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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
公式訪問

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56 ヨンド共和国(1)

 72年前に圧政に苦しむ民と志のある貴族を率いて、ミレル帝国に反旗を翻し独立したのがヨンド共和国だ。

 貴族絶対主義で古い考え方のミレル帝国と違い、ヨンド共和国は産業を発展させようとする考えの貴族が多く、腕のいい職人や優秀な者を身分に関係なく登用している。


 実はホワイティ商会の卓上コンロの大半は、この国で作られている。

 産業を発展させるためにはどうしたらいいかと、国王が商業連合に相談したことが切っ掛けで、この国に金属加工の職人を集めたらしい。

 大口の顧客を紹介したかった商業連合は、大いに面目が立ったみたい。

 その職人の町は、流通に便利な隣国マセール王国に近い町に在るらしいので、いつか行ってみたい。



 昨日の夕方、王都に近い港町に到着した私とアステカとスピカは、賑わう屋台村で町の様子を窺いながら朝食を食べている。

 色とりどりのテントに陽気な人々・・・なんだか雰囲気がイタリアっぽい。

 屋台村の隣は食料品を売っているマーケットで、早朝から新鮮な物を買い求める人でいっぱいだ。商品の価格はシュメル連合国や聖地マーヤよりも安い。


「暮らし易そうな町だね。物価も安定してるし、ホテルは気軽に泊まれるものから高級ホテルまで数も多いし、昨日から泊まっているホテルは最高だったわ」


「そうですねお嬢様。海に面した部屋からの景色は最高でしたし、夕食も美味しかったです。従業員の接客もきちんとしていました。

 高級ホテルなのに貴族以外でも利用できるし、観光案内図までくれました」


 商家のお嬢様の護衛という役のアステカは、初めて泊った高級ホテルの接客をとても気に入っていた。

 シュメル連合国やプクマ王国の高級ホテルは、貴族以外はお断りなのだ。

 でもヨンド共和国は、観光地としての発展も考えているようだから、より多くの人に来てもらいたいと努力しているのだろう。


「何を食べても美味しいです。飲み物も数が多いし、ちゃんとしたワインも売ってます」


 前回行ったプクマ王国と比べて、美味しい物が大好きなスピカは大喜びだ。

 今回スピカは私の侍女役で、剣を持っていなこと以外、普段と変わりない。


 ……頑張っている国は応援したくなるよね。今回は王と会うのが楽しみだわ。


 それに、つい先日行った最北端のタラト火山には雪が半分以上残っていたのに、この町は春というより初夏の陽気だもん。住んでみたい。

 海運業の発展はシュメル連合国の方が優っているし、港も大きくはないけれど、唯一海に面していない聖地マーヤと違って、此処はお魚天国なのよ。

 漁で使う網も最新式だし、市場に並ぶ魚介類の量は他の国を圧倒するくらい。


 ……やっぱ日本人は魚だよ。死ぬ前は魚も高級品だったけどね。




 目的地の王都ヨンドには、昼前に到着した。

 王都とは言っても国のシンボルでもある王城は、元侯爵屋敷だった建物を利用しているらしく、派手さのない普通に大きな屋敷だった。

 初代王は、王城に見栄を張るくらいなら、王都の整備に金を使うべきだと言って、侯爵領だった頃の町を倍の大きさにして城郭を築いた。


 現王は3代目で42歳と若く、もしかして地球人?って思うくらいに考え方が先進的だと思う。

 現王が即位した7年前、【産業を発展させれば、民が重税に苦しまない国になる】と宣言したって、お爺ちゃん先生から聞いている。

 新しい国で、新しい考え方の貴族がトップに居るから、いいと思うことにチャレンジできる。前向きな政策だって実現可能になる。


 ……これがプクマ王国だったら、高位貴族は誰も従わないだろうな。


 王都の特徴は、古くからあった街並みを残しつつ、広げた場所は馬車道を広く取り、聖地マーヤのように等分に区画整理されているところだ。

 各区画には、独立に賛同した貴族や商人たちの名が付けられている。

 レスター(公爵)通りのマイセル(商会)区って感じで呼ばれており、通りの名は、だいたい高位貴族の名になっているらしい。


 ……まあ、東通り13番区っていうのより親しみが持てるし、貢献した者たちも誇らしいよね。



 さてさて、先ずはお決まりの教会から行ってみようか。

 国が新しいから教会だってまだ新しい。完成したのは15年前で、ゴシック様式の教会だ。なんでも、天聖ソワレ様のリクエストだったとか。

 本教会のステンドグラスには神々が描かれているけど、此処は右に夜空と星々、左に青空と太陽が描かれており、青と金色の組み合わせが幻想的だ。


 大聖堂から出てくると、教会の前には人だかりができていた。

 何事だろうかと覗いてみると、一人の男が泣きながら何かを叫んでいた。

 その男は警備兵らしき制服を着た2人に両腕を掴まれ、何処かへ連行されるところのようだけど、背の高い人たちが前に居てよく見えない。


「あの人はどうされたんですか?」と、私は隣のご婦人に質問してみた。


「またあの男だよ。なんでも4日前に王宮の庭に突然現れたらしいよ。

 服装も怪しい感じだし、言葉が全く通じないから、王宮の騎士様も困り果てて、教会に預けようとしたらしいんだ。

 でもねえ、何度も逃げ出そうとして外門で発見され教会に連れ戻されてるよ」


 昨日も同じ光景を見たと話してくれたのは、教会前で花屋を営んでいるという年配のご婦人だ。


 ……言葉が全く通じない? どっかで聞いたような話だわ。


「ヘルプ、ノー、アイム アメリカン!」


 ……はて? 何処かで聞いたような言語が・・・


 人垣を掻き分けて進むと、そこには濃紺のジーンズを履いて長袖のポロシャツを着た180センチくらいの男が・・・金髪にラピスラズリの瞳・・・


 ……これって、転生……じゃなくって転移者?

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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