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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
商団主ましろ

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13 行方を捜す者(2)

 ちょっとー、ピンチだわ! なんで剣を抜くのよ!

 私はゴクリと唾を飲み込み、スーハ―スーハ―と深呼吸をする。

『ああ、お菓子のいい匂い』って、一瞬気が緩みそうになったわ。

 そうじゃないでしょう? ここは全速力で逃げる場面よ! なのに何故か体が動かない。


「お嬢様に向かって剣を抜いたなお前たち」


 護衛のアステカさんが私の肩をガシッと掴み、素早く店の中に私を押し戻し、暗殺者らしき奴等に向かって剣を抜いた。


 ……体が動かないと思ったら、アステカさんが掴んだからか・・・ 


「ハッ、護衛1人に何ができる、お前も一緒に死ね!」


 3人の中でも一番人相の悪い男が、自信満々という感じで斬り掛かってくる。他の2人も剣を抜いて、ギラリと私を睨む。

 

 ……うちのアステカは強いのよ! そんじょそこらのゴロツキ程度じゃ相手にもならないわ。


「キャーッ、助けてー! 子供を誘拐して売ったり殺したりする悪党に襲われてるわー!」


 オリエンテ商会の一人娘をしていると、こんなことは日常茶飯事……とは言わないけど、まあ、時々誘拐されそうになったり、殺されそうになったこともある。

 そのせいか、妙に場慣れしたというか度胸がついたというか、大声で叫べるようになった。


 カンキンと剣がぶつかる音が響き、何事だと人々が集まり始める。

 こんなに人通りのあるメイン通りで襲われたのは初めてだけど、子供の助けて!という悲鳴に、心優しき町の人たちが直ぐに反応してくれた。


「マシロちゃんが襲われてるぞー!」と誰かが叫んだ。


 すると、八百屋さんは暗殺者たちに向かってジャガイモを投げ始め、金物屋さんは鍋蓋を器用に投げている。

 お肉屋さんは叩き棒と肉切り包丁を手に持って、じりじりと距離を詰めている。通りすがりのご婦人まで、靴を脱いで投げ始める。


「痛い! や、やめろー」と叫んだ暗殺者の1人は、馬具屋さんのご主人が投げた馬の蹄鉄が額にヒットし、ダラダラと血を流しながら叫ぶ。


 ……これはもう逃げ道はないわね。ほら、警備兵の皆さんが走ってくるわ。


 アステカさんは主犯らしき男の右腕をバッサリ斬って、おまけに左足のアキレス腱を容赦なくスッパリ。これで逃げることはできないわよ。

 他の2人も、町の人と駆け付けた警備兵さんによって、グルグル巻きのガチガチに縛られて連行されていった。


「大丈夫かいマシロちゃん?」と、町のみんなが心配して声を掛けてくれる。


 うーん、私って人気者。


 八百屋さんも金物屋さんも、お肉屋さんだってオリエンテ商会に商品を納入する業者さんだ。

 しかも私、この冬に手荒れや小さな傷に効くクリームを開発して、「試供品ですから遠慮せずに使ってくださいね」って、メイン通りのお店に配って回ったのよね。


 地球のアロエに似た植物が、インカーヤ島の宝石採掘場の近く群生しているのを発見し、3ヶ月ほどの試行錯誤の末、なんとびっくり、お肌すべすべ、切り傷にも効果絶大って代物を完成させちゃった。

 その名も【アローエクリーム】。

 ひねりなんて必要ないわ。この星での名前はボルボル草だもの。


 皆様から大好評を得まして、私の8歳の誕生日に正式に販売開始となる予定。

 でも、お世話になっている町の皆さんには、私が初めて作った商品だから、価格を他国で販売する半額に設定し、大変お安くお求めやすいように大奉仕すると発表したのよね。それがつい先日のこと。


 完成した製造工場で雇ったのは、夫を亡くしたご婦人や12歳以上の孤児だ。

 しかも警備担当として雇ったのは、仕事中にケガをして泣く泣く辞めた兵士さんや警備兵さんだ。

 まあ今回は、損しても徳をとるって感じ。でも他国でガッポリ儲けるから全く問題なし。出血大サービス価格だって、ちょっとだけ利益はある。


「マシロ、私は時々お前が、ベテラン商人やベテラン領主のように見えるぞ」


 父様は、私の決めたアローエクリーム工場の雇用者、販売価格、販売手法を聞いてそう言った。


「商会長、マシロお嬢さまの【創造】能力は、我々の常識を越えてゆくのです」


 営業部長のアレンさんは、いつもの平常運転で、理解できないことは全て【原初能力 創造】の力のせいだと言い、儲かるなら大歓迎だと喜んでくれた。




 ◇◇ エドモンド・オリエンテ ◇◇


 マシロが襲撃された5日後、私と商会の護衛リーダーであるバラモンと、マシロの護衛アステカの3人は、シュメル連合国の王宮内に在る、王宮騎士団から呼び出しを受けた。


「本当かどうかは分からないが、奴等はマセール王国の高位貴族から依頼されたと言っている。

 ターゲットは8歳くらいの女の子で、名前はミリアーノ。アメジストの瞳と濃紫の髪を持つ、オリエンテ商会の養女であると書かれた指示書を持っていた。

 上手く殺せたら追加で100万トール出すと依頼されたようだ」


「マセール王国・・・そうですか。これからはもっと警備を厳重にします」


 私は幼馴染でもある騎士団長に向かって、無表情のまま返事をした。


 ……ミリアーノ・・・Mか。まさか暗殺者まで送ってくるとは・・・


「エドモンド、ことはそれほど簡単ではない。マシロの護衛よ、お前はマシロについて本教会からどう指示を受けている?」


「はい、マシロ様を決して傷つけてはならないと・・・」


「それだけか? マシロが【ソードメイル】だということは王様もご存じだ。

 だが解せん。それだけで一国の王が本教会から呼び出しを受けるだろうか?」


 騎士団長は、探るような視線をアステカに向け問い質した。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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