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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
商団主ましろ

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16 悩める大人たち

 ◇◇ エドモンド ◇◇


 国王の呼び出しから帰ってきたマシロは、「特別なこともなかったよー」と言って、直ぐに営業部長のアレンの所へ行ってしまった。


「マーヤ教会本部から、マシロについて訊きたいことがあるから本教会に来てくれとの手紙が来たが、お前はどういうことか分かるか?」


 数か月前に国王から呼び出しを受けた時、私はそう質問され、特別心当たりはないが、6歳の時に受けた能力鑑定の際の、セイント・ルビネスの様子が少しおかしかった気はすると答えておいた。

 確かに【ソードメイル】持ちは希少で、国王にも届け出が必要ではあるが、いち個人のことで国王が呼び出しを受けるだろうか?


 結局友人でもある国王は、忙しくて出向けないから、本教会から誰かがマシロに会いにきて、直接本人に訊ねて欲しいという親書を送ったと言っていた。

 確かにマシロの能力は異質だ。

 教会が興味を持つことも理解できるが、【ソードメイル】とはそういう存在なのだろうと、私も妻も深く考えないようにしていた。



 マシロが城から帰ってきて1時間後、今度は私とオリアナが呼び出された。

 もしかしたら、マシロが持参した手土産が高級品過ぎて、オリエンテ商会からの賄賂だと思われての呼び出しだろうか?

 まあ商会主である私の目から見ても、素晴らしい仕上がりのネックレスだった。突き返されたら、マシロががっかりするだろうな。


 通されたのは王の執務室ではなく、ごく一部の者しか知らないという半地下にある窓もない秘密部屋だった。

 室内は豪華な設えだが、春だというのにヒンヤリする。

 メンバーは私とオリアナ、国王と王妃、そして親友の一人である騎士団団長のクロノスの5人だった。


 ……側近や側仕えも外して話す内容とは、いったい何なんだろう? 


「エドモンド、オリアナ・・・マシロは、いや、マシロ様はもうマーヤ教会にお任せした方がいいと思うぞ」


 開口一番、ナスカ王は疲れ切った顔で寝言を言った。


「はあ? マシロは俺の大事な一人娘だぞ!」


 いくら国王でも、寝言に対して敬語など使う必要はない。


「王様、お疲れなのは分かりますが、きちんと説明しなければエドモンドもオリアナも意味が分からないと思いますよ。まったく」


 同じように疲れた雰囲気のクロノスが、困ったもんだという表情で助言する。

 このメンバー、全員が学生時代からの盟友で、王妃とオリアナは従妹でもある。こうして集まれば、敬語も遠慮も無くなるのが通常だ。


「分かっている。分かってはいるが、現実が受け入れられない……いや、正直、私自身が理解できてないんだ。

 そうだろうクロノス? 【マーヤ・リー】だぞ! なんだよ【タラータリィ】って! そんなもの、伝説とかお伽噺じゃなかったのか?」


「あなた、しっかりしてください。マシロちゃん本人が行かないと言っていたではありませんか! 

 本教会のセイントでは、予言者である【マーヤ・リー】の言葉には逆らえませんわ。【マーヤ・リー】は、天聖である最上位者【マーヤ・リーレス】に次ぐ、聖人ではありませんか」


 いつものように王妃に叱られている国王の姿だが、私には王妃の発する言葉が、全く頭に入ってこない。

 なにやら天上界の話をしているようだが、それがマシロと何の関係が?


「【タラータリィ】? えっ、マシロは3つの原初能力持ちだったのですかリメリア? まさか、もう一つは【聖能力】なの?」


 はっ? オリアナ、君は王妃様に何を言っているんだい? 3つの能力持ち?

 おいおい、なんだよナスカ、クロノス……俺に向けてるその憐みの視線は?


「【タラータリィ】って何だ? 聞いたことがないぞ」


 俺の頭は完全に混乱している。可愛いマシロの笑顔がちらついて、普段通りに脳が働かないから、質問するしかない。


「6歳の時に鑑定したセイント・ルビネスが、もしかしたら3つの【原初能力】持ちの【タラータリィ】かもしれないと報告し、護衛のアステカに日頃の様子を探らせたそうよ。

 その結果、【統率】能力者を率いる最上位のセイントが、直接マシロちゃんに会って鑑定する必要があると、本教会で決まったみたい」


 王妃の話す内容は分かる。でも、なんでそれが俺の娘のことなんだ?


「今日マシロちゃんと面会されたセイント・ロードスによると、3つの【原初能力】持ちである【タラータリィ】が現れたのは、なんと336年ぶりらしい」


 いやクロノス、そんな情報は聞きたくないぞ。

 なんだよお前、なんでお前が誇らし気に胸を張るんだ?


「それで間違いないと確信したから、セイント・ロードスは、本教会に来ていただきたいとマシロ様に頼んだんだ。

 だが、マシロ様は教会行きを断り、自分の使命を果たすと言われた。


 俺たちもセイント・ロードスも、使()()なんて言われちゃあ、それ以上何も言えなくなった。ふーっ。

 マシロ様は、ご自分の進むべき道をご存じのようだ……と言って、セイント・ロードスは先程帰っていかれた」


 王の話しの後で、ハーッと、特大の溜め息を全員が吐く。


 う~ん、国王に【マシロ様】呼びされるのは・・・凄く抵抗があるし嫌だ。

 マシロは俺の娘で、オリエンテ商会の稼ぎ頭で、俺の希望であり光なんだ。



「すまんが、まだ重要な話が残っている。

 セイント・ロードスが、とんでもない情報を残していかれた。

 先日の暗殺者が言っていたマセール王国のミリアーノという少女は、王孫であり、現在母親と共に行方不明になっている第三皇子の娘の名だった」 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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