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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
大厄災

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80 権力の使い方(2)

 聖マーヤ教会、それはこの大陸を統べる組織であり、各国の王は神々(教会)の領地を、教会に代わり任されて統治している者に過ぎない。

 このタラト大陸に降り立った6神は、大陸を6つの領地に分け、中央を聖地マーヤと決めた。


 残りの5つの領地を任された5人の者は、それぞれの領地に自分の名を付けた。後に5つの領地は国と名乗ることを天聖様に許された。

 だが現在、各国の王族は聖マーヤ教会に対し、自国の成り立ちを都合よく忘れ、その領土を自分のモノだと勘違いしている。


 それでも各国に新王が誕生する時は、今でも天聖か聖人の許可が必要になる。

 許可を与える時、教会は新王に対し必ず【教会誓書】にサインさせる。

 その誓書には、聖マーヤ教会より統治を任された王として、国を護り民を護り、教会の教えを守ることを誓うと書かれている。


 フフ、そして重要事項として【 教会の教えに反し民を護れぬ王は、統治者として失格であり、マーヤ・リーレス(天聖)又はマーヤ・リー(予言者)の権力・権限により、王権を剝奪することができる 】って書いてあるんだよね。



 800年前には天聖が王権を剝奪し、予言者は【天のお力】によって国を2回消滅させ権力を行使している。

 国を消滅って何?って思ったけど、1回は王都、もう1回は国を丸ごと消滅させたらしい。私は【天のお力】なんて持ってないけど。


 これらの史実は、子供が通う基本学校でも高等大学でも習うんだけど、貴族の多くは習ったことを何故か忘れている。

 でも民の多くは、教会で神父様からこの話を何度も聞いて育つ。

 天聖様や聖人様は有難くも恐ろしい存在だから、決して失礼な態度をとったりしてはならないと、物心つく頃から心に摺り込まれている。

  

 ……フッフッフ、私は天聖やセイントから傍若無人を許可された聖人よ。

 ……基本学校から教えてあるんだから、本当の権力の恐ろしさを教えるのは聖人の務めだわ。




 マルイ男爵領に向かうホーゲン医師に笑顔を向け、私は手を繋いで「大丈夫です。怖くないですよ」と言って、マルイ男爵領の仮設小屋の前にテレポートした。


 到着時刻は、予定より少し早い午後4時45分。

 ちょうど仮設小屋の前で指揮を執っていたマルイ男爵が居たので、ホーゲン医師を紹介して、今度は看護師を連れてくると告げ再びテレポートした。


 そして15分後、看護師とアステカを連れて、再び仮設小屋の前にテレポートしてきた。


「やはり3人同時に転移できるじゃないですか!」

「そうは言うけど、毎回成功するとは限らないのよアステカ」

「それでも構いません。私はマシロ様の護衛騎士なのです。お戻りになられたのなら連絡してください」


 心配性のアステカがプリプリ文句を言う。

 ミレル大河の決壊工事を無事に終わらせて、救援隊のメンバーと一緒にアステカが本部へ戻ったところに、私は運悪く2度目の転移で戻ってしまった。

 アステカも救援隊メンバーも、どれだけ心配したと思っているのですかと激おこだった。納得いかないけど、アステカにごめんと謝っておく。


「お待たせしました。看護師と力持ちの教会騎士を連れてきました」


 私はにっこり微笑んでマルイ男爵領の皆さんに告げる。

 突然現れた私たちを見て、ポカンと口を開けていた住民たちは、直ぐ我にかえり「ありがとうございます聖人様」と深く頭を下げて礼を言った。


 護衛任務を果たそうとピッタリ私に付いているアステカに、ホーゲン医師を手伝うよう指示をだす。

 本当は力仕事をって思ったけど、今日は既にミレル大河の決壊工事で体力を消耗しているから、ケガ人の世話に割り振っておこう。


「マルイ男爵、明日の午前中に医療班の追加と、原初能力持ちの学生が来ます。

 住民にも休息が必要ですから、今夜は生存反応が確認できる倒壊現場だけ、交代で作業をさせましょう。

 貴方が作業を続けると、住民は休憩できませんよ」


 疲れ果てた様子の住民に視線を向け、男爵にも休息が必要だと私は注意する。

 休ませるためにも、男爵と一緒に夕食をとることにし男爵邸へ向かった。

 男爵邸は2階建て部分が倒壊しているけど、平屋部分は無事だったから、女性や子供はそこに身を寄せていた。


 夕食は、皆が持ち寄った食材を使って女性たちが炊き出しを行い、私と男爵も一緒に床に座って食べた。

 領主が善人だからか、住民は親切で優しく、文句を言ったり怒鳴ったり、暴力を振るう者も略奪行為をする者もいなかった。


 住民の半分は広大な麦畑で働いている最中に地震に遭った。だから転倒して軽いケガをしたくらいで、ケガ人の多くは建物の中で働いていた者だった。

 お金にゆとりがある商人や準貴族の家は2階建てで、まだ30人くらい救出されていないとのこと。


 食後私は、亡くなった方々に祈りを捧げた。

 聖人たる者、死者を弔う祈りくらいは捧げられて当然。


 今夜はいつもより美しく星が輝いており、見上げた夜空に幾つか流れ星を見付けて、思わず手を合わせて祈った。正しく権力を使えますようにと。



 翌日、医療班とレスキュー班のチーム【聖人の僕】とスピカが到着した。

 えらく時間がかかったなと思ったら、道路が土砂崩れになっていたり、途中の村の被害が酷く、少し救援したので遅くなったらしい。

 男爵と救援の段取りを話し合い、明日の昼まで此処で救援活動を行うと決めた。


 護衛騎士のスピカからは、私をミレル大河に突き落としたホバルが、教会に連行された後の様子について説明を受けた。

「俺は宰相の息子だ。無礼者め」って叫んで抵抗していたホバルは、聖人様を殺そうとした罪人だと知った避難者たちに「この罰当たりが!」と石を投げつけられたが、謝罪することはなかったそうだ。


 ……反省の色なしか。仕方ない。スピカが科した2日間放置後に収監でいいや。



 昼食後、私はスピカと領都バラスの教会へ行くことにした。

 テレポートして到着した教会の光景を見た私は、「失格者に対し遠慮は要らない。自重も必要ないわね」と、怒りで体を震わせながら言った。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から新章スタートします。

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