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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
産業革命

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42/110

42 新体制スタート(1)

 ()()()()()【ソードメイル】と言ったことを半数以上は覚えていたみたいで、不安気な表情を私に向けてくる。

 皆が困惑しているところに、教会騎士団長が入場してきて来賓席に座る。

 同時に騎士団10人も入場してきて、大講堂内を警護するように配置につく。

 何故教会騎士団が?って皆は首を捻るけど、私は何事もなかった風で続ける。


「実は私、数年前に3つの原初能力持ちである【タラータリィ】であると、統率能力者の最上位であるセイント・ロードスから聞いていました」


「タラータリィだと!」


 最前列で顔色が悪くなっていた教授の何人かが、立ち上がって叫んだ。

 まあ今現在、タラータリィは私しか発見されていないし、伝説並みの存在だから驚くのも無理はない。


「ええ、タラータリィですわ。ですから、まだ12歳にも拘わらず本教会から是非にと請われて、聖地マーヤに参りました。

 そして先日、天聖ソワレ様より3つ目の原初能力【マーヤ・リーデ(先導者)】に任命され、【聖人ホワイト】として原初能力研究所の所長に就任せよと命を受けました」


 今日の私は【聖人ホワイト】バージョンだ。ちょっとそれらしい言葉遣いと、それらしい雰囲気を出して頑張っている。

 私の後ろの席に座っていたセイント・ロードスと副所長が、椅子から立ち上がって最上級の礼をとり、会場内に配置されていた教会騎士たちも一斉に跪いていく。


「何をしている、聖人マーヤ・リーデ様の御前で何故礼をとらない、無礼者!」


 来賓ぽく壇上の椅子に座っていたソロン教会騎士団長42歳が、呆然としている者たちを一喝し、私の斜め後ろで跪く。


 今回騎士団は、何度も襲撃を受けている私を護るために配置された。

 研究員や教授や部長の中に、私を暗殺しようとする者の仲間がいる可能性だってあるから、もしもに備えての配置だ。

 今日、聖人だと名乗ったら、明日から研究所専用の教会騎士が最低2人は護衛に就くことになっている。


 研究所以外では、これまで通りアステカとスピカが守ってくれる。

 スピカは、癒し能力の最上位者セント・アテイナ38歳の治療を受け、昨日から復帰している。もっと休んでもいいと言ったんだけど、誰にも私の護衛ポジションは渡せないと、以前よりも張り切っている。

 アステカとスピカの負担軽減も考え、今は本教会の聖人部屋で暮らしている。




 何がなんだか分からないって表情のまま、研究所の関係者は慌てて跪き礼をとっていく。

「そんなはずない!」と礼をとらず叫んだ教授は、スッとやってきた教会騎士によって何処かへ連行されていった。

 あの教授はマセール王国の伯爵家出身だったし、私と最も敵対していたから騎士団長がマークしていたんだよね。


 教授が連行されるという非日常の光景に、皆は言葉を失い、ここはマーヤ教会が運営する研究所であることを思い出したようだ。


「ごめんなさい、先日教会騎士団と聖地に戻る途中、30人の殺し屋に襲撃を受けたから、騎士団も神経質になっているようだわ。

 燃料不足で困窮している民を早く救いたいと、寝る間も惜しんで頑張っているつもりだけど、聖人だから邪魔なのかなぁ・・・な、なんでかしら。

 次世代能力を発揮でき、できるよう……一生懸命に導いてきたつもりだけど、どうしても私を……私を殺したいらしくって・・・は~っ」


 下を向いて、ちょっとだけ溢れた涙をハンカチで拭いてみる。


「マシロさまは我々の救世主です。私は必ずマシロ様をお守りします!」


 次世代技術研究室のシュバル君が立ち上がって叫ぶと、私の講義を受けている研究員たちも立ち上がって、「お守りします!」「殺し屋許すまじ!」と口々に同意を示していく。


「我々は新所長マシロさま、いえ聖人マーヤ・リーデ様にご教授頂ける僥倖を神に感謝申し上げ、民のために尽くされている新所長のご期待に添えるよう、皆で精進していくことを誓います」


 なんだか大仰な感じで誓うと言っているのは、うちの研究室のカーセ教授だ。

 水を湯に変えるという新能力を発揮してから、しっかり研究員たちをリードしてくれている。


 最前列で青い顔をしている一部の教授を除く皆が、「誓います!」と大きな声で同意してくれる。



「ありがとう。

 私も殺し屋や卑怯な者たちに屈することなく、原初能力と経済を発展させ、指導者として産業革命を実現していくと誓いましょう。

 その手始めとして、創造部門を物質変化・設計・総合に分類し、空間部門を移動・収納に分類します。


 そして所長権限で、各能力者が協力し合う総合学科を新設します。

 総合学科では、最先端技術の実現に向けチームを組み、実習優先の単位取得を可能にします。

 またホワイティ商会基金を作り、実現可能な技術に対し、資金面をバックアップします。


 優秀なチームは早期卒業を認め、ホワイティ商会にチームごと就職し、新しい部門の設立を任せることも可能です。

 他の商会や商業連合も含め、産学連携で時代を前進させていきましょう。

 皆さんの熱意に期待しています!」


「ウオォーッ!」と、会場が揺れるほどの雄たけびがあがった。


 ホワイティ商会は、これから間違いなく大陸一の商会になるだろう。

 この研究所を卒業しても、良い就職先に巡り合うとは限らないから、私の講義を受けている研究員の多くは、うちの商会に就職したいと思っている。


 多少公私混同な部分もあるけど、私の真の目的はスポンサーシップの普及だ。

 だからこそ教育や研究に対し、お金と知識の出し惜しみはしない。

 その精神こそ皆に学んで欲しいし、それが世のため人のために繋がっていくと私は信じている。


「ああ、言い忘れていました。私、()()()()()タラータリィです」


「・・・?」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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