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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
大寒波襲来

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31 ブラックガイ爆誕

新章スタートしました。

 翌日には、【次世代能力研究所】に所属すれば、ホワイティ商会から研究費を貰えるらしいという話が広がっていた。

 教会本部と協議した結果、マシロ基金として3千万トールを用意する。

 基金の資金源は、私個人に入るルービックキ〇ーブの特許料だ。


 現在ホワイティ商会は、大陸中に販売網を広げた芳香剤の利益だけで、運営費は十分に賄えている。新たな人材を雇う資金も用意できた。

 アローエクリームの初期投資分も返済したので、利益は増える一方だ。

 また、新たに作ったお手頃価格の庶民用小型ルービックキ〇ーブも、順調に売り上げを伸ばしている。


 問題なのは大本命の黒い石だ。

 名前は私が【ブラックガイ】と命名した。丈夫で強そうなイメージでしょ?

 創造部門の3人は、燃料になるよう果敢に挑戦してくれているけど、成功への道は遠く厳しかった。

 それでもブラックガイは熱伝導に優れており、保温効果が高い特殊な石であることは検証済みだ。

 

 ……いったい何を組み合わせれば燃えるんだろう?



 現在ブラックガイの用途は、【炎】と【火】持ちの研究生が、随所でお湯を沸かすために使っているくらいだ。

 備蓄している薪を規定以上に使えない教会と、暖房と湯を沸かすため多くの薪が必要だった病院は、ブラックガイの特性を知ると喜んで購入した。


 ブラックガイを熱して作った湯は、そのままブラックガイを入れておくだけで冷めにくいから、患者さんの清拭やスタッフの手洗い等で役立っている。

 嬉しい悲鳴を上げているのは、臨時収入を得ることができた【炎・火】持ちの学生や研究生だが、なにぶんにも人数が少なく放課後フル活動(バイト)している。



 毎日の寒さに凍えていた1月15日、【水】持ちのカーセ部長がやってくれた。

 水を湯に変えることに成功したのだ!


 私は直ぐに地球での知識をフル活用し、担当している【次世代技術研究室】と【次世代能力研究室】の2つのメンバーを総動員し、《湯たんぽ》を作った。

 カーセ部長は、新しい能力を使いたいと集まった【水】持ちの研究員や各学校の学生に、時代を変える力の使い方を、無償で惜しみなく伝授してくれた。


 その功績が認められカーセ部長は教授に昇進し、晴れてネスラー所長から解放され、私の研究室の教授に就任してくれた。

 そして学都全体の【厳冬対策本部】で陣頭指揮を執ってくれている。



 湯たんぽの製造と販売は、商業連合傘下の金物組合に決まった。

 でも今回は、聖地マーヤに限りホワイティ商会が販売する。

 特許権は私だけど、取り分である純利益の2割は、ホワイティ商会と原初能力研究所が折半する。


 ……いやー、商業連合の2人は大喜びだったよ。また大陸的ヒットだって。


 学校との契約は商業連合も初めてで、いろいろ書類の手続きが面倒だったけど、原初能力研究所の取り分は、古くなった備品等の購入に使われる。

 私は製作に携わった2つの研究室のメンバーに、商業連合が作った初作品を無料で配ると約束した。


 ……ああ、契約の時ネスラー所長は、病気療養中で学都に居なかったから、契約は本教会の会計部長が行った。ネスラー所長はお金が入ることを知らない。


 自分たちが作った製品が、大陸中で売られるという経験をした研究員たちは、みな誇らし気で満足そうだった。

 フッフッフ、この調子でガンガンいくよ!

 思い付いたモノを製品にするのって大変だけど、ここには若くて情熱とガッツのある研究員がたくさんいるからね。


 ……なんてラッキーなのかしら。ウフ。




 そうそう、予想外なこともあった。

 高温の湯で温めた拳大のブラックガイを、布袋に入れてホッカイロのような使い方をさせてみたら大好評だった。

 是非とも売ってと希望者が殺到したので、不本意ながらホワイティ商会は、ブラックガイを【ブラックカイロ】という名で販売した。


 ……違うんだよ、目標はそれじゃないけど、めちゃくちゃ売れた。


 数に限りがあるので、1個5千トールで売らせて頂いた。

 タラト火山に堀りに行くのは結構大変だし、送料も見積もれば1個1万トールでも良かったかもしれない。送料タダだけど・・・


 ああ、1月末に行う予定だったルービックキ〇ーブ大会は、私も商会も忙し過ぎて4月に延期した。

 その代わり、限定50箱の追加販売をした。 

 

 

 1月末には本当に大寒波が襲来し、普段は雪が滅多と積もらない大陸南部のマセール王国まで雪が積もってしまった。

 残念ながら、ブラックガイは燃料化に成功していないから、この冬には間に合わない。

 しかも【ブラックカイロ】として売ったから、もう実験用しか残ってない。

 雪さえなければタラト火山に行けるんだけど、春を待つしか方法がない。




 2月に入って、寒さは異常なほどになり、大陸北部にあるシュメル王国や隣国ギョデク共和国では、凍死者もでていると母様からの手紙に書いてあった。

 養父母やホワイティ商会シュメル支店には、冬支度は例年の倍量にするよう伝えてあるので、なんとか乗り切れると思う。

 私は高等大学の試験を受けたり、研究室が忙しくて休む暇もない。



 

 全く雪が解ける気配もない3月に入って、ブラックガイはとうとう燃料化に成功した。

 

 イメージは、旅館とかホテルの鍋ものに使う、あの青色の固形燃料だ。

 なんと、ブラックガイの粉末に混ぜたのは煙突の煤と廃油だった。

 私は科学者じゃないから、どういう化学反応なのかなんて分からない。

 廃油の匂いが若干気になるけど、単価を少しでも下げるには廃油で充分だ。


 混ぜて固まるのに少々時間を要するが、あの青い固形燃料30グラムくらいの大きさで、ブラックガイは3時間燃焼してくれる。

 薪と比べたら火力は弱いけど、かさばらず煙が殆ど出ない優れものだ。


 ……問題はコンロだよね。カマドじゃ使えないし・・・  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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