15 オリエンテ商会の後継者
振り向くと、そこには6歳の時に会ったマーヤ教会のセイント・ルビネスさんと同じ服を着た神父さん?が立っていた。
セイントと言えば、地球のカトリックでいうところの枢機卿みたいなものらしいから、ここは礼を尽くしておこう。
「はじめまして、マシロ・オリエンテです」と、丁寧に頭を下げておく。
貴族じゃないからカーテシーでドレスを摘まんだりなんかしないけど。
「やあ、ようやく会えたね。私はセイント・ロードス。【統率】持ちの責任者をしている。隣に座っていいかな?」
どこかお爺ちゃん先生みたいな安心感のある人だ。年齢はたぶん60代。
右目がグリーンキャッツアイで、左目は黒と青のホークスアイ・・・私と同じオッドアイだ。
【統率】持ちは、原初能力鑑定をする役目の人だったはず。
「マシロちゃん、セイント・ロードスは貴女に会うために本教会からいらしたのよ。何か、確認したいことがおありみたい。
できれば、正直に答えて貰いたいのだけどいいかしら?」
いいかしら?・・・うーん、王妃の貴女がそう言えば、それはもう命令と同じでしょう? 国王と王妃、騎士団長にセイントよ・・・逃げ場なんて何処にもないじゃない!
……やっぱり宇宙人だってバレたのかな? 少しは役に立ってるのになぁ。
……殺気なんて漂ってないから、私を捕らえたり罰したい訳じゃなそうだけど。
ここで子供の振りをして、いや8歳は子供だけど、はぐらかしたところで隣に座るセイントは全てお見通しだよね。【原初能力】マジ怖いわ。
それなら少女のマシロじゃなく、宮中ましろで勝負するしかないわね。
「はい、何でも……とはお約束できませんが、答えられる範囲であれば」
私は必殺アルカイックスマイルを発動した後で、ゆっくりと答えた。
「なるほど・・・8歳で聖マーヤ高等大学の過程を終了したというのは真実か。
では問う。マシロ殿は、将来オリエンテ商会の後継者になるつもりかな?」
……うわー、特殊な輝きを放つ瞳って、射抜かれそうな威圧感があるわ。
……でもね、私は地球で占い師をしていたの。相手を見抜こうとすることには慣れているベテランよ。
「いいえセイント・ロードス。私は養女ですわ。
育てていただいてる御恩を少しでもお返しし、自立する準備ができたら、私は自分の使命を果たすために活動する予定です」
私はセイント・ロードスの瞳の奥を、覗くようにジッと見つめながら答えた。
真偽を確かめるように私の瞳をジッと見ていたセイント・ロードスは、再び「なるほど」と呟き、瞳を閉じて腕を組んだ。
「驚いたな。このメンバーに囲まれて怖気付くどころか、余裕の微笑みだ。
しかも、王妃に向かって条件を付けるとは・・・
うちのマシロは天才だと、エドモンドとオリアナが自慢していたが、これは何というか、天才というより異質? いや【ソードメイル】だからか?」
本当にびっくりしたって顔で、私を見るのはやめて欲しい。
必殺技が効き過ぎたかな? 日本人って何を考えてるか分からないって海外では言われてたから、不気味だったかな?
「王様、本来【ソードメイル】は、国王となる者やセイント(男性)やセント(女性)、そして時代をリードする者が持つ能力ですわ。
これを見てください。この素晴らしい宝飾品を。オリエンテ商会が立ち上げた新ブランド【ホワイティ】は、実質この小さな子が率いていますのよ。
そんな子が、普通であるはずがありませんわ!」
う~ん、そんな子扱いかぁ・・・でも、うっとりした表情でラブラドライトのネックレスを見ているから、きっと気に入ってくれたんだな。良かった。
フッフッフ、営業部長のアレンさんに、他のラインナップを持参させよう。
やだ~ん、にまにましちゃう。だって、売り上げの2割は私のものだもん。
……おっと、緊張感が何処かへ飛んでいってたわ。
「マシロ殿、オリエンテ商会を継がないのなら、マーヤ本教会に来ていただくことは可能だろうか?」
「はい? それは遊びにってことですか? それとも【原初能力】の勉強にですか?」
ああ確か6歳の時に、セイント・ルビネスが教会に来て欲しいって言ってた気がする。原初能力学園だったっけ?
「いいえ、マーヤ・リーとしてお迎えしたいと思います」
セイント・ロードスは立ち上がり、私の斜め後ろに移動して、何故だか跪いて頭を下げた。
……はて? マーヤリーって何?
「マーヤ・リーだと!」
「マーヤ・リーですって!」
王と王妃はガタンと椅子から立ち上がり、これ以上開けないってくらいに目を見開き、私の方を化け物でも見るような目で見る。
……ギャーッ! いったい何なの? マーヤ教のマーヤがついてるから、教会の関係者よね? セイントさん、貴方にはいったい私の何が見えたの?
いや、いやいや、ちょっと待ってよ。まさか過去にこの星に来た人たちって、偉大なる○○○様とかって崇められたりしたの?
ない、ない、ない、ない。 私は自由に生きたいのよー。
……仕方ない。ここはいつもの、どうとでも取れる曖昧さで切り抜けるわ!
「申し訳ありません。与えられし使命を果たすため、すべきことが多いので、私が、必要だと思う時がきたら・・・とだけお答えしておきます。
あっ、でも12歳になったら、お約束通り少しだけお邪魔しましょう」
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