64 謁見(1)
母様の指導で鍛えられた聖歌隊の美しい讃美歌で、式典は幕を開けた。
最初に登場した孤児を中心とした聖歌隊は、無垢な心そのままに透き通る声を響かせ、次に登場した学生を中心として結成された学生聖歌隊は、大迫力の歌声で参列者を圧倒した。
聖歌隊が歌ったのは、アニソンと音楽の教科書から厳選した2曲を私がアレンジしたもので、学生聖歌隊は、クラッシック音楽から引用した2曲を歌った。
歌詞を付けたのは天聖ソワレ様と母様だ。
私が書くと神様を讃える曲じゃなくなる可能性があり、ああ神よ!って涙を流す程に感動させることなどできない。
讃美歌が終わると、セイントとセント8人が名を呼ばれながら大聖堂のステージに登場してくる。
続いて「マーヤ・リーデ、聖人ホワイト様のご入場です」と呼ばれた私が、今日は白い聖布なしで登場する。
まだ訪問していない国や私を見たことがない者たちの視線が、痛いくらいに突き刺さる気がして背筋がゾッとする。
参列者は全員立ち上がり、上位者である私に対し礼をとっていく。
参列者の席次は、通例通り寄付金の額と教会への貢献度で決められている。
最前列の中央に近い席を用意されたのは1位のマセール王国だ。
昨年までは3位だったけど、私を害した国だと各国に知られたせいか、今年に入って寄付金額が大幅に増えたらしい。
2位だったのは先日訪問したヨンド共和国で、寄付金の額よりも民のために大金を投じて国立病院を建設したことが評価された。
3位は驚きのプクマ王国だ。これまでずっと5位だったけど、私の訪問後に再びタラト火山の土地を、前回と同じ面積だけど倍額で極秘購入したらしい。
これを教会が寄付扱いにしており、王子の名で孤児院を新しく2施設作ったことも評価された。
これまで常にトップだったシュメル連合国は4位に転落し、その事実に愕然としたらしい。
昨日大聖堂の前に貼り出された席次表には、各国の寄付金額や教会への貢献度や民への貢献度などが、事細かに箇条書きで説明されていた。
これまで教会は、これほど赤裸々にぶっちゃけて曝した・・・いや、丁寧に説明したことがなかっただけで、大国とはいえ事実に対して抗議はできなかった。
因みに5位は国ではなくホワイティ商会で、貼り紙を見た参列者や従者たち、そして学都の住民を驚かせた。
当然のことと頷くのは聖地マーヤの学校関係者と住民、そしてホワイティ商会から多大な恩恵を受けた各団体の責任者たちである。
「たかが商会ごときを、国と対等に扱い評するとは信じられん!」と、怒りをぶつける国の代表やお付きの貴族は当然少なくはなかった。
怒りの矛先は、教会とホワイティ商会に向けられたが、大きな声で教会を批判することなどできないから、ホワイティ商会を身の程知らずと罵倒する。
批判しないのはヨンド共和国とプクマ王国だけで、批判できない立場なのがシュメル連合国だ。
マセール王国は、参列する王族は沈黙し、多くを知らない高位貴族の従者たちは批判していた。
ホワイティ商会を批判している者の大半は、聖人ホワイトこそが、ホワイティ商会の創立者にして商会長であると知らない。
「しかし、この貢献内容を見ると、我が国より上でも良いと思えますな」
激昂している罰当たりな者共の横に来て、涼しい顔をしながら大きな声で話すのは、ヨンド共和国の王弟であり国務大臣だ。
「燃料不足の我がヨンド共和国に、固形燃料を売ってくれたホワイティ商会は、他国よりもありがたい存在でしたね。卓上コンロの発注も頂いたし」
国務大臣の息子であり、高等大学の2年であり、聖人トマスの秘書になるノイエンが、父親に続いてホワイティ商会の援護をする。
「我が国が南に在るからと、どこぞの国が船団でやって来て、貴重な薪を強引に買い占めたと聞いた時は、再び戦争をすべきかと考えたが、ホワイティ商会のお陰で平和が保たれたな」
かなりの皮肉を織り込みながら、戦争という物騒なキーワードを出すのは、ヨンド共和国のエバロン王だ。
そのどこぞの国こそ、大声でホワイティ商会を罵倒していた、席次6位のミレル帝国と最下位のギョデク共和国である。
ヨンド共和国の北西隣が宿敵ミレル帝国で、ギョデク共和国はテペ湾を挟んだ対岸に位置しており、王族の命令で来たと脅し買い占めたらしい。
「ホワイティ商会に文句を言うのなら、以後固形燃料や湯たんぽは売らなければいいだけのこと。これから販売される新商品も、買う必要が無いのでしょうから」
「そうですね副所長。原初能力研究所は、ホワイティ商会から多大な援助を受けており、そのお陰で素晴らしい製品を世に出し、素晴らしい技術を活かす場を与えられています。
優秀な学生や研究員は、ホワイティ商会に文句を言うような国に帰って就職するでしょうか?」
原初能力研究所の副所長と次世代能力研究室の教授は、時代の変化も読めないような国に、ホワイティ商会は出店する必要もないし、学生も戻る必要などないでしょうと笑いながら、就職の心配までしてみせる。
「無理でしょうなドレン副所長、カーセ教授。うちの学生も古臭い考えの上司が居るような国には、帰りたくないと言っていますぞ。
ホワイティ商会は、利益の半分以上を民のため、学生の為、産業発展の為に使っているのですから」
この大陸でセイントやセントより重要視されている医学大学の学長が、「貢献という意味が理解できない国には、医者の派遣を見直すべきじゃな」と不機嫌そうに付け加えたので、掲示板の前に居た不満分子たちは、青い顔をして逃げ出した。
【 席次 第5位 ホワイティ商会の貢献内容 】
教会病院に対するマスクの無償提供(300万トール分)、原初能力研究所に対する基金の設立(年間3,000万トール)、高等大学に対する奨学金制度(年間2,000万トール)、教会及び学都内施設へのブラックカイロの無償提供(100万トール)、シュメル連合国の中位学校に対する奨学金制度、大陸最大の孤児院建設、孤児の雇用と孤児の教育制度つくり他。
大陸中の燃料不足解消のため、固形燃料と卓上コンロ、湯たんぽを開発し、多くの民の命を救い生活を守った。
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