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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
公式訪問

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55 教育改革

 プクマ王国の公式訪問から早3ヶ月、いつの間にか14歳の誕生日は過ぎ、またまた極寒の冬。

 たくさんの凍死者や餓死者を出した前回の極寒と比べれば、死者を出すほどではないけど寒いものは寒い。

 ブラックカイロを左右のポケットに入れて、高等大学の会議室へと向かう。


 1月初旬、学都で風邪の患者がちらほら現れた。

 もしも大流行すれば学生や入院患者の命が脅かされるので、病院長や各学長が何か良い方法がないかと私に相談してきた。

 湿度管理が有効であると知っている私は、ブラックガイを熱して湯に浸すことを提案し、試験的に教会病院と医学学校に投入してみた。


 勿論、手洗い・うがい・首の保温等も含め、対策した者としなかった者の感染数の違いや、症状の違い等のデータを、医学学校の研究チームが細かくとっていく。

 マスクの有効性は教会病院で証明済みだから、お金に余裕のある学生や研究生には自費で購入してもらった。


 ……マスクは、冬に仕事が激減するホテルの従業員や、町の女性たちをホワイティ商会が臨時雇用して作っている。


 ……もちろんホワイティ商会は、学生や学校に対しマスクもブラックガイも格安提供してるよ。研究のためだもん。



 若くて未婚の聖人が現れたせいか、時代に後れをとってはならないと考えた国の指示か、今年度の入学者は高位貴族や王族が多いらしく、お金に困っている学生は少ない。

 それでも貧乏な学生や研究生もいるから、原初能力に関係ない卓上コンロの製作をさせたり、創造持ちの研究員にはブラックカイロをつくらせている。


 水持ちと炎持ちは、ブラックガイを熱するバイトで大忙しだけど、王族や高位貴族はバイトなんて・・・と嫌な顔をした。

 フハハハ、何を甘えたこと言ってんの? 水を湯にするのも、ブラックガイを上手く熱するのも能力向上の一環だし、皆のためでしょう?

 お金が必要ないなら、実習としてガンガン働かせればいいだけ。でもまあ、私は優しいから慈悲で単位をあげるわ。

 



 2月後半に入って高等大学では、湿度管理が有効だとの実験結果を受け、大人の頭クラスの大きさのブラックガイを熱湯に浸けて、各室内の湿度を上げ寒さと風邪対策をしている。

 聖地マーヤ内の民には、湿度が大事だと指導したので感染者は増加していない。

 ブラックガイを購入できない学生や民には、室内に濡れたタオル等を干しておくよう指導した。



 各地の教会からは、この冬は風邪が大流行し、病院が大変なことになっていると報告が上がってきている。

 教会を訪れた者には、神父たちが予防策を教えている。でも正式な予防策を各国に伝えられるのは、医学学校が論文を発表する春以降になるだろう。

 各国に知らせるためには、根拠となるものを示す必要があるのだ。




 到着した高等大学の会議室は、ブラックガイの湯で部屋が暖められており、出席者は全員マスクを着用していた。

 集まったのは各学校の学長と副学長、副所長、病院長である。


「本日の議題は、高等大学、医学学校、原初能力研究所を一つに纏め、総合大学にすることについてです。先ずは資料をご覧ください」


 私は今日の議題を伝えると、配った資料を基に説明を開始する。


 総合大学にする最大のメリットは、全学生が受講可能な一般教養講義を設けたり、自身の所属する学部以外にも興味のある講座を受講することができること。

 また、学部の垣根を越えてチームを組めば、卒業後に会社の前身となる商団を直ぐに立ち上げることが可能になり、広く産業を発展させられることなどを説明していく。


「例えば資料2のように、現在人気の原初能力研究所の総合学科ですが、技術だけが向上しても予算編成や日程調整、技術の売り込み等は、原初能力持ちの学生だけでは不可能なのです。

 優秀な経済学部の学生がチームに加わることにより、事務処理・営業・運営を任せることができます。


 最も大事なことは、各種能力を活かせるようプロデュースできるアイデアの持ち主と、チームの能力を必要とする出資者を探せる人材の確保です。

 具体的な例で言うと、病院長が定年又はその前に医療関連事業を興すとします。

 先ず欲しいと思う物が移動式ベッドだった場合、その開発を誰かに依頼する必要があります。その時に物作り専門集団がいたら頼んでみたくないですか?


 手を上げた専門集団に試作品を作らせ、予算・製造できる日数、製造可能数などを提出させ、院長は安全性や機能性を確認します。

 優秀な専門集団なら、原価と売値と利益額の提案もできます。そして、新しく作ったモノには特許料が発生します。

 専門集団と院長で特許料を半々にしても、まあまあ儲けられますよ」


 別に商売の話をしたい訳じゃないけど、人は利益が出る話が好きだし、自分の発案物や製造品を世に出し、それが大いに役に立ち、人々を救う一助になるならばと、想像したりすることは嫌いじゃない。


 まあ、目の前にブラックガイ関連製品で特許を取り儲けている者が居るのだ。

 非常に分かり易いし、想像しやすい。しかも、世の役に立っている。


「なるほど、それは魅力的な話ですな」


 病院長は既に想像の世界の住人になり、「他にも欲しい物はありますぞ」と口元を緩めて嬉しそうに付け加えた。


「目指すのは、学生の内から独立や起業を目指す人材の育成と、多角的な視野で物事を見ることができるリーダーの育成です」


「なるほど」と、全員が頷きながら理解を示してくれる。


 ……似たような講義内容を、あっちでもこっちでもするのが面倒になったからだけじゃないよ。同時にたくさんの学生が集うことで、チーム作りに繋がるからね。


 ……工学部が必要だけど、私じゃ無理。小説を書く時間も必要だし、公式訪問はこれからが本番。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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