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7 能力検査(3)

 ちょっと気まずい空気が漂った後、「そんなことが・・・あぁ」と呟き、ルビネス神父は突然その場に跪いた。


 ……やばい、私、何かやらかした?


「現時点でセイントとして責任を持って言えるのは、お嬢さん、いえ、マシロ様は【空間】と【創造】の2つの【原初能力】を持つ、《ソードメイル》でいらっしゃるということです。

 現在、この大陸で確認されている《ソードメイル》は、マセール王国の国王を含めても10人未満です」


 跪いたままで話すルビネス神父は、何処か苦しそうな表情で再び黙って下を向いてしまった。


「ソードメイルじゃと!?」と、お爺ちゃん先生は驚いて後ろに3歩下がった。


「ソ、ソードメイル?」と、父様は目を見開き固まった。


「えっ? 芸術は? マシロは音楽の才能があると思うのですが?」


 母様の驚くポイントは父様と違って、芸術が無かったことのようだ。

 ソードメイルとは、確か2つの【原初能力】持ちの人のことだったよね?


 ……えっ? 私チート持ち? いやいや、空間と創造? 何で?


 ……あっ、この濃紫の髪は、【空間】能力持ちの特徴だった。そして、その一族はマセール王国に居るって・・・元々この子が持っていた能力なんだ。



「これより先の話は、確定では・・・いや、う、ああぁぁー!

 申し訳ありませんが、私では判断できないことがありますので、12歳の誕生日までに()()本教会にマシロ様をお連れください。

 それまで、絶対にケガや病気をさせることなく、いえ、それでは不安だ。

 できれば今日から本教会で教育を、ぜひ、本教会に来てください!」


 ルビネス神父は頭を抱えた後、父様の方を縋るような目で見て、今日から私を本教会にって頼んでいる。何が不安なのかな?

 神父が狼狽する姿に、きっと他にも何かあるんだろうなと皆は思っているけど、直ぐに返事なんてできない。


 ……もしかして、宇宙人だってバレた?

 

 私は冷や汗を背中にダラダラ流しながら、どうしたものかとお爺ちゃん先生に「助けて」って視線を向け合図する。


「ああ~セイント・ルビネス、いくらマシロちゃんがソードメイルでも、聖マーヤ原初能力学園への入学は12歳からと決まっておる。

 勉強ならこの私が責任を持って教えるから大丈夫じゃ。既に高位学校の半分の範囲は教え終わった。中位学校は必要ないぞ」


「えっ、高位学校ですか? やはり」と、ルビネス神父は恍惚とした表情に。


「あの、マシロの身の安全ですが、オリエンテ商会が責任を持って守りますので、どうか今暫く親と過ごす時間を頂きたいと思います」


 父様は正気に戻ったようで、お爺ちゃん先生と同じように首都シュメルに残したいとルビネス神父にお願いする。


 ……そうだ、ここは日本人の得意技、愛想笑いと曖昧な表現で勝負よ!


「セイント・ルビネス、わたし、まだ自分に与えられた・・・使命とか試練()()()()ものを、何も果たしてない()()()()()。ですから、わたしに2つの能力について書かれたご本をください。そうした方がいいって()()()します」


 幼女と少女の間くらいの話し方で、ゆっくりと、できるだけ上品な感じで、アルカイックスマイルっぽく微笑んでお願いする。


「なんと神々しい・・・」


 せっかく立ち上がっていたのに、神父は再び跪き叩頭した。


 ……はっ? ねえ大丈夫? 神々しいって何? もしかして私、宇宙人ぽかった?




 妙に疲れた能力検査を終え、私はなんとか首都シュメルに残ることに決まった。よっしゃー!

 でも、私には護衛が……聖マーヤ教会が派遣する護衛がつくことになった。

 忙しい養父母のお陰で自由時間がたくさんあったのに、これからは一人の時間が大幅に減る。まあ、1カ月後からだけど。


 それなら今のうちに行動あるのみ! ってことで、私は父様の仕事に同行することにした。

 もちろんゴリ押し。必殺、幼女の泣き脅し作戦は最強!

 だって今回のお仕事は、商船ランカスターでインカーヤ島に行くんだもん。

 私が拾われたのは、父様がインカーヤ島からの帰りの航路だった。

 

 インカーヤ島は人口30万人の、そこそこ大きな島で、シュメル連合国に属している。

 オリエンテ商会の主力商品は、インカーヤ島の主産物である銀・宝石類だ。

 オリエンテ商会は、銀山と様々な宝石が産出される土地を持っている。

 なんでも3代目オリエンテ商会頭首が、インカーヤ家の姫と結婚したらしい。そのお嫁さんが父様の御婆様だ。父様は5代目頭首。


 オリエンテ商会と協力関係になる前のインカーヤ島は、農業や漁業、製塩が主な産業で、島を治めていたインカーヤ家は貧乏だった。

 しかもシュメル連合国のお隣にあるプクマ王国や大国マセール王国が、製塩技術を狙って植民地にしようと何度も脅しをかけていた。


 そのピンチを資金力で助けたのが、3代目だった。

 やっぱりお金は大事よ。でも、商会の全財産に近いお金をつぎ込んだ3代目は凄い。血は繋がってないけど、愛のために頑張った曽祖父はロマンよ。

 その甲斐あってか、お金の代わりに頂いた山から銀が出た。


 オリエンテ商会が大きくなったのは、父様も持っている【原初能力 土】の力が大きい。

 銀山も宝石の採掘も、チート能力持ちが2人いれば半年で大金持ち。

 

 ……よーし、宝石採掘に行くぞ!

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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