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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
聖地からの使い

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29 ホワイティ商会(2)

 私のお願いを聞いた皆様は、それはもう大層驚いて、身の程知らずの子供に敵意を向けてくださったわ。

 その方たちのオーラは暗く淀んでいて、何か面白いことが起こるのではと期待する人たちのオーラは、明るい色をしていて分かり易くて笑っちゃう。


 所長が持っている【空間小】の特徴は、瞳の色が濃いアメジストではなくラベンダーで、能力はやや劣るから物体を移動させる距離は短い。

 名指しされた所長は怒りで顔を真っ赤にし、どす黒いオーラを身に纏っている。


「あっ、ごめんなさい。ネスラー所長は【空間小】でしたね。普通の【空間】持ちの教授が代わってあげてください」と、私は逃げられないよう止めを刺しておく。


 再び演習場内はどよめき、皆さんの私を見る目が奇異なものへと変わる。

 泣いて謝るか、泣いて逃げ出すと思ってた子供が、絶対権力者である所長に気を使ったのだ。まるで弱者を気遣うように。



 この演習場に向かう途中、セイント・ロードスは私に言った。

 いつものマシロさまらしく、()()()()で構いませんからと。

 傍若無人? 全くもって納得できない言い草だけど、そこまで言われたらヤルわよ。ええ、やってやろうじゃないって、つい乗せられたわ・・・


 ……なんで私に、困り者の所長の鼻をへし折らせようとするかなぁ・・・


「は、はは、その生意気な口は、この場に居る全員の嘲笑によって塞がれるだろう。さあ、我々に教えようとする力を見せてみろ! お前ごとき者にできることが、この私にできぬはずがない!」


 大声で出来ると宣言した所長は、尊大に胸を張り私に宣戦布告した。

 所長が可愛がっているのであろう部下たちが、立ち上がって拍手を始める。


 ……面倒臭いから、ついでに【創造】の人にも出てきてもらおう。


「分かりました。所長ができなくても私は笑いません。できないから学ぶのが研究ですもの。ついでに【創造】持ちの教授もどうぞ。私、()()()()()【ソードメイル】ですから」


「「 はあ? 」」という声が響き渡り、今度は不気味な者を見るような目が私に向けられる。



 まあ、そこからは一方的よ。

 私はにっこり笑いながら、踏ん反り返っているネスラー所長の目の前に、ルービックキ○ーブ10箱と新型天体望遠鏡が一緒に入っている大箱を、何もない空間に手を突っ込みひょいと取り出し置いた。


「な、なにー!」と叫んだ所長は、目を見開いたまま唖然とする。

 会場内の全ても者も、何が起こったのか分からないようで絶句したままだ。


「【創造】持ちの皆さまは、こちらに来て、箱の中にある新型天体望遠鏡とルービックキ〇ーブという頭脳玩具をご覧ください。どちらも私、マシロ・オリエンテが作ったものです」


 私は箱からちょっと豪華に装飾を加えた天体望遠鏡を取り出し、渋々嫌々見学席から降りてきていた【創造】持ちの皆さんに声を掛けた。


「マシロ・オリエンテだと!」

「オオォーッ、新型天体望遠鏡だー!」

「噂のルービックキ〇ーブだぞー!」


 ドドドドドドドと、土煙を上げる勢いで【創造】持ちの皆さんが走ってくる。よく見ると、他の能力の持ちの皆さんも走ってくる。

 つい先日、馴染みの研究室に立ち寄った創造部門の3人が、うちの商団主マシロ・オリエンテ様は、とんでもない天才なのだと自慢していた。

 そして、新型天体望遠鏡を作ったことも教えていた。


 ルービックキ〇ーブは、学都に限りうちの販売を許可してもらい、つい5日前に6個限定で販売してみた。

 モニターみたいな感じで販売したら、たまたま購入した高等大学の学生や研究所の研究員が、多くの者に見せて自慢したみたいで、次の販売はいつからだと問い合わせが殺到していた。


 ……う~ん、これはどうやって収拾したらいいのかしら?


 ルービックキ〇ーブを手に入れようと、30人くらいが殴り合いの争奪戦を始めてしまった。

 私は空間収納から、緊急用にどうぞと本教会から貰った、カランカランとよく響くハンドベルを取り出し直ぐに鳴らした。

 すると、ぴたりと喧騒は治まり、何事だ?という表情で皆は辺りを見回す。


「皆さん、今は私の能力を検証している最中ですよ。ルービックキ〇ーブが欲しい研究室は、この後で申し出てください。各研究室に1個支給します。

 それから、1月にルービックキ〇ーブの大会を行います。

 完成させるタイムを競うものですが、3位内に入賞した人には、まだ販売開始されていない新型モデルを差し上げます」


「「オオォーッ!」」と再び雄たけびが湧きおこる。


 明日から、ホワイティ商団は正式に商会に昇格する。私は商会主よ。どんな時でも商機を逃したりしないわ。

 だって、セイント・ロードスが傍若無人でいいって言ってくれたから。

 遊ぶ場所もなく雪に閉じ込められ退屈している若者には、遊び心が必要だと思わない? もちろん学都全域から参加者を募るわ。


「ルービックキ〇ーブは、ホワイティ商会で明日から限定100箱だけ販売でーす」


 ……さあ、歳末商戦! 売って売って売りまくるわよ!


 ……ホーホッホ、さあネスラー所長、この凄い盛り上がりの場内を収拾してごらんなさい。



 そんな妙な熱気に包まれた会場内で、真剣な顔をして悩んでいるのは、たぶん【空間】持ちの皆さんだろう。

 初めて見た新しい能力の使い方に、原理や方法を推察してみるが理解できないのだと思う。

 セイント・ロードスが、誰も真似できないはずだと言っていたから。


 結局ネスラー所長は、気分が悪くなったと言って逃げた。


「【空間】持ちの皆さん、私が使った()()()()を学ぶ勇気のある方は、次世代能力研究室を()()()()お待ちください」


 ……私個人で、いくつも研究室は持てないから、準備くらいはお願いね。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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