68 救援隊の結成(2)
私は自分が学都に来た理由を、予言で視た大寒波に備えるためだったと招集メンバーに告げた。
「【マーヤ・リー】として自分に与えられた使命は、教会や各国に予言内容を知らせることだと知っていますが、私にはもう一つ、【マーヤ・リーデ】としての使命もございます。
予言で視た災害で多くの命が奪われぬよう、私は学生を導き指導者を育て、産業を発展させ、商会で得た利益を民のために還元してきました。
ですが、天災に対抗するのはとても難しいことです。
どうすれば多くの民を救えるのか、どうすれば優秀で役立つ人材を育成できるのかと、マーヤ・リーデである私は常に考え、常に実践してきました。
そして出した答えが、スポンサーシップという考え方でした。
皆さんのことは、共にスポンサーシップを実現できる仲間だと信じています。
どうか、これからもお力をお貸しください」
突然聖人モードに切り替えた私は、丁寧な言葉遣いと態度で、最後はにっこりと微笑んで(やってくれると)信じてるよ、協力してねって頭を下げた。
「全てのことは、2つの【聖】能力、聖人としての使命を果たし、多くの者を救うための教えでしたか。ありがたい」
納得しましたと頷いて、原初能力研究所の副所長は椅子から立ち上がり跪いた。すると他のメンバーも同じように跪く。
教会のセイントやセントの半分は泣いており、半分は私を拝んでいる。
……いや、ちょっと、私、そんなに聖人ぽかった? 神々しいって呟くの止めて! 拝まんでもいいー!
ちょっと落ち着いたところで、緊急招集の議題である救援隊の必要性について理解してもらうため、【マーヤ・リー】として視えた未来の災害内容を隠さずに告げた。
そして、私が如何に焦っているのかを知ってもらった。
神の啓示を我々に話しても良いのでしょうかと問われたが、情報を共有しなければ同じ気持ちになれないから問題ないと私は断言した。
勿論、予言者として話すべきではない予言もあるが、【聖なる杖】のお力が示された内容は、教会だけでは対処できない内容であり、神が王や貴族に為政者としての能力を問う可能性が高いと脅しをかけた。
このメンバーを脅す必要なんかない気もするけど、学生会のメンバーは全員が王族であったり高位貴族だし、各学校の長も自国の王族や高位貴族とは懇意なはずだ。
私が直接脅しても効果は薄い気がするから、このメンバーが懇々と説明という名の脅しをかけてくれることを望んでいる。
……やっぱね、見た目14歳の美少女じゃぁ、少々睨んだりしても効果ないのよ。あの国王や王族や大臣たちには。
「私だって怖いのよ。もしも国王や役人が神のお言葉を無視し、民を救わなかった場合・・・本当に神罰が下りそうで。
その神罰で、また民が傷付いたりしたら、私は無能な王を許せなくて鉄槌を下してしまうかもしれない・・・この手で。
だって前回の厳冬の時は、裏切られた悔しさと悲しさで何日も泣いたから」
私は自分の両手をじっと見てから、両腕を抱くようにして「怖いわー」って声を震わせながら言う。
神の神罰が怖いのと、また裏切られたら自分の怒りが制御できない気がして怖いのだと、真に迫る感じで・・・ね。
……いや本当に怖い。頼むからちゃんとして!
全員の顔色が悪くなったところで、私は本題に入っていく。
災害時にすべき救援活動の内容や、それらを行うために必要な知識、そして何より事前準備と予行演習が必要であることを力説する。
救済活動は学生会を中心に行い、救援隊の名を【聖・マーヤ救援隊】とする。
名に【聖】が付いているのは、聖人の命を受けた特別な組織であると世間に知らしめるためである。
「テントってあったかしら?」
「はいマシロ様、屋台などが日除けに使うモノですよね?」
はて、日除け? ああ、ヨンド共和国の屋台の天幕は、色とりどりで美しかったっけ? 確かにあれはテントだわ。
「学長、それって雨が降っても大丈夫なものですか? 私が欲しいのは、災害時に対策本部として使用したり、被災者が雨を避けたり一時避難場所として使用するんですけど」
「いえ、雨はダメですね。少量なら大丈夫ですが、ちょっと丈夫な布で作ってある程度ですから。それに屋台以上の大きさのモノは見たことがありません」
……どうやらこの世界には、私が知っている大きなテントはなさそうだ。
「私が用意したいのは、四隅または6箇所に支柱を立て、天井部分に船の帆のように丈夫な布を被せる感じのテントなのですが・・・船の帆はどうですか? 雨にも強いと思いますが?」
私はそう言いながら、皆に見えるよう集会用テントの見本を自分で描いて、テーブルの中央に置いた。
「出来れば支柱は金属製で折りたたみ可能が理想。組み立てには支柱と同数の人間が必要で、天幕はすっぽりと被せられる感じで」
先ずは組み上がった支柱だけの図を描いて、それぞれの骨組みやパーツの説明もしていく。まんま日本の運動会で学校が使っていたものだ。
「う~ん、帆布は確か特殊な樹液を塗って雨を防いでいたと思いますが、あれは凄い匂いで1年くらいしないと臭くて近寄れません」
答えてくれたのは、医学学校の副学長だ。医療現場で使うこともあるが、使用するまでに1年以上天日干しして匂いを消すらしい。
仕方ない、木材を使って屋根と骨組みだけ設営するか・・・ついでに、子供や女性のための仮設住宅・・・いや、仮説小屋をぱぱっと建てれるように指導しよう。
総合学科の研究テーマにすれば問題なし。
「こ、これは新しい商品ですか? また大陸中に販売を?」って、研究所の副所長がテント図を見て瞳を輝かせる。
「えっ、そこ? いや、ホワイティ商会はもう手一杯だから、研究所でも高等大学でも医学学校でも、挑戦したい人に製造と販売権を譲るわよ。特許料は半分になるけど。
これがあれば、災害時に非常に役に立つし、屋外イベントでも使えるよ」
テントそのものに興味を持った副所長にそう言うと、この場に居る教会関係者以外、全員がスッと手を上げた。
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