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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
公式訪問

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52  プクマ王国(1)

 やって来ましたプクマ王国。

 プクマ王国はシュメル連合国の西隣の国。初めてタラト火山に行った時、プクマの一行と私は土地の競売でひと悶着あった。

 確かあれも王族だったけど、今回は会わないことを祈ろう。


 プクマ王国は中央に山脈があるけど、それ以外は肥沃な農地が広がる農業国だ。

 北と西は海に面しているので漁業も盛んだけど、船も漁具もちょっと時代遅れで他国に比べると発展が遅れている。

 この大陸で唯一商会が無い国だ。産業を発展させてないから、税収だって少なくなるけど貴族はそれなり。


「商工業からの税収が少ないのに貴族が贅沢してるってことは、国民にかける税率が高いってことだよね」


 首都の手前の町で昼食のパン3人分を手に持って、座る場所を探しながら誰に言うでもなく呟く私。


 護衛のアステカは屋台で串焼きを買っていて、スピカは飲み物を買いに行った。

 首都の手前の町なんだけど、ほのぼのしているというか活気がないというか、屋台が少ないのにはガッカリ。でも、お肉を焼くいい匂いが漂っている。


「マシ・・・ミヤナカちゃん、この町は最近畜産が盛んらしく、民でも肉は手に入れやすいようです。美味しそうですよどうぞ」


「アステカお兄ちゃん、そこは手に入れやすいようだぞ、ほれ、食べてみろって言わなきゃダメ。45点」


 なかなか兄役になりきれないアステカを軽く睨んで、結構分厚い肉が2つ刺さった串焼きを受け取る。

 何のタレか分からないけど、お腹が鳴るくらいに美味しそうだ。


「お待たせみんな。飲み物は薄いワインと旬の葡萄ジュースしかなかったよ。ミヤナカちゃんは葡萄ジュースね」


 役になりきったスピカが、自前のコップに飲み物を買ってきてくれた。

 いくら旅人風でも、革袋に飲み物を入れるとか無理なんで、金属製のマイコップを収納バッグに入れて持ち歩いている。まだ8月で暑い時期だし。


「ありがとうスピカ姉ちゃん。なんで薄いワイン?」


 ……ワインに薄いとか濃いとかあったっけ?


「ああ、この国で普通のワインが飲めるのは貴族や商人くらいで、庶民は薄めたワインを飲むのが普通らしい。

 それだって私たちみたいな旅人用で、庶民はお酒なんて飲めないらしく、専ら冷ましたハーブティーとか豆茶を飲んでるって」


「ふ~ん、まあハーブティーも豆茶も健康にはいいと思う。シュメルや学都だとお茶(紅茶)なんだけど、あれも高級品ってことかぁ」


 こうして旅に出ると、文化の違いとか食生活の違いなんかも分かる。

 特に貧富の差は、着ているものや靴を見れば一目瞭然。

 夏だから薄着で破れた服でも大丈夫だけど、冬はどうなんだろう? 昨年の冬を乗り切ってるから、なんとかなったってことだよね。


「えっと意外なんですが、前の厳冬の時、国王は広く国民に厳冬に備えて薪を無駄使いするなと布告したらしいです。

 何かをしてくれた訳ではないけど、知っていたから備えができたようです」


 私と一緒にタラト火山に行った時、プクマ王国の王族の態度がアレだったから、本当に意外でしたと仕入れた情報をアステカが教えてくれた。


 ……う~ん、ちょっとだけ期待して王都に行ってみよう。




 辻馬車に揺られること2時間、首都プクマに到着した。

 別に城郭都市じゃないし、戦時下でもないから外門で身分確認は必要なし。

 大陸に存在する6つの国の中で、首都に入る時に身分確認している国は、ヨンド共和国と小競り合いをしているミレル帝国くらいだ。

 まあ出入国の時は、何処の国も身分確認をしているけどザルらしい。


 首都の中は、馬車の通る大通りは石畳でちゃんと整備されていた。

 建ち並ぶ店やホテルは古めかしいけれど、それなりに味わいがあって結構イケてる。往来の人々も首都だけあって身形もまあまあで、高級品を売る店も普通に並んでいる。



 首都に到着して直ぐに、私たち3人は教会へと向かった。

 情報収集と教会の日頃の様子を視察する目的もあるので、先ずは普通の信者と同じように礼拝堂で祈りを捧げる。


「掃除は行き届いているようですね。民に対する態度も丁寧ですし、セイント・ロードスからも注視すべき問題点はないだろうと聞いています」


 一旦教会を出たところで、アステカが小声で私に告げる。


「そうね、聖人様を乗せた馬車の到着は明日の夕方だから、問題があれば教会も街の中もバタバタしているはずよね」


 うんうんと頷きながら、スピカもアステカに同意する。



 次に向かったのは孤児院だ。

 教会が運営している孤児院は何処も同じような感じらしいからパスして、王都内にある他の孤児院を偵察する。

 王都の外れにある孤児院を訪ねると、瘦せて疲れた感じの60代くらいのご婦人が対応してくれた。


「心ばかりの寄付をしたいのですが、見学してもいいですか?」


「まあご寄付を? それは有難いことです。清潔にはしているのですが建物が古く、床が抜けて応急処置した場所もあるのでお気を付けください」


 嬉しそうに微笑んだ女性は副院長で、床を見て申し訳なさそうに頭を下げた。

 実は私も孤児院出身で、ミレル帝国の孤児院は此処よりもっと酷かったので全然問題ないですよと、交渉担当のスピカが明るく返す。

 孤児の数は現在23人で、運営しているのは王都に住む領地なしの男爵だった。


 院長である男爵様は昨年体調を崩され、ご子息が孤児院を管理されるようになってから、運営費が半分になってしまったそうだ。

 現在渡されている運営費は、国が支給した補助金の7割だけで、男爵家からの援助は無くなり、補助金の3割はどうなっているのかも分からないという。



「おい、なんでガキたちはボロボロの服を着ているんだ! もっときれいに掃除しろと命令しただろうが、この役立たずババア」


 派手なシャツを着た下品極まりない横柄な態度の男が、ドアから入ってくるなり怒鳴った。


 ……ちょっとちょっと、これってお約束の展開? 諸国漫遊記の題材提供者かしら? あっ、メモ帳出さなきゃ。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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