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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
三聖人

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69 救援隊の結成(3)

 ◇◇ 高等大学内学生食堂 ◇◇


 翌日、高等大学と医学学校の学生が利用する学生食堂に、⦅【聖・マーヤ救援隊】の隊員募集 ⦆というお知らせが掲示板に貼りだされた。


 一般募集人員は100人程度で、男子50人(うち医学生20人を含むこと)、女子50人(うち看護学生20人を含むこと)。

 原初能力持ちの募集人員は50人程度で、総合学科のグループでの参加を許可する。収納ボックス製作可能者は、使用料を受け取ることができる。


 実際の被災地に行って救援活動を行うためには、必ず2回以上の講義と3回以上の実習訓練を受講する必要がある。

 また最低2回の講義を受講し、2回以上実習訓練に出席すると、単位が貰えると書かれていた。


「選択教科なら3単位で、必修教科なら1単位かぁ・・・まあどの教科も合計5単位ないと合格できないから、査定の厳しい必修教科は助かるよな。しかも、希望する教科の単位に充当できるって最高かも」


 掲示板の前で友人と話しているのは、高等大学の新入生たちだ。


「でもさぁ、実習訓練って放課後とか休日だぞ」


 お知らせの半分まで読み進めた学生は、ちょっと嫌そうな顔をする。


「えっ、実習責任者は聖人ホワイト様? ええっ? 被災地に実際に行って活動したら、卒業時に教会救援隊副隊員として認定書が貰えて、希望すれば教会救援隊に正式入隊できる?」


「はあ? 教会救援隊は賢者である聖人ルーデル様の直属部隊だと!」


 貼り出されたお知らせの後半部分を読み始めた学生たちは、その内容に驚きながら大声で読み上げる。

 その大声に釣られて、医学生や高等大学の先輩たちも何事?って集まってきた。


「俺の卒業後の目標は、大陸一のホワイティ商会に就職することだったが、教会騎士団と同等の権限を持ち、多くの民に尊敬され、大陸中で活躍できる教会救援隊に入隊することは、この俺に相応しい目標だと思う。

 聖人ホワイト様のご指導を受け、聖人ルーデル様の下で働けるなんて、もう絶対に勝ち組だろう。無能な上司の機嫌をとる必要もないしな」


 澄ました顔で会話に参加してきたのは、高等大学学生会の副会長であり【マシロ様を崇める会】の創設者であるノイエンだ。

 まあ彼は卒業後に聖人ルーデル様の秘書が確定しているから、救援隊の指揮官候補でもある訳で、できるだけ優秀な学生を勧誘するためにやって来た。


「教会騎士団と同等の権限?」と、皆の瞳がキラリと光る。

 

 教会騎士団といえば、騎士を目指す者の最高峰であり、小領主程度なら指示に従わせることもできるし、何と言っても制服がカッコいい。

 世の女性たちにキャーキャー言われ、剣の腕に自信がある者にとっては憧れの職場だ。各国の騎士団より格上で、与えられる使命は重いが権限は多い。


『もしかして、剣の腕がなくてもイケル感じ?』と、騎士には到底なれない男子学生はニヤリと微笑む。


『もしかして、無能な貴族男の機嫌を取らなくていいってこと?』


 無能な貴族男性にこき使われ、女だから、下級貴族だからとバカにされる未来を憂いていた女子学生たちは、チャンスだわと微笑む。

 貴族家に生まれた女性は、どんなに貧乏でも商会で働くより、王宮や役所で働けと貴族の体裁を気にする親から命じられることが多い。


「でもなあ、民のために力仕事とか、伯爵家の子息である私には無理だな」


 マシロの講義を受けたことのない、高位貴族というプライドだけは高いギョデク共和国の男子学生が、どこかバカにした感じで言う。

 

「確かに君の実力じゃ実習にもついて来れないだろうね。身分だけあれば役人になれる国の出身で良かったなパーネル」


 皆を見下していた伯爵家の息子に、鼻で笑いながら喧嘩を売ったのは、医学学校学生会の会長であるカンバル19歳だ。

 彼はノイエンと同じヨンド共和国の学生で、レスター公爵家の次男であり、将来はヨンド共和国で建設中の病院で働くことを目標としている。

 医学学校の学生は、2年生まで共通教科を高等大学で学ぶため、ノイエンとパーネルとカンバルは同じ2年の同期生だった。


「はあ? これだから歴史の浅い小国の人間は嫌なんだ。貴族としてのプライドもない」


 そう言い捨てて去っていくパーネルに、皆は偉そうな負け惜しみだと呆れた。

 パーネルの成績は常に最下位近辺をウロウロしているのに、常に威張っていて女子には特に嫌われていた。


「不確かではあるが、教会救援隊の給与は教会騎士団と同じくらいらしいぞ。

 しかも、活動は常にホワイティ商会がバックアップしてくれるってことだから、この大陸の最先端の技術や商品を使うことだってできると思う。

 この【聖・マーヤ救援隊】を率いるのはマシロ教授だから、きっと素晴らしい学びが生まれる。ああ、本当に楽しみだよ」

 

 にっこりと笑って誘うのは、高等大学学生会会長オスカル21歳である。

 彼はシュメル連合国の伯爵家次男だが、彼の家は首都シュメルから離れており、王族とは面識もない。しかも【マシロさまを崇める会】の副会長だ。

 最高学年の3年生だが、伯爵家を継ぐ必要もないから、何処までもマシロについて行こうと思っているガチのファンだった。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 高等大学の大講堂に集まった学生は264人で、関連部署の教授や指導者は20人。

 まあ単位目的で参加している学生も居るから、人数こそ集まりはしたが、本格的な実習に入る第三回目あたりで人数は激減するだろう。


 ……フッフッフ、災害現場で行う救済活動が甘いはずないじゃん。でも、せっかく得た人員。何が何でも現場まで連れて行くわよ!


 今日の講義は、大災害について学び、救済本部の設営から活動開始までに必要な準備、災害現場で考えられる人々の行動、望まれること、できること、できないこと等を中心に講義する。


 第二回は、災害現場で行う具体的な活動内容の勉強と、やってみたい活動の選択、班作り、仮リーダーの選出等だった。

 この時点で前向きな者と、内容を知って消極的になる者とに分かれた。


 第二回で既に心が折れた学生は捨ててもいいが、迷っている者を鼓舞するため、私はとある秘策を打ち出した。  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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