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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
三聖人

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66 謁見(3)

 なんだか訳が分からないうちに式典が終了した。


「マシロ、なんか凄い演出だったね。あれはどういう仕組みなんだ?」


 あれを演出だと疑っていないトマスが、目を輝かせながら訊いてきた。


「トマス、あれは演出じゃないわ。会話の内容だって勝手に口から飛び出したの。しかも訳わかんない映像まで見えたんだけど・・・ねえ、私ってただの地球人だよね? もしかしてトマスも何か突然視えたりする?」


「ええっ? あれって演出じゃないの? い、いや僕は何も視えたりしないよ」


 てな会話をしながら、自分たちの部屋へと一緒に戻っていく。

 お隣同士の部屋の前まで来たけど、私はまだ混乱していた。

 

 ……視えた映像が半端ないんですけど! あれって大地震よね? はあ? 


 ……確かに先日カードで占った結果を各教会に伝えたけど、あれが未来の光景なら大変だ。救援隊でもつくらないと、この大陸に自○隊はいない。


 部屋に戻ると母様が居て、疲れた様子の私にお茶を淹れてくれる。

 今回の就任式には両親は参列していなかった。

 シュメル連合国の王族に会うと何か言われそうだったし、あの人たちは母様が教会で暮らしていることを知らないから、顔を合わせない方がいいだろうってセイント・ロードスが。


「午後からは各団体の責任者との謁見でしょう? 大丈夫マシロ?」


「えっ? うん大丈夫。ねえ母様、この大陸で大きな地震なんて過去にあった?」


「地震? そうねえ、タラト火山が80年くらい前に大噴火した時は揺れたらしいわ。大昔に聖地マーヤのドキヤ火山が噴火した時は、大陸中が揺れたって聞いたことがあるわ」


 火山?・・・いや、あの映像の中に火山の噴火は無かった。

 とにかく、王族や貴族は信用できないから民になんとか・・・でも、民に何ができるんだろう? 私は何をするのが正しいんだろう?


「失礼しますマシロ様。謁見を断ったマセール国王が、どうしても謁見して欲しいと天聖ソワレ様との謁見の冒頭で頭を下げたそうですが、如何されますか?」


「マセール国王? 仕方ないわ、あの予言を聞けば心配になるわよね。夕食後の午後7時で了承して」


 天聖ソワレ様付きの護衛騎士が、あの図書館みたいな謁見会場から伝言を持ってきたので、私は渋々だけど了解した。

 あの大地震の映像を見たら、本気で脅しをかける必要がある。予言者エレルからの伝言として指示を出すことも可能だ。

 それに、長年教会が希望していた貴族学園への平民入学の件は、実現させたい。




 自分の見た予言の光景を思い出し、重い気持ちでマセール国王との謁見会場に向かう。

 予言者である聖人エレルには会えないから、孫であろう聖人ホワイトからなら何か訊き出せると考え、強引に謁見を希望したと思っていた私は、かの国に何かを期待した自分に失笑した。


「我が国の貴族が大変迷惑を掛けたことを、心からお詫びする。

 既にお気付きかと思うが、貴女は私の孫のミリアーノなのです。今日お顔を拝して間違いないと確信しました。貴女は平民ではなく王族です。

 かわいそうに・・・何か、幼い日の頃を思い出したりされていませんか?」


 如何にも大国の王ですって感じの豪華な正装を身に纏った男は、懐かしそうに私を見て身内なんです祖父なんですって訴えてくる。

 私の、いや予言者の話を聞いたはずの王が、最初に語る内容がこれ?

 自国の民を救うために、どうかお知恵を御貸しくださいってことじゃないの?


「何も覚えておりませんが、私が養父に助けられたのは、インカーヤ島とシュメル連合国の間にある海上でした。私は天から降ってきたのです。

 もしもこの身が貴方が思う孫のものだとしたら、貴方は私に証明せねばなりません。何故、血濡れの服を着ていたのか、何故、何処の国の言葉も理解できなかったのかを」


「血濡れの服?・・・そ、そうですね。確かに何も証明できませんが、しかし私は祖父として……」


「お約束通り謁見しました。貴族学園に平民を入学させるという話ですが、具体的に各()()に何人くらいでしょう? 平民も入学するのですから、貴族学園という名も当然変えられますよね?」


 これ以上無駄な話は必要ない。会話をぶった切って本題に入ろう。


「人数は、各()()に3人くらいは」


「はあ? 各学部ではなく各学年にたった3人? その程度で聖人である私との謁見を申し込んだのですか? 

 もしかしてマセール国王も役人も、私をバカにしているのでしょうか?

 ああ、使節団とは名ばかりの者たちは、私を見下し無礼な態度でしたから、たった3人でも取るに足らない聖人なら、満足すると思ったのでしょうね。

 15分以内に私が満足する改善案が出なければ、マーヤ・リーデ(先導者)が貴国に公式訪問することはないでしょう。もちろん賢者もです」


 なんだか情けなくて腹が立つ。国王を睨み付けて席をたち、私は怒りの感情を抑えるため大好きな中庭へと向かう。スピカとアステカも追ってくる。


 ……マセール国王の瞳には、私は聖人ではなく、平民として生きている可哀相な孫娘としか映ってなかった。


 ……聖人の存在ってこの程度? 自国の民の危機には関心なし?


 涙が溢れてきて、どんどん急ぎ足になる。泣くもんか!と自分に言い聞かせながら、星がみたくて仕方ない。


 ……広大な宇宙を見れば、きっと心は凪いでくる。



 15分後、マセール国王が再び会いたいと言ってきたが、私の出した課題内容が不可だったので、提出された改善案を朱色で書き直し、使いの神父に渡して伝言を頼んだ。


「本当に平民が各学年に10人以上在学し、学園の名前がマセール学園に変更されているかを、再来年の春、私が直接見に行くと伝えて」


 来年の春には大災害が起こる可能性がある。復興の指揮を執らなきゃいけないから、行くなら再来年の秋季休暇中ね。


 ……ああ、この夜空の何処かに銀河系はあるのかな? 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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