14 ましろ、国王と会う
【 補 足 】
◎通貨 十進法で単位はトール 価値は100トールを100円で考えてください。
100トール(大銅貨) 1,000トール(小銀貨) 1万トール(大銀貨) 10万トール(小金貨) 100万トール(大金貨) 1千万トール(白金貨) 小銭は小・中銅貨です。
◎物価 庶民の3人家族だと月額8万トールで生活できます。
◎平均月収 庶民・下級役人 5~12万トールくらい。
8歳の誕生日、無事にアローエクリームの正式販売が始まった。
どこの国でも、販売窓口はオリエンテ商会の各支店に限定してある。
首都シュメルでは、首都に住んでいることが分かる身分証があれば、大特価の1,000トールで購入できる。
でもそれは1年間で1回だけ。しかも1個のみと個数制限がある。
……安く買って、他所で儲けようなんて商人は排除よ。
誕生日が過ぎて3か月、【創造】能力を使って倒れるまで頑張った結果、さざれ石に穴を開けることができた。これで糸を通すことが可能になる。
地球みたいに伸縮性のある糸なんてないけど、母様が使っている楽器の中に、丈夫でちょっと伸縮性のある弦があった。
なんと素材は、聖地マーヤのドキヤ火山に生息している動物の尻尾だった。
楽器用の太さは必要ないから、廃棄される細いモノを格安でゲットした。
色は薄茶色で、水に濡れても切れ難く、熱にもまあまあ強い優れもの。
早速、母様やオリエンテ商会で働く女性たちにブレスレットを作って、条件付きでプレゼントした。
モニターとしてアンケートに答え、宣伝要員としても頑張ってもらう。
各ブレスレットには、きちんと石の持つ効果・効能が添付してある。
この星の宝石と地球の宝石が、同じ効能を持っているかどうかは分からないけど、愛用していた身として、覚えていた効果や効能を思い出して冊子にした。
水晶系の宝石は、正式な名前を特定するのが困難だから、色を中心に【知性】【愛情】【癒し】【厄除け】【精神安定】【芸術】【対人関係】【金運】などを中心に記載しておいた。
もちろん、女性に配るんだから【恋愛成就】とか【美容促進】とかを中心に石を組んでおいたわ。
万人受けする【金運上昇】とか【勝負運アップ】の組み合わせもバッチリ。
本当に効果があるかどうかは、モニターさんに義務付けたアンケートを見なきゃね。
これまでの宝飾品は、高級な石か安い石か、大きいか小さいかで価値が決まっていたから、石の効能や可愛さ、キラキラ度なんてあまり関係なかったのよね。
だから私は宝石の持つ価値を上げ、庶民でも入手できる価格で勝負に出た。
捨てられていたさざれ石が売れれば、私も少しは貢献できる。
2カ月後、じわじわと効果があったみたいで、アンケート結果もぼちぼち。
宣伝効果は順調で、数量限定商品として売り出した1つ5千トールの【願いのブレスレット】シリーズは完売した。
大量生産したいところだけど、さざれ石の加工は私の仕事。
時間と体力に限界があるから、毎月30個限定で販売するしかない。
……でも、ブレスレットの売り上げは、6割が私に入ってくるから将来の為に頑張るわ。
勿論、高級な宝石を売るための工夫だって忘れてないわ。
美しくカットしたメレダイヤで、高級な宝石を囲んでゴージャスにし、特別感を出した斬新なデザインの指輪やペンダントトップ、ブローチだって作ったわよ。
精密カット技術の習得が大変だったけど、新型ルーペと新型研磨機の登場で、どこの国にもない輝きが実現できた。
……私の無茶ぶりを実現してくれる、オリエンテ商会の職人さんありがとう。
私は父様と営業部長のアレンさんと協議し、この最高級宝石に【ホワイティ】と名付け、新しいブランドを立ち上げた。
【ホワイティ】は主に、各国の王族や高位貴族が得意先になるだろう。
【ホワイティ】部門の責任者は私で、売り上げの2割がデザイン料として私に入ってくる。
さて、今日は国王の呼び出しに応じて王宮に行かねばならない。
まあ私は、気遣いのできる元日本人。手土産だって手を抜かないわ。
国王には、瞳の色と同じタイガーアイのカフス。王妃には【ホワイティ】の自信作の中からラブラドライトのネックレスを持参するわ。
不格好な原石を利用したから、ラブラドライトは私の能力を使って雫の形に。複雑な色合いで輝く最高傑作よ。
メレダイヤは捨て場からくすね……持って帰ったモノだから、実質のお値段は50万トールくらい。
でも、売るとしたら300万トール(大金貨3枚)は頂くわよ。
王妃が身につければ、広告宣伝費が浮くから損にはならないはず。
……ところで、こんな幼気な少女に、一国の王が何の用かしら?
……しかも、わたしだけを呼び出すのは何故?
通されたのは謁見の間ではなく、春の花が咲き誇る庭園のガゼボだった。
シュメル連合国のナスカ王は、うちの父様や父様の秘書メロルさん、そして、私をガゼボまで案内してくれた王宮騎士団団長のクロノスさんと、上位学校の同期生で40歳だ。
ガゼボには、お菓子とティーセットが準備してあり、王と王妃がにこやかに微笑みながら座って待っていた。
椅子は5脚用意してあり、残りの席に私と騎士団長のクロノスさんが座ると、あと1席が残る。
私は母様に習った通りの礼をとり「お呼びと伺い参りました」と挨拶をした。
……ラノベ展開だと、身分が下の私からは話し掛けられないところだけど、この国はそんなことには拘らない。
「その方がマシロか。よく来た。座りなさい」と、柔らかな声で王が目線を椅子に向ける。
「ありがとうございます。こちらは、お招きいただいたお礼に持参した物でございます。新しくオリエンテ商会が立ち上げた【ホワイティ】ブランドの物ですが、私が選んだので気に入っていただけるかどうか・・・」
今日の私は商人モード。そこら辺のお嬢ちゃんじゃないもん。父様も好きにやってこいって言ってたから、遠慮なんかしないわ。
「まあ、本当にしっかりしたお嬢さんね。オリアナから聞いていた通りだわ」
ナイスバディで大人の色気が漂う王妃様38歳は、母様から何か聞いていたようで、クスクスと笑いながら私の持参品を受け取ってくれた。
……どうか気に入ってもらえますように!
「ちょっと遅れてしまったかな?」と、不意に私の後方から声が掛かった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。




