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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
大寒波襲来

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35 里帰りとタラト火山

 4月10日、ようやく雪が解け始め、馬車が街道を走れるようになった。

 各学校や研究所は、春季休暇を4月12日から5月12日までに変更した。

 卓上コンロは、バイトの学生たちが頑張ってくれたので、十分な見本を持って父様のところへ帰ることができる。

 頑張ってバイトした学生たちも、家に帰る旅費が確保できたようで一安心。

 

 聖地マーヤから首都シュメルに戻る時は、街道を馬車で戻るのではなく大河を船で下るので、2日半で実家に到着するらしい。

 タラト大陸の中央に位置してい聖地マーヤは、何処の国より高地にある。

 聖地にある大陸最高峰のドキヤ山から湧き出る水は川となり、4つの大河は国境の役割と船による重要な交通網の役割も果たしている。


 ホワイティ商会一行は、隣国プクマとの国境を流れるドキヤ大河を下り、途中、川沿いの中継地で降りて馬車に乗り換える。

 創造部門のヨッシー23歳とユージン24歳は、ミニ天体望遠鏡を作りながら留守番することになった。

 お爺ちゃん先生は、高等大学と原初能力研究所の連携を進めるため、残って教会や学長と協議するらしい。


 


 戻ったシュメル連合の首都は、所々雪が残っており学都と同じくらい寒かった。

 大通りを歩く人はまばらで、各家の煙突から上がる煙は通常の半分くらいだ。

 どうやら、深刻な燃料不足に陥っていると思われる。

 養父母やうちの商会員は、なんとか冬を乗り切っていて胸を撫で下ろした。


 父様とはブラック固形燃料や卓上コンロの話を詰めたかったけど、それは商業連合の副支店長とマーリエさんに任せることにする。

 このままでは、大好きな首都シュメルの皆の生活が立ち行かない。

 アレン副商会長と創造部門のトール24歳に、固形燃料作りの準備をしておくよう指示を出し、【土】持ちの2人を連れ教会の船でタラト火山に向かう。


 ……待っててね。直ぐにタラト火山からブラックガイを持って帰るから。




 予想以上に、首都シュメルの凍死者数は多かった。

 亡くなったのは、高齢者や体力のない子供たちだ。


 ……本当にこれ以上、私は何もできなかったんだろうか?


 本教会は各国の王に、この冬は厳冬になると神のお告げがあったから、自国民が凍死しないよう備えよと、昨年の9月に注意喚起していた。

 そして各地の教会は、餓死者が出ないよう民の為に食料を備蓄していた。

 でも現実は・・・地球人である私の常識とはかけ離れていた。


 国王は貴族にだけ寒さに気を付けろと書簡を送り、国民には何も知らせていなかった。

 最低でも首都の民には知らせるだろうと、考えていた私がバカだったの?

 この怒りと悲しみの感情を、どう消化すればいいの?


 ……まさか、私が【マーヤ・リー】だから、予言なんて当たらないと侮った?

 ……なんで暖かいスープ一の杯が、配給できないの?

 ……これがこの大陸の、この国の普通?

 ……無責任な王だと、責めようとする私が間違ってる? 



「ああ、自然災害だから仕方ないってことか。

 日本も地震に火山噴火、洪水やスーパー台風とかあったな。

 個人がどれだけ備えても、自然の驚異に成す術なしって災害も度々あった。

 でも、国はそれなりに備えて、最低限の支援はしてくれていたよ?」


 溢れてくる涙は、申し訳ないと謝罪する涙なのか、あまりに無力な自分が情けなくて零れる涙なのか、グルグルする怒りと自責の念に駆られ苦しい。

 誰も居ない船室の中で、声を殺して泣きながら感情を整理しよと努力する。



「違う。だからブラックガイなんだよ。自分にできることはやってた。

 ブラックカイロだって、固形燃料だって、卓上コンロだって、食費が無くなった学生にだって仕事を与えたじゃん。

 自分が気付いて見えた範囲だけでも、私なりにベストを尽くした。

 だから泣くな! これからだって出来ることはある。だって私は宇宙人よ!」


 ひとしきり泣いたから、深呼吸をしてプラス思考に切り替える。


 王や国がやらないなら、私がガンガン稼いで、大陸中にホワイティ商会の名を広めながら、余剰金を各種イベント・教育・福祉に注げばいいじゃん。

 この星で生きた証として、スポンサーシップを定着させよう。

 制度だって精神だって、ないなら作ればいいし、教えればいい。

 私には、それを手伝ってくれる仲間や養父母だっている。


 ……うん、私って結構恵まれてる。 


「フッフッフ、チートじゃないけど、濃紫の美しい髪に、大陸唯一のブラックオパールの輝く瞳を持つ超絶美少女よ! しかも【聖人】認定アリ。

 これって、ファンタジー要素満載じゃない?

 大陸中に販売網を持ってるから、情報操作だってできちゃいそう。

 しかも、ブラックガイ関連商品を販売したら、私って大陸一の資産家になれる気がする。うん、最強!」


 ……よーし気分が上がってきた。ブラックガイを掘って掘って掘りまくるぞー!

 ……それに【マーヤ・リー】って肩書もある。使えるものは使ってなんぼよ。


 タラト火山に到着した私は、現地駐在の教会職員も総動員し、自分が買った土地でブラックガイを5日間採掘した。

 手伝ってくれた皆には、能力【創造】で錬金術(自称)を発動し、ゴツゴツしたブラックガイを丸くし、ブラックカイロとしてプレゼントした。

 寒さで凍えていた駐在職員さんは、涙を流して喜んでくれた。


 帰りの船の中で、私はせっせとブラックカイロを作っていく。

 これがあれば、弱者の凍死が少しは防げるはず。

 教会が固形燃料を使って湯を沸かせば、弱者はブラックカイロを温められる。


 ……王族の皆さん、私の本気をお見せするわ。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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