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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
聖地からの使い

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25 聖地マーヤ(1)

 タラト火山から帰る時間になっても、発見した黒い石が燃料として使えるかどうかを確認することはできなかった。

 原石に直接火を近付けても発火せず、粉にしてみたけどダメだった。

 念のためにメッセージカードで占ってみたら、この黒い物体で間違いないという結果だった。


「何かが足らないんだろうな。この黒い石に何かを加えたら燃料になると思うんだけど、研究しなきゃダメかぁ・・・」


「マシロさま、10月は聖マーヤ原初能力学園の入学式でございます。

 マシロさまは高等大学の過程を終えられていますので、12歳の子供が学ぶ学園の入学は必要ないのですが、子供が入れる寮が原初能力学園にしかございません。

 この石を研究されるのでしたら、席を学園に置き、大陸最高峰の原初能力研究所で研究されては如何でしょうか? それなりの設備が整っております」


 私の呟きを拾ったセイント・ルビネスが、研究する場所に聖地マーヤの研究所を勧めてくれる。

 

「ついでに聖マーヤ高等大学の卒業資格試験を受けて、最年少卒業記録を更新するのはどうじゃ? これまでの記録は15歳じゃったぞ。

 年に3回、2・6・8月に行われる試験に全部合格すればいいだけじゃ。

 この黒い石の研究をしつつ、8月の最終試験に合格してからシュメルに帰ればよかろう」


 お爺ちゃん先生は自慢の顎髭を撫でながら微笑み、自分も客員教授として戻るから、一緒に石の研究をしようと誘ってくれる。


 ……そういえば、12歳になったら聖地マーヤに行くんだった。

 ……聖地マーヤの学校は、1月から3月まで雪で閉ざされるから、年末の10月に入学し8月に卒業するって聞いたな。


「う~ん、商団を商会にするなら、9ヶ月も仕事を休むのは無理だと思う。

 もしも本教会が、聖地マーヤにホワイティ商会の支店進出を認めてくれたら考えてもいいかな。

 創造部門のメンバーごと移動すれば、新しい商品の開発も可能だし」

 

 黒い石の研究を、首都シュメルの中心部にある現在の創造部門で行うのは、爆発等の可能性を考慮したら難しいかぁ・・・うん、アリだね。

 私の使命は【産業革命】だもの、この世界にない物を作って儲け・・・いえ、生活を便利にしなきゃいけないわ。


「もちろん考慮させていただきます。あの天体望遠鏡を作った商会ですから、学都内への出店も許可されるでしょう」


 セイント・ルビネスは、穏やかな笑顔で大丈夫だと言ってくれた。

 そもそも教会は、【マーヤ・リー】に最大限の便宜を図らねばならないらしい。


 聖地マーヤの学都には、全部で5つの学校がある。

 大陸最高峰の原初能力研究所は、17歳~30歳までの【原初能力持ち】が集まり、上級能力者を育成している。

 医学学校は、上位学校卒者と【聖・癒し】持ちが、19歳~27歳の間の5年間で医師・薬師・癒し中級の資格取得を目指し学ぶ学校だ。


 高等大学は、お爺ちゃん先生が教授をしていた学校で、上位学校卒者が19歳~25歳までの間で3年間学び、卒業後は上位学校や貴族学園高等部の教師になる者が多い。


 誘われていた原初能力学園は、王族・貴族・豪商の家の12歳から15歳までの【原初能力持ち】の少年少女が、原初能力の基礎や発動を1年又は3年間学ぶ学園だ。

 基礎能力学校は6歳の能力鑑定で、【原初能力持ち】と判定された下級貴族や平民が、6歳~12歳までの間で1年間だけ原初能力の基本を学ぶ学校みたい。


 ……う~ん、学生向けの商品って何だろう?

 ……いやいや、先ずは燃料問題の解決よね。




 あれこれ考えているうちに時間はあっという間に過ぎ、今日は聖地マーヤに出発する日だ。

 何処から聞きつけたのか、第二皇子ナクシェと王妃が見送りに来ていたが、私は視線を合わせることもないし、教会の護衛がガッチリ私を守っているので、近付くことさえできない。


 ……しつこい! そして頭がおかしい。 


 王妃はあの暴力息子の嫁に私をと、母様に申し入れたらしい。

 父様は怒り狂って、王に絶交すると宣言したが、どうやら国王はそのことを知らなかったらしい。嫁の暴走を止めんでどうすんの!


 私も怒り狂ったから、商業連合に第二皇子に暴力を受けたことや、本人からの謝罪がなかったこと、このままでは大っ嫌いな暴力男と無理矢理結婚させられて、ホワイティ商団を乗っ取られると涙ながらに訴えた。

 もう大号泣よ。マーリエさんも女性職員も怒り狂ってたわ。


 商業連合には、ルービックキ○ーブの製造・販売で大きな貸しがある。

 だからその貸しを、この機会に回収させてもらおう。

 上から目線で返せというのではなく、お涙頂戴と女性職員の同情でがっちり回収よ。

 商業連合としても、私の商才を潰されるのは納得できないはずだもん。


 結局、私と商業連合は、ホワイティ商団の本店登録地を聖地マーヤに変更してから、商会に昇格させると決定した。

 また、聖地マーヤの学都には商業連合の支店が無かったから、うちの担当をシュメル支店の分店がこれまで通り行うことで合意。


 ……だってさ、私が頑張れば頑張る程、あの王族に税金としてお金が入るのよ。腹が立つじゃない? 税金は本教会に有効活用してもらうもーん。



 聖地マーヤの学都までは、馬車で5日の道程だ。

 到着した聖地マーヤは、高地だから紅葉が早く、山も町も色とりどりに美しく彩られていた。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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