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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
産業革命

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41 原初能力研究所改革

 襲撃事件から一週間、ケガの状態が安定した父様たちは、まだ残りたいとごねる母様を連れて首都シュメルに戻っていった。

 もう直ぐ学校や研究所の後期が始まるし、もともと3日間の滞在予定だった。

 でも、まさかのマーヤ・リーデ(先導者)任命式にも参列できて嬉しそうだったから、ちょっとは親孝行できたかもしれない。


 ……もちろんお土産に、徹夜で作った実家用の固形燃料(大)を持たせたよ。

 ……それから、聖人である私の養父母には、数年間教会の護衛がつくらしい。

 


 任命式以降、固形燃料を作りながら研究所の改革案を考えるという、ハードな日々を送っている。

 製造法方は極秘だし、商業連合が工場を建ててくれるまで、商会員中心で作るしかない。ああ、早く孤児たちが来ないかなぁ・・・

 考えたら私って12歳なんだけど、こんなに睡眠時間が短くて大丈夫だろうか?




 天聖の命令で原初能力研究所の所長に就任した私は、就任挨拶の時に改革案を発表することにした。

 改革案のまとめは、マセール王国出身で男爵家次男のドレン副所長52歳がやってくれる。


 優秀で研究員からも慕われているドレン副所長は、ネスラー前所長から身分をバカにされ邪魔者扱いされていたけど、全然めげてなかった。

 それにドレン副所長は、勝手に始めた私の講義を必ず受講し、若い研究員と同じように瞳を輝かせる柔軟な思考の持ち主だから、めちゃ協力的。


 ……そう言えばドレン副所長、私の【マーヤ・リーデ(先導者)】任命式の後、聖人である私と仕事ができるなんてと感動して泣いていた。


 ちなみに前所長ネスラーは、領主としての仕事が忙しくなったので所長職を辞すという書面を送ってきたので、本教会は引き留めることなく受理している。



 現在、研究所の教授の半数は、私の講義は邪道だと認めていない。

 そもそも高等大学の学生の身分で、講義を行うこと自体が身の程知らずなのだと、受講したこともないのに本教会に抗議していた。

 まあ窓口だったセイント・ロードスが、そこまで言うなら実力で勝負したらいいと鼻で笑ったらしく、腹を立て辞表を出した教授もいたとかいないとか。


「マシロ様の人気が気に入らないのと、自分の研究室の研究員数が激減したので、悔しいというのが本音だと思いますよ。

 頭の固い教授たちは、既に時代から取り残されていることに気付いていません。

 正直、マシロ様から学んでいる研究員の方が、能力は上かもしれません」


 ドレン副所長、結構容赦ないタイプだった。

 まともな指導もできないのに威張っているだけの所長や教授たちから、何度も苦い思いをさせられていたようだしね。

 研究員たちも、教授の機嫌をとらないと卒業できないって不満を言ってた。


 ……よし、腐ったミカンは取り除くのが一番だ。


 


 春季休暇明け、大講堂に集められた教授・部長・主任研究員・研究員たちに向かって、前所長は自己都合退職し、新しい所長は【天聖】さまが任命されたとセイント・ロードスが壇上から説明した。


「なんで天聖が・・・」と顔色を変えるのは、私と敵対している教授たちだ。


 忘れがちだけど、ここは聖地マーヤであり、研究所や学校を運営し給与を出しているのはマーヤ教会だ。

 ソワレお婆ちゃん(天聖)は、雲上人過ぎて年に数回しか姿を現さないし、直接学校や研究所の人事に関与するのは稀だった。

 最近では、王でさえ敬う存在であるセイントに対し、堂々と抗議する罰当たりというか身の程知らずの教授が増えていた。


「最上位者である天聖ソワレ様は、研究所の人事権を新しい所長に一任し、真に原初能力を発展させる指導力のある教授や部長以外を、解職又は降格させよと新しい所長に命じられた」


 打ち合わせ通り、セイント・ロードスが口煩い者たちを脅し始める。

 私が同じことを言っても舐められる可能性が高いから、気合を入れて脅してねとお願いしておいた。


「解職だと?」


 我が身の保身を第一とし、適当な講義をして怠けていた教授たちは、顔を顰めてセイント・ロードスを見る。


 ……この人たちって、教会が簡単に解任できるってことを忘れていたわね。


「この研究所で働く者は全て、マーヤ教の指導に従い、原初能力発展のために尽くし、研究員を熱心に指導することを誓うと、誓約書を書いたはずだ。

 教会の指導に従えず、異議を申し立てる者は辞めてもらって構わない。

 これまで緩んでいた教師の査定は、この私セイント・ロードスと、マシロ・オリエンテ新所長が行い、3カ月後に解職者並びに降格者を発表する!」


「ええぇーっ!」と声を上げたのは研究生や主任研究員だ。

「なんだと!」と怒鳴ったのは敵対する教授や部長たちだ。

 新所長が私であることに驚いた者と、査定をする者の名を聞いて納得できないと憤る者で、大講堂内は騒然としていく。


 直ぐにセイント・ロードスが「静粛に!」と、前列に座っている不服そうな者たちを睨み付けながら大声で注意した。


「これまで卒業試験の合否権は、各研究室の教授が全権を持っていたが、後期から卒業論文の採点はドレン副所長が行う。

 また、卒業研究の内容は教授が決めるのではなく、研究員が自ら決めることができるものとする。

 これらの改革案はマシロ新所長から提出され、教会本部で承認された。

 既に決定されたことであり、承服できない者は本日中に辞職願を出せ!」

 

「ウオォーッ!」と歓声を上げたのは研究員たちだ。


 数十年前から、卒業研究のテーマを教授が勝手に決めるようになり、研究員はやりたくないテーマや、苦手なテーマを与えられても我慢するしかなかった。


 ……全ての原因は、聖人と賢人が100年近く現れなかったからだ。



「皆さん、新所長のマシロです。

 皆さんは、前所長と私が対決した時のことを覚えていますか?

 あの時私は、()()()()()【ソードメイル】だと言いましたよね?」


 私は壇上に姿を現すと、開口一番、前所長との対決時について話し始めた。  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

新章スタートしました。これからも応援よろしくお願いいたします。

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