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6 能力検査(2)

 6歳の誕生日、私は養父母から誕生日プレゼントに馬車をもらった。

 この国では6歳と12歳の誕生日を、盛大にお祝いする習慣があるらしい。

 

 ……だからって馬車? 金持ちの感覚がよく分からない。

 ……全力で固辞したけど、6歳になったら学校に行くし、外出しても良くなるのでって・・・でも私、基本学校とか行かないよね? 

 ……えっ? オリエンテ商会の子供だから誘拐されやすい? 護衛も必要?


 全くの赤の他人である私を養女にして、衣食住や教育まで惜しみない愛情とお金をかけてくれる養父母には、心から有難く感謝する日々。

 父様は仕事が忙しく、10日くらい会えないことはざらだし、母様だって【原初能力 芸術】を生かして、商業用のポスターを描いたり楽器の演奏依頼も多く忙しい。


 これはもう、早く技術とか文化とか、何かを発展させて恩返しをしなければ申し訳ない。

 技術系でも理化学系でもなく、占い師と小説家をやってた私の知識では、産業革命なんてできる訳がない!


 確か宇宙の管理者は、自分の能力は次の世界にも引き継げるって言ってたけど、6歳児の小説家って・・・まだこの世界の知識がないから無理だよ。

 子供の占い師なんて怪しすぎて、騎士とか兵士に捕まるレベル。


 ……でも、無垢な子供の方が信憑性が上がったりとか? う~ん・・・


 現時点で役立っているのは、私が映画音楽やアニソンを口ずさんで、それを聴いた母様が「マシロには音楽の才能があるわ」って大喜びし、アレンジして演奏会で披露しているくらい。まあ、大好評らしいけど。

 確かに音楽界に新風を吹き込んでいるけど、自分の才能とは全く関係ない地球の知識ってところがモヤモヤする。




 今日は買ってもらった馬車に乗って、聖マーヤ・シュメル教会で能力検査というか鑑定を受ける日だ。


 馬車に同行しているお爺ちゃん先生は、「マシロはどんな【原初能力持ち】なのか楽しみじゃな」って、にこにこしながら白い顎髭を触っている。

 大ヒット映画で、賢者の石を探していた少年が通っていた魔法学校の、校長先生に似ていて親しみが持てる。


 ……期待が重いよお爺ちゃん先生。勉強は過去に学んでいただけでチート能力じゃないんだよ。


 養父母も、なんでか私に【原初能力】があると確信している。

 でもでも、炎も出せないし水も出せない。風も吹かせられないし、物を動かすこともできない。

 父様が持っている【原初能力 土】の練習もしてみたけど、うんともすんとも変化なし。


 音楽ならちょっとは自信がある。

 完全にズルだけど【原初能力 芸術】認定してくれないかなぁ。

 聖・炎・水・動力・空間・創造・風・土・芸術のどれも発動できてないのに、このままじゃ皆をがっかりさせちゃう。ふ~っ・・・


 空間とか創造って何?

 空間は、異世界転生的に考えたら、マジックバッグとか空間転移?

 創造は、錬金術的な感じなのかな? 

 でも、オリエンテ商会の営業部長アレンさんは創造能力持ちだけど、時計や船なんかの設計図を描いてる。


 もっとあれこれ考えたかったけど、オリエンテ商会から教会までは馬車で7分。あっという間に到着してしまった。

 見上げた教会は、インドのタージマ○ルに似ている。背の高い鐘楼が左右にあり、白く美しい建物は荘厳で、神域らしく気が澄んでいる。



 インドの男性が着ている民族衣装クルタみたいな白い服を着た神父さん2人が、笑顔で出迎えて奥まで案内してくれる。

 螺鈿細工のような輝きのある扉を開け中に入ると、クルタの上にインドの女性が着用するサリーのように、白い布を体に巻いた男性が待っていた。

 どうやら高位の神父様のようだ。なんかオーラが違う。


 ……マーヤ教会をつくったのは、インドからの転生者かな?


「ようこそいらっしゃいました。私はナパーレ教授のご指名で聖マーヤ本教会から来たセイント・ルビネスです」


 緑のキャッツアイの瞳に、深緑色の長い髪の神父様は、お爺ちゃん先生が無理を言って本教会から来てくださったようだ。

 【聖・統率】の能力持ちは、皆さんキャッツアイの瞳をしているらしい。

 【上級聖能力持ち】は10人も居ないと、お爺ちゃん先生が言っていた。男性は名前の前に【セイント】と付け、女性は【セント】と付けられる。


 ……いやもう、地球の宗教知識がごちゃごちゃになるわ。


「本日は娘のために、遠い本教会からご足労いただき本当にありがとうございます。妻のオリアナと娘のマシロです。どうぞよろしくお願いいたします」


 今日もアンバーの瞳が眩しいイケおじの父様が、感謝の挨拶をしてくれたので、私もつい日本人らしく深く頭を下げてしまった。

 この国には深く頭を下げる文化は無いが、反射的に出てしまった。


「父親が【土】で母親が【芸術】ですか・・・さすがオリエンテ商会ですね。

それでは、お嬢さまは・・・」


 笑顔で両親の瞳を見ていたルビネス神父は、視線を私に移しブラックオパールの瞳を覗き込む。その途端、何故か絶句した。

 【聖・統率】は、異世界転生的に言うと鑑定スキルである。

 瞳を見ただけで、その人の【原初能力】が分かるようで、特に上級聖能力持ちのセイントは、詳しい能力内容まで視えるって習った。


 ……ああ、やっぱり【原初能力】なんて持ってなかったか・・・

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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