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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
商団主ましろ

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19 災難を呼ぶ者たち(1)

 あれから従兄のパーシルは、ぱったりと来なくなった。

 オリエンテ家の親族の皆さんからの嫌がらせは・・・前より減った。

 だが今度は、何故か自分の息子や娘を【ホワイティ商団】に送り込もうと躍起になっている。


 私に取り入ろうとしているのか、【ホワイティ商団】の成功を邪魔するためなのかは分からない。

 こんな時に【鑑定眼】みたいな能力があればいいんだけど、接点のなかった人の人間性なんて分からない。


 ……あぁ、こんな時にメッセージカードがあれば占えるのに・・・


 ……ん? ちょっと待ってよ、確か地球での能力は引き継げるんじゃなかった? それに、マーヤ教会が私を【予言者】だって言ってなかった?


 ……思い立ったが吉日よ。直ぐに母様にお願いしよう。



 2日後、つたない私の原画を見た母様は、信じられないくらい素敵な手描きカードを完成させてくれた。

 地球で使っていたカードとほぼ同じ大きさで、枚数は38枚だけど、その内2枚は忖度(そんたく)カードだ。

 1枚はイエスかノー。もう1枚は善人か悪人かを示してくれる。


「感動だわ。マーヤ・リー(予言者)であるマシロが使う()()作りをさせてもらえるなんて、最初は手が震える思いだったけれど、途中からね、自分の【原初能力 芸術】の能力がぐんと上がるのが分かったの」


 母様はそう言いながら、筆を持った右手をプルプル震わせながら満足そうだ。今日はこれからポスターを描くみたい。

 妖精の森の精霊みたいな見た目の母様は、意外とユーモアがあって面白い。

 今では私と楽器を弾きながら、アニソンの替え歌メドレーで盛り上がれる。


「ありがとう母様。これで人選が楽になるよ。それから、何か困ったことがあれば私に声を掛けてね。もしかしたら力になれるかもしれないから」


 にっこり微笑んだ私を見て、「ああインスピレーションが~」と言って、母様はキャンバスに向かって筆を走らせていく。



 

 早速メッセージカードを使って、求職者の履歴書を参考に視てみた。

 すると9割の求職者が何で?!っていうくらいダメダメで、1割の3人は善人で優秀そうだった。

 中には暗殺者のカードや、復讐者というカードが出る者がいた。

 暗殺者の履歴書には、今までマセール王国で働いていたが、故郷のシュメル連合国に帰ってきたので応募したと書いてあった。


 ……まだ、誰かが私を殺そうとしている。しつこいなぁ・・・


 当然私は、マイナスにしかならないと思われる奴等の履歴書15枚を、「まだ死にたくないので」と言って父様に渡しておいた。

 本当にヤバそうな5人分の情報は、マーヤ教会にも伝えておく。

 私に害をなす可能性のある者は、教会が調べ上げて処理しますと、シュメル教会に移動してきたセイント・ルビネスが言っていた。


 ……ルビネス神父は、マシロ様を害そうとするなど、神の天罰が必要ですねと微笑んでいたけど、いや、あの、処理するって、天罰って・・・何?



 占ってみたら、選んだ3人の中に何某かの【原初能力】を持っている可能性がある者が2人いた。

 宝石のように輝く瞳でもなく髪色も違うため、2人は【原初能力】鑑定を受けていなかった。まじまじ見たら瞳は綺麗だけど、アンバー程の透明感はない茶色だ。

 19歳以上は有料だけど、この際だからルビネス神父に鑑定をお願いしよう。


 厳正なる審査(占い)の結果、現在オリエンテ商会に勤めている8人を、3年間限定の派遣扱いの有料でお借りして、新しく雇用する3人を含めた11人が【ホワイティ商団】の商団員となった。

 本店の営業部長アレンさんを副商団長に任命し、顧問のお爺ちゃん先生と私が役員である。




 気は進まないが、今日は再度王妃様に出資者について話をしに行く。 

 先月話をしに来た時、【ホワイティ商団】で雇って欲しい人物がいるので、働くメンバーが決まったらまた来てねと言われていたのだ。

 だが、少し前の事件を考えると気が重い。もう出資してくれなくてもいいかな。

 

「いらっしゃいマシロちゃん。出資者の件は了解よ。500万トールでいいかしら?」


 商団員名簿を見た王妃様は、にこにこと妙に上機嫌で金額を告げた。

 こちらはお願いする側だけど、王妃の紐付きの人間が商団に送り込まれるのは遠慮したい。

 私の動向を監視したいのだろうと察しはつくけど、正直この国の王族を信用できない。

 

 ……現在、王宮と我が家は冷戦中だ。

 

「それでね、雇って欲しい者だけれど、できればマシロちゃんの側近・・・いえ護衛にでもしてもらえたら嬉しいわ。厳しくしてくれて構わないから。

 あれから直ぐ謹慎処分にして反省させたわ。本当にごめんなさいね。

 ナクシェほら、早くいらっしゃい。先ずは先日の謝罪をしなさい」


 現れたのは、第2皇子ナクシェ・ペル・シュメル17歳だった。ゲゲ・・・

 典型的な俺様タイプで、世界は自分を中心に回っていると口にするような、とんだ勘違い野郎で嫌な奴だ。



 先月、王妃様に出資者の話をした時、王様にも呼び出され「シュメル連合国の未来の為、せめて13歳くらいまでオリエンテ商会に留まって欲しい」って頼まれた。

 でも私は、独立するのは確定なのでと答えて、王の許可を得て王族専用図書館に立ち寄った。


 そこで、勉強をさぼって昼寝をしていた第2皇子に出会ってしまった。


 うっかり本をテーブルの上から落としたら、突然大声で怒鳴られた。

「王子の睡眠を妨げる無礼者め!」ってね。

 だから「図書館は昼寝の為にあるんじゃないわ」って無表情で答えた。

 すると「常識を知らない無学なチビめ、お前が読めるような本なんて無いぞ、出て行け!」って命令されたから、ついおばさん根性が出てしまった。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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