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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
大厄災

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75 救援隊出動(2)

 受講者がバタバタと大講堂から出ていく。

 そして入れ替わるように、教会や大学のメインメンバーが集まってきた。

 私は自分が視た映像を説明し、学生の協力で震源地を特定したと告げ、地図を見ながらこれからの予定を立てていく。


 いつかこの日が来ると、皆はマーヤ・リー(予言者)の予言で分かっていた。だからできる限りの準備をしてきた。

 ただ問題も残っている。大人数が移動する手段と、各国との連絡手段だ。

 ミレル帝国の王都に伝令を出し、被害状況を確認させるとしても、ここから到着するのに最低1日半が必要だ。


 今回の震源地は、3つの国の国境線になっているミレル大河の中間地点である。

 聖地マーヤを源流とするミレル大河の西には大国マセール王国があり、北東にはミレル帝国、東南にはヨンド共和国がある。

 下手をすると被害は、広範囲に及んでいる可能性もある。


 今回の震源地なら、聖地マーヤからミレル大河を船で下るのが理想的だが、土手の決壊が心配だし、下船してからの交通手段確保も必要だ。

 荷馬車や辻馬車は聖地マーヤにあるものをかき集めると決められているけど、船に乗せる場合は多くの船が必要になる。


「う~ん、学生を乗せる辻馬車が船に乗りきらない」


「マシロ、辻馬車はマシロの空間収納に入れて、馬だけ船に乗せたらいいんじゃないか?

 それと、マシロが率いる聖地マーヤ救援隊が船を使うのなら、私が率いる教会救援隊は教会の馬車と馬で震源地に向かうよ。

 途中の被害状況も調べる必要があるし、被害が広域である可能性もあるしね」


「あっ、そうだねトマス。最近空間収納が2つに増えたんだった。

 じゃあ教会救援隊用には、荷馬車の替わりに新しく作った収納ボックスを渡すよ。教会騎士団の半分は護衛として連れて行って。

 セイント・ロードス、中央広場に集まった住民に、震源地情報を伝えて、被災地に届ける救援物資を寄付してってお願いしてください。

 1時間以内に、古着や食材など一人1品でもいいからって頼んでね」


 急ぎの案件から順に、私は皆に指示を出していく。

 特定したつもりの震源地は、今の時点での想定に過ぎないことも考慮し、救援隊を2方向から向かわせるのはアリだ。

 地震大国の日本ほどじゃないにしても、トマスもアメリカの西海岸で地震を体験しているから任せても大丈夫だろう。


 メインメンバーは与えられた責務を果たすため、急ぎ足で持ち場へと向かう。

 窓から中央広場を見ると、学生会を中心に班長やリーダーがてきぱきと指示を出しているのが見えた。頼もしい仲間の様子に嬉しくなる。


 ……やっぱり実習訓練は大事だよね。それに若いっていいいわ。活力がある。



 大講堂に残っているのは、私とトマスだけになった。

 周りから見たらトマスの方が年上だけど、トマスは私を58歳の日本人のおばさんだと思っているから、私を年上扱いしてくれる。

 もちろん、いろいろなアドバイスもくれるし、日頃はため口で話す。


「いつもありがとうトマス。ちょっとテンパっちゃった。

 通信手段がないから、何かあったら教会騎士を送ってね。あぁ~、早く無線とか電話が欲しいわ」


「いや、本当にね。あと10年待ってよ。絶対に何か作るから。ド○ーンで自分が飛ぶのもいいね。そういえばさ、マシロのテレポートは何処まで距離が伸びたの?」


「う~ん、今のところ最長15キロくらいかな。座標とかじゃなくてイメージできる場所に限定されるから、便利そうで使い勝手が悪いんだよね」


 黙っていると弱気になりそうだから、自分を落ち着かせながらトマスと話す。


「大丈夫。マシロはずっと準備してきたし、マシロはマシロらしくやればいい」


 どうやら不安気な顔をしていたようで、トマスが私の頭をよしよしって撫でてくれる。


 ……もうトマスったら、こんな時まで優しくてイケメン。




 2時間後、聖マーヤ救援隊が先に出動した。

 参加者は、教授3・医師3・看護師10・神父5・救援隊の学生は医学部13・看護学部15・その他の学生98人で、医学部の学生を含む30人は、トマス率いる教会救援隊に同行している。


 各自荷物は少な目にって言っておいたけど、お貴族様の少な目は帰省する荷物より少ないくらいで、ホワイティ商会の荷馬車サイズの収納ボックスを、各班に貸し出すことにした。

 医療班には救援隊を立ち上げた時に渡してある。

 事前に用意すべき器具や薬類、衛生用品、洗浄器具等は、かなりの量がストックしてあった。とはいえ、あの規模の地震に対応できるとは思えない。



 ミレル大河を下っていくと、震源地が近付くにつれ建物の倒壊や山崩れなどが目に付くようになった。

 ミレル帝国側は大河の側で多くの人々が暮らしているが、対岸のマセール王国側は、見渡す限りの麦畑や果樹園で、船上からでは建物の倒壊は確認できない。


 震源地近くになると大河の水量は激減した。

 これ以上進むのは危険だと船頭が言うので、震源地の8キロくらい手前で下船し、辻馬車での移動に切り替えていく。

 教会騎士団の3人を馬で先行させ、被害状況の確認に向かわせた。


「マシロ様、マセール王国側はどうされますか?」


 日も暮れてきたので今夜の野営地を決め、隊員を整列させたところで本部班の班長で学生会会長のノイエンが、救援隊を2つに分けるべきかと訊いてきた。


「私、大国マセール王国の王や公爵は、民を救済してくれると期待してるの。

 昨年の聖人認定式で、必ず天災が起こるとマーヤ・リー(予言者)が言い渡してあるから。

 でも、ミレル帝国の王族や高位貴族が、民を救済するとは思っていないわ。よって、ミレル帝国側に本部を設置し救済活動を始めます」


 学生の身の安全を考慮し、今夜は小高い丘で野営する。

 夜間に村や町に入ると、理性を失った被災者がどう動くか分からない。



「ご報告します。この先の町はほぼ壊滅状態ですが、民の多くは屋外で仕事をしていたため、死者や重傷者は少ないと思われます。

 ですが、町の少し先の村は、決壊した川から水が流れ込み水没していました」 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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