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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
産業革命

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50 会談

 ◇◇ セイント・ロードス ◇◇


「これがマセール王国使節団の出した答えですか?」


 マセール王国使節団から提出された書類を読み終え、天聖ソワレ様は呆れたように息をつかれた。

 昨日、研究所の実習講義を見学した使節団から、自国の貴族学院の教授や原初能力専門研究所のメンバーにも、【マーヤ・リーデ】様の講義の受講を許可して欲しいという嘆願書が提出されたのだ。


「はいソワレ様、厚かましくも嘆願書を出してくるとは、流石の私も呆れました。

 ソワレ様はお忙しくて謁見できないと伝えた時点で、その意味を理解し反省するかと思えば、当然の権利とばかりに要望を突きつけるとは・・・ふーっ。

 教会病院の副院長と護衛の騎士が、一行はあちらこちらでマシロ様に対する悪意ある暴言を吐いていたと報告を受けております」


 怒りで言葉が乱れそうになり、途中で息を吐いて気持ちを落ち着けねばならぬとは、私もまだまだ修行が足らないようです。



 マセール国王からの親書には、決してマーヤ教会に反意など無く、1日でも早く襲撃犯を捕らえ本教会に連行するので、今暫くの猶予が欲しいと書いてあった。

 また、被害者に対する賠償金を第三皇子に持たせたので、心からの謝罪と共に受け取って欲しいとあった。


 どうやら第三皇子以外は襲撃のことを知らないようだが、だからこそ本心が透けて見えたのだ。

 自分の娘かもしれないと思って謝罪に来たはずの第三皇子には、正直がっかりした。高等大学では涙を流していたというから、娘だと確信したのだろう。


「ほほほ、マシロさんも会う気がないみたいだから、聖人を襲撃する国の貴族になど、恐ろしくて会わせられないと使節団に言っておやりなさい」


 いつものふんわりとしたお声だが、表情は硬く瞳は笑ってなどいない。

 マシロ様が書かれた今後の公式訪問の予定でも、マセール王国は一番最後になっているし、予定も未定になっている。


 ……マシロ様の王族嫌いは根が深い。マセール王国は今回、余計に印象を悪くした。

 

 マシロ様はソワレ様に初めて会われた時に、ご自身のことをマセール王国の王族である可能性が高いと言っておられた。

 マシロ様が6歳の時に、教会はオリエンテ商会の養女の情報をマセール王国に知らせてしまった。そのせいで、お命を狙われ始めたのは間違いない。

 だからこそ教会は反省し、教会騎士を護衛に付けお守りしてきた。


 ……第三皇子、何故貴方はあの時、自身の目で確かめようとしなかった?


 あれほど自分に似ているマシロ様を見て、第三皇子はさぞや驚き後悔しただろう。実の娘であると確信したはずだ。



 今回使節団の中に、第三皇子が入っていると聞かれたマシロ様は「今更ですね」と仰った。

 3歳以前の記憶は全くないし、実際に顔を見ても懐かしいとか嬉しいという感情も持てなかったと仰っていた。


 ……まあ3歳だったし、血糊のついたドレスを着ていた時点で、マセール王国に居てはいけなかった。全ては神のお導き。マシロ様は空から降って・・・いや、天からご降臨された聖人なのだから。




「結論から申し上げます。

 マセール王国にだけ便宜を図ることはできません。ですから、今後マセール王国から使節団という名の団体が来ても、学校見学や講義の受講はできません。

 また、聖人ホワイト様の各国公式訪問の順番は、マセール王国を6番目に、そして日程は未定とさせていただきます」


 私は無表情で決定事項を伝えていく。


「えっ? 大国であるマセール王国が最後なのですか?」


「はいそうです副大臣。皆さんは聖地に来られてから、マシロ様に対し信じられない暴言を吐いておられたとか。

 また教会病院では、医学のため、働く者のために身銭を切って尽くされているホワイティ商会に対し、どんな魂胆があるか分からないと仰ったとか」


 軽く睨みながら言うと、不快感を露わにしていた副大臣は、バツが悪そうに口をつぐみ視線を逸らす。

 ここで申し訳ありませんと謝罪できないということは、全く反省していないということだろう。


「我々の行いを責めて公式訪問を未定に?」


「はは、それは決定した要因の5分の1くらいでしょう学園長。

 皆さんは国王から何も聞いておられないようですが、聖人ホワイト様は、過去に何度もマセール王国の暗殺者に襲われてきました。

 そして今年の春季休暇中、教会騎士団に護衛され本教会に戻られる途中、マセール王国の貴族が雇った暗殺者30人に襲撃されました」


 怒りを抑えながら説明しようと思うのだが、厚かましい者共にどうしても心が乱れそうになる。


「はあ? それは本当ですかイツキノ様!」と、何も聞かされていなかった副大臣が第三皇子を見る。 

「何故うちの貴族が?」と、研究所所長は私の話が信じられない様子だ。

「教会騎士を襲ったのですか!」と、学園長は立ち上がって叫んだ。


 ……呆れる。そこは聖人ホワイト様を襲ったのですかと問うべきだろう。


 この者たちは、【マーヤ・リーデ】であるマシロ様を敬わず、恩恵だけを欲しがる厚顔無恥な連中だ。


「襲撃時、ご両親であるオリエンテ商会の商会長夫妻もご一緒でしたが、暗殺者たちはマシロ様の名を呼びながら、殺して遺体をマセール王国に持ち帰るぞと叫んでいたのです。

 教会騎士に死傷者がでて、商会長は大ケガを負われ教会病院に入院されました。


 信じられないことに、マシロ様は原初能力持ちから攻撃を直接受けられました。

 聖人の暗殺を画策し、教会騎士を殺害したマセール王国の下級貴族は、現在教会騎士が捕えて投獄しています。

 神の使いである聖人を害する国に、行けると思いますか使節団のみなさん?

 イツキノ様、マセール王国の王族と貴族は、マシロ様の信用を失ったようです」


 悲痛な表情で私の話を聞いていた第三皇子は、最後の言葉を聞いてがっくりと肩を落とした。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から新章がスタートします。応援よろしくお願いいたします。

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