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5 能力検査(1)

 母様は、横柄な態度をとる上位学校の学生をしている家庭教師()()の男を席に座らせ、テーブルの上に【上位学校数学A】と書かれた高等大学の教科書を2冊置いた。

 高等大学は、上位学校の教師を目指す人が学ぶ学校で、日本で言えば大学院みたいなものである。


「自慢じゃないけど、うちの可愛い娘は数学が好きみたいなの。上位学校の最終学年なら、このくらいの問題は解けるでしょう?

 マシロに経済を教えるなら、ましろが認める実力が必要だわ」


 母様はそう言うと、不平等にならないよう貴方が好きなページを指定して構わないわと、それはそれは美しい黒い笑顔で試験内容を伝えた。

 家庭教師候補の学生は、自分の実力を試されるなんて思ってもいなかったようで、不快感を隠しもせず顔を歪める。


「幼女に経済を教えるのもばかばかしいが、上位学校の知識なんて必要ないでしょう? いくら数学が好きでも、この私に試験を課すなんて失礼だ!」


「ねえ、もしかして解けないの? 母様、私も挑戦してみますね。

 家庭教師候補のお兄さん、内容を見ずに適当なページ数と問題番号を言ってみてね。私も一緒に解いてみるわ」


 私はそう言うとテーブルの上の教科書を一冊取り、解答を記入するための紙とペンを持ってスタンバイする。

 怒りを滲ませた家庭教師候補の男は、「23ページの3番を」と吐き捨てるように答えた。


 ……まあラッキー、大好きな図形問題だわ。この国の上位学校の数学レベルは、日本の小学校高学年から中学校2年程度だもん。楽勝よ!


 私はフンフンと大好きなアニソンを鼻歌で唄いながら、すらすら解いていく。向かいの男は苦戦してるみたいだから、4番の問題も解いちゃおう!


 10分後、正解に辿り着けなかった男は、愕然とした表情で私の解答用紙を奪い取ると、無言のまま手を震わせて「あり得ない」とか「何か仕掛けが」とか呟いて、「このバケモノ!」と叫んで部屋を出て行った。


「失礼ね。レディにバケモノだなんて」

「ごめんなさいね、次の家庭教師は親族以外から慎重に選ぶわ」

「はい母様。とりあえず、たくさんのご本を読んで自学しておきます」


 昨日に引き続き、今日の家庭教師候補も失格だった。

 チート能力じゃないけど、嫌な奴に勝って気分は上昇。

 私を子供と見下さず、真面目に教えてくれる先生が来てくれたらいいなぁ。

 まあ、こんな特異な子供を教えるのは、普通の人じゃ無理かも。ふう・・・




 あれから半年、5か月後にようやく良い先生に巡り会えた。

 今年の3月に聖マーヤ高等大学を定年退職(75歳)したお爺ちゃん教授で、私の学力をテストした後、間違いなく【原初能力持ち】だろうと、ブラックオパールの瞳を見て嬉しそうに言ってくれた。


 (せい)マーヤ高等大学は、この大陸の中央に位置している聖マーヤ教の聖地に在り、いわゆる総合大学だ。他にも医学学校や原初能力学校もあるらしい。

 この大陸の宗教は聖マーヤ教だけで、地球と違い宗教戦争などは起こりそうにないから安心だ。


 で、お爺ちゃん先生が、聖マーヤ教会が行う能力検査? 鑑定? を受けれるよう手続きをしてくれた。

 いや、お願いした訳じゃないよ。むしろお構いなくって感じなんだけど、もしかしたら身元の手掛かりが掴めるかも知れないから了承しただけ。



 能力検査は、特別だと思われる瞳の持ち主や、特異な能力を持っている可能性がある子供に対し、聖マーヤ教会が【原初能力 聖】の中の【統率能力者】を派遣して行われる。

 因みに【原初能力 聖】の能力持ちは、教会に所属するらしい。


 検査は6歳・12歳・18歳の誕生日がきたら行われるらしく、【原初能力】の発現には個人差があり、18歳くらいになって現れる者もいるんだとか。

 6歳の時に検査を受ける子供の多くは、瞳が宝石のように特殊な輝きを放っている者に限られる。12歳は特殊能力が認められた子が多いらしい。


 検査で能力ありと判定を受けたら、教会で教育を受けるか親族が教育するかを決めなきゃいけないんだと。

 本来【原初能力持ち】は、王族や高位貴族、一部の豪商の家が独占しているから、同じ能力を持つ親族が小さい時から教育を行うようだ。


 で、もしも私が能力持ちだった場合は、養父母が教育を行う。

 なんと、うちの父様は【原初能力 土】、母様は【原初能力 芸術】持ちだった。

 だからこそ、大陸中に支店を持つ大商会でいられるってことらしい。

 そう言えば、母様はよく絵を描いているし楽器の演奏もしていた。ほよ~。



 お爺ちゃん先生の最初の授業は、【原初能力】についてだった。

 

 神様が与えたという【原初能力】には、9つの種類がある。

 【原初能力持ち】の人数は、国によって大きく違い、多い方が栄えており大国と言われている。

 能力は希少性の順で、聖・炎・水・動力・空間・創造・風・土・芸術となっている。


 

 【特殊な聖能力持ち】は、聖マーヤ教会に所属し、天上人扱いされている。

 一般人は【特殊な聖能力】について知ることはできないが、誰でも知っているのが【一般聖能力 癒し】の能力で、この能力持ちは教会病院に所属している。

 他に一般人に関係するのは【食】の能力持ちで、植物の栽培に尽力してくれるらしい。


 ……う~ん、チートな人が本当に居たんだ。羨ましい。

 ……もしかして妖精も居たりして? ファンタジーなら定番よね。


 ……まあ、私の場合チートじゃなく、前世の知識持ちってだけなんだけど。宇宙の管理者のケチ。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


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