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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
新時代

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81 対面と体面(1) 

 バラス公爵領教会は、白を基調とした石造りで、ギリシャのパルテノン神殿のように巨大な柱を持つ強固な教会として有名だ。

 マーヤ教はこの大陸の唯一の宗教であはあるが、土台を作った転移者や転生者の影響が強く、教会の建物は建築する時代に現れた天聖や聖人が、希望した設計図で建てられている。


 ぶっちゃけ統一感がない。

 強いて言うなら、その土地の特産品を最大限に使っているところだろうか。

 ここバラス公爵領では、建築資材となる良質の石材が産出されている。

 そんなバラス教会前は今、入れろ助けろと神父に怒鳴り散らす者で溢れている。


 日頃から教会に足を運んでいた平民や貧しい者たちは、地震発生直後から教会に身を寄せている。

 教会は、力なき者や真摯に神を敬う者を救ってきた。だから今、教会の中に収容しているのは弱者や信心深い者ばかりだ。


 ……ケガもなく貧乏そうでもなく、信心深いとはとても思えない下級貴族や商人たちは、何を当たり前のように教会を脅し権利を主張しているのだろう?


 教会は何でも屋じゃない。

 罪人だろうが悪人だろうが、救いを求める者には手を差し伸べる? 

 神を信じる者は皆、神の子?

 

 ないわぁ・・・

 神を敬わず、教えを守らない者は信者じゃないでしょう?


 マーヤ教はね、転移・転生してきた者たちの価値観で進化してきたのよ。

 私は日本人。八百万の神々の国の住人だったのよ。

 神様に感謝し、お願い事はするけど、神社にケガを治せとか食料を寄越せとか、弱者を追い出し金持ちだけを助けろなんて頼まないわ。


 何かを頼む時は、玉串料とか初穂料とかお賽銭を入れるし、供物やお酒を持って行くことだってある。

 他の国の宗教だって寄付とか喜捨は当然あるけど、現在のタラト大陸におけるマーヤ教は、完全に王族や貴族、金持ちから舐められてる。


 ……フフ、多くの人を救うにはお金が必要なのよ。だからアナタたちには対価を求めるわ。


 ……フハハハハ、そして無礼者には、神の存在を知らしめる必要があるわね。


「スピカ、教会騎士の権限を最大限に使って、教会の前庭に居る無礼者たちを蹴散らしなさい。

 そしてバラス教会長に、これから予言者である聖人エレルが、天の力を行使すると伝えて」


「えっ! 天のお力を使われるのですか!?」


 スピカは驚きのあまり目を見開いて問う。


「う~ん、天じゃなくて神の・・・いえ【聖なる杖】のお力って伝えて。今からスピカは聖人エレルの使徒よ」


 私はスピカに幾つか指示を出すと、人の居ない一部倒壊している聖堂の裏に転移し、小型倉庫を出すと中で聖人の正装に急いで着替えて聖布を被った。

 そして崩れた大きな柱を空間収納に入れ 再び転移して、教会の屋上から様子を見る。



「道を開けよ! 私は教会騎士であり聖人エレル様の使徒だ。

 命令に従わない者は、神と聖人に仇をなす者として斬る! 此処は教会の敷地内だ、斬られたくなければ退け!」


 スピカは腹の底から大きな声を出し、強欲さを隠そうともしない無礼者たちに、剣を抜いて脅しを掛ける。

 この国で剣を普通に帯刀しているのは、貴族本人、貴族や豪商の護衛か騎士くらいで、兵士や警備隊員は剣ではなく警棒のようなモノを携帯している。

 だから抜かれた剣を見て、驚きながらスピカに少しだけ道を開けていく。


 そもそも教会騎士に暴力を振るうとか、逆らう者はほぼ居ない。

 居るとしたら無知な高位貴族か無知な王族くらいだ。

 まあ、教会騎士には斬り捨て御免・・・みたいな暗黙のルールがあることを、身分に関係なく皆は知っている。


「まあ、聖人様の使徒ですって! 何だ女だわ」と、貴族令嬢は何を期待したのかスピカが女だと分かるとフンと顔を背けた。


「チッ、教会騎士がなんで此処に」と、裕福そうな服を着た男は顔を顰める。


「だから何だ! 俺は子爵家の三男だぞ!」と、スピカの行く手にわざと立ち塞がり剣を抜いた40代くらいの男は、スピカに右腕をバッサリ斬られた。 


 その途端、「ヒーッ!」とか「キャーッ!」と声が上がり、スピカの行く手を遮っていた者たちは、ザザザと後ろに下がり道を開けていく。


「これ以後、私や教会関係者に対し無礼を働く者あれば、聖人エレル様に対し仇をなす者として斬り捨て、その一族全員を破門する! 今斬った男は破門確定だ!」


 普段着だとボーイッシュな美女だけど、教会騎士服を着たスピカは威厳と凄みまで醸し出す。

 すたすたと教会の中に入ったスピカは、直ぐに教会長と面談し、私の指示を伝えて行動を開始していく。


 スピカの姿が見えなくなると、教会に押し掛けていた者たちの行動は、仕方なく教会を去る者と、しつこく優遇されようと迫る者とに分かれた。

 だが教会は、中度以上のケガ人と付き添い1人しか入場を許可しておらず、どんなにごねても神父は入場を許さない。


 神父を無視する厚顔無恥な者たちが、無理矢理侵入しようとしたところに、教会長が青い顔をして走り出て、これでもかという大声で叫んだ。


「予言者であられる聖人エレル様は、自分勝手なお前たちにお怒りだ。

 このままでは全員が死ぬことになるぞ! 神を、聖人を畏れぬ愚か者たちよ、教会に入りたければ名と身分と住所をこの破門帳(ノート)に書け!」


「神父如きが偉そうに! 最初から名と身分を聞いて優遇すれば良いものを、無能な教会のせいで、王孫であり王子である私が、瓦礫道を歩かされることになった。厳罰に処すべきだな。

 つべこべ言わず、教会は貴族の言うこと聞いていればいいんだ!

 全員が死ぬことになると嘘まで吐くとは・・・聖人が何だというのだ!」


 護衛騎士に守られながら評判の悪い王孫が現れ、災害時とは思えない華美な服装で暴言を吐いた。


 ……こいつがヒルトラか。ミレアから聞いた通りの甘ちゃんだ。


 ……民を救おうと懸命に努力している教会に対し、厳罰に処すとかほざく奴には【聖なる杖】の力で、真の権力とは何かを教えるべきだね。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

新章スタートしました。これからもよろしくお願いいたします。

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