御者台から降りたアステカが、大きな声で私の到着を告げる。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

体調不良で、一回お休みしました。 

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