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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
大寒波襲来

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38 襲撃(2)

 なんとか宿場町に辿り着いた私たちは、町の自警隊詰め所に駆け込んだ。

 誰が見ても襲われたと分かる馬車の様子と、ケガをしている父様と教会騎士のスピカを見て、自警隊の隊長は直ぐに警鐘を鳴らし隊員を招集してくれる。


 襲われたのが教会の護衛対象者と、オリエンテ商会の商会長夫妻であると隊長に説明するのは、護衛リーダーのバラモンさんだ。

 隊長は驚きながら青い顔をして、この町の領主である男爵に知らせるよう使いを送り、今直ぐ町の出入口を封鎖するよう指示を出していく。


 ……巡礼者のお陰で潤っている宿場町領主の立場からすると、自領で教会の保護対象者が襲撃されるなんてこと、決してあってはならないことだ。


 ……しかもオリエンテ商会の商会長夫妻は、ここシュメル連合国内では間違いなく重要人物だ。


 私と母様は町の医院で父様とスピカの治療に付き添い、護衛リーダーのバラモンさんは、町の自警隊を連れ襲撃現場へと向かった。


 ……あっ、うちの商会メンバーを置いてきちゃった・・・どうか誰もケガをしていませんように。




 1時間後、護衛リーダーのバラモンさんが、一行を連れて戻ってきた。

 教会騎士が1人亡くなり、2人が大ケガをしていて、オリエンテ商会の護衛も2人負傷していた。うちの商会員は全員が無傷だった。

 アステカは軽傷を負っていたけど、私の姿を見て「マ、マシロさまが、ご、ご無事で・・・」って、泣き崩れていた。


「みな、よく戦ってくれました。皆のお陰で私は無事です。ありがとう」


 眼前で申し訳なさそうに跪く教会騎士に、私は心からの感謝を伝える。



 襲撃事件のことを知った町の人たちは、負傷者の手当を手伝ってくれた。

 信心深いこの町の人々は、教会騎士を襲った者たちに殺気を放ち、捕えられた襲撃者3人に石を投げつける。直ぐに厳しい取り調べが開始されるだろう。

 襲撃者の遺体と動けない重傷者は、荷馬車に積まれたまま自警隊前で放置される。重罪人はケガの手当なんてしてもらえない。


 アステカの話しでは、突然姿を消した私を探して、襲撃者たちは大樹に登ったり辺りを探し回っていたらしい。

 追いついた教会騎士たちは、姿の見えない私に絶望しながらも、持てる力を振り絞って襲撃者に迫ったが、標的である私を見失った敵のリーダーは撤退命令を出し逃げた。


 微かに聞こえたハンドベルの音に、アステカは僅かな希望を持ったという。 


 ……逃げた襲撃者は半数か・・・再び襲撃される可能性があるな。

 ……父様とスピカは動かせないし、私が動けばケガをしている護衛に無理をさせることになる。うーむ・・・



「母様と父様は、領主屋敷で援軍をお待ちください。

 アステカ、疲れているところ申し訳ないけど巡礼者姿に変装しておいて。私は髪を染めるわ。

 1時間後に出発する巡礼者用の最終馬車に乗って、本教会に戻るわよ」


 私が決定事項を皆に伝えると、当然の如く危険だと止められた。

 子供の私が指示を出していることに戸惑いが隠せない領主だけど、教会騎士姿のアステカが私の前で跪いているから、口を挟まず様子を見ている。


「私はマーヤ教会の聖人です。神の使いである私が決めたことです」


 私はそう言い切ると、用意してもらったハサミを使って、美しく伸ばした濃紫の髪を肩の長さまでバッサリと切った。


 母様の悲鳴が聞こえたけど気にしない。髪なんてまた伸びる。今は生きて本教会まで戻ることが重要だもん。

 私が聖人だと名乗ったので、領主や町の自警隊隊長が慌てて跪き、何とも言えない悔しというか情けないって表情で、うちの関係者も跪いた。




「アステカ、今から私のことはミヤナカちゃんって呼ぶこと。

 巡礼者の中にも襲撃者の仲間が居るかもしれないから、騎士のような振る舞いは私の命を危険に曝すことになると肝に命じなさい。

 探りを入れてくる者がいたら、到着後に調査し報告すればいいわ」


 巡礼者の馬車に乗り込む前、こげ茶に髪を染め巡礼者っぽく白いコートを着た私は、アステカに注意事項を伝える。

 真面目なアステカが演技できるか心配だけど、不愛想で無口な従兄キャラだって何度も言ったから、きっと大丈夫。


 道中、1人の怪しい男が乗せて欲しいと言って馬車を止めたけど、満員だから乗せられないと御者が断ると、中に乗っている乗客を舐めるように見てから、仕方ないと呟いて引き下がった。


 ……私を凝視したけど、眼鏡をかけたこげ茶の髪の少女には興味がなかったようだ。フフフ、変装が上手くいったわ。


 ……それにしても、ここまで用意周到って・・・そんなに私を殺したいの?


 

 夕日が空をオレンジ色に染める時刻、馬車は無事に聖地マーヤに到着し、ホッと胸を撫で下ろした。

 テレポートを使ったせいで疲れていたのか、途中からずっとアステカに寄り掛かって眠っていたようだ。

 私たち以外の同乗者は、全員が安宿の前で馬車を降りたから、敵の間者は紛れ込んでいなかったと思う。


 そう言えば出発前、私は皆からどうやって馬車に移動したのかと訊かれた。

 この能力は知られない方がいいと思ったので、聖人の秘技だと言って誤魔化しておいた。




 本教会で面会したセイント・ロードスは、私の髪を見て絶句し、襲撃されたことを知ってショックを受けていた。

 襲撃者の数も、その中に原初能力持ちが居たことも、敵の目的が私を殺して遺体を持ち帰ることだったことも、あり得ないと怒りを滲ませ、直ぐに学都の警備を最高レベルに上げるよう指示を出した。

 そして明日の朝、援軍を宿場町に向かわせると言ってくれた。


「マシロさま、昨日【マーヤ・リーレス】が戻られました。

 お疲れのところ申し訳ありませんが、これから会っていただきたいのですが、大丈夫でしょうか?」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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