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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
大寒波襲来

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39 天聖

 本教会最奥のその空間は、縦長で60畳くらいはあるかもしれない。

 右壁には、明り取りのはめ込み式高窓が等間隔にあり、その下には黒っぽい木の長椅子とテーブルがずらりと並んでいる。

 背凭れにはバラのような深紅の花と深緑の葉の刺繡が施されたクッションが隙間なく置かれている。


 左壁際は全て本棚で、そこだけ見れば図書館のようで心が躍った。

 高い天井は紺色で塗られ広大な宇宙の絵が描いてある。中心は太陽で、散りばめられた金色の星々が美しい。


 ……幻想的な空間だわ。


 空間の中央には縦長の大きなテーブルが置いてあり、アイビーに似た葉の刺繡が施された深緑色の布地張りの椅子が、テーブルの左右に5脚ずつ並んでいる。

 上座には他の椅子とは明らかに違う、少し大きめの肘掛け椅子が置いてあり、私くらいの背丈と思われるテディベアのぬいぐるみが鎮座していた。


 ……落ち着きのある大人の空間に、テディベア? 

 ……う~ん、ここは会議室? いや、謁見の間かな?


 某宮殿のダイニングと図書館とロビーをミックスしたような空間の奥に、マーヤ教のシンボルである太陽を囲む6つの星の装飾が施された荘厳な扉が見えてきた。

 地球でも古代は、太陽を神として崇めていた文明は多かったし、日本だって同じだ。

 もしかしたら、この星が所属する太陽系には、6つの星があるのかもしれない。



 この扉の先が、マーヤ・リーレス(天聖)と呼ばれるソワレお婆ちゃんの執務室みたいね。

 セイント・ロードスが扉をノックし、「マシロさまが戻られました」と告げると、明るい笑顔のお婆ちゃんが直接扉を開けてくれた。


「お帰りなさいマシロさん。私はソワレ・グランデよ。さあどうぞ入ってちょうだい」


 まるで隣のお婆ちゃんみたいな気軽さで、実年齢より若見えソワレお婆ちゃんが私を招き入れてくれる。純白の長い髪って神々しいかも・・・


「はじめましてソワレ様、マシロ・オリエンテです」と私も挨拶をする。


 入った執務室は意外と簡素だったけど、上を見上げて驚いた。

 天井にはマーヤ教の神話と思われる物語が、中世ヨーロッパの天井画みたいに大迫力で描かれていた。


「システィーナ礼拝堂?」って、つい口から言葉がこぼれちゃった。


「あら、ミケランジェロをご存じなのね。フフフ、この天井画は450年前に、原初能力・芸術持ちのイタリア出身男性によって描かれたみたいよ」


 悪戯ぽく笑うソワレお婆ちゃんは、やっぱり地球人だった。ハハ。



 20畳ほどの室内を見渡すと、中央奥に大きな執務机が置いてあり、その前にはソファーセットではなく、円形テーブルと椅子が置いてあった。

 椅子の数は8だから、教会のセイントやセントを集めた会議に使用されているのかもしれない。


 ……フフ、なんだか円卓の騎士みたい。

 



 先ずは今日の襲撃のことをセイント・ロードスが説明し、応援部隊の派遣と今後の警備についてソワレお婆ちゃんと一緒に協議した。

 セイント・ロードスは決定事項を部下に伝え、教会騎士団に指示を出すため先に部屋を出ていった。


 ソワレお婆ちゃんは2人きりになると直ぐに、最近の地球の様子や故郷オランダの様子を質問してきた。

 私は地球の天変地異について話し、生き難い時代になっていると伝えた。


 ソワレお婆ちゃんは、30歳の時にイギリスに向かう途中で船が沈み、気付いたら姿形はそのままで宇宙の管理者になっていたという。

 選別の扉の記憶はないけど、宇宙船でこの星に来て、秩序を保つよう尽力せよと命じられたらしい。


 ……宇宙の管理者って、みんなが銀色の体になって、宇宙を飛び回るだけじゃなかったんだ・・・う~ん。


 話したいことは沢山あったけど、既に夕食時間も過ぎていたし、疲れていたこともあり謁見は30分で終了した。

 敵の狙いが私自身だったこともあり、今夜は本教会に泊まることになった。

 なんでも前の聖人が使っていた部屋だそうで、モロッコ風の美しい木彫りの窓枠や、鮮やかな刺繡のソファーとクッションを見て懐かしくなった。


 ……父様たちは大丈夫かなぁ・・・スピカの腕のケガは酷かったから、暫くはお休みだろうな・・・私を守るために・・・ごめんね。


 ごろりとベッドに寝ころぶと、途端に不安な感情が溢れてしまう。




 翌早朝、教会騎士団20人が、ケガを負った仲間やうちの一行を迎えに出発した。

 今回は、対人戦ができる原初能力持ちを中心に人選されている。

 聖人である私を殺すことが目的で、仲間まで殺されているから怒り心頭だ。必ず黒幕を捕らえるぞと気合を入れていた。


 夕方には、ケガ人を含む全員が戻ってきた。

 捕らえていた襲撃犯3人の他に、騎士団はマセール王国の下級貴族と思われる男女2人も捕らえていた。

 

 ……やっぱりマセール王国の貴族が犯人かぁ。

 ……でも、こんな大それた犯行を、下級貴族が企むはずがない。


 ……今回は教会も無視できない暴挙だから、【天聖】の名でマセール国王に抗議文を送り、犯人を探し出し引き渡せと要求するらしい。


 父様やケガをしたオリエンテ商会の護衛は、教会病院に入院した。

 スピカを含む教会騎士のケガ人は、騎士団宿舎で治療を受けるらしい。

 母様は安全を考慮し、私に与えられた聖人の部屋に泊まってもらう。

 ケガのなかったオリエンテ商会の護衛の皆さんは、ホワイティ商会が購入した宿舎に泊まってもらう。


 この宿舎は巡礼者用の宿だったものを、固形燃料工場で働く孤児たちの仮住まいにするため購入したものだ。

 この冬の大寒波で経営が傾いた100人収容の宿を、従業員ごと受け入れる約束で買い取った。


 3階までは4人部屋だけど、4階は小金持ち用の2人部屋だったので、孤児たちの宿舎を3階までとし、ホワイティ商会の来客は4階に泊まってもらう。

 孤児院が完成したら、この宿舎はホワイティ商会従業員用の寮になる。



 早く固形燃料を作りたいという私の希望を叶え、敵を蹴散らす確固とした名目のため、明日の午前、私の【聖人】就任式を執り行うことになった。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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