110 宇宙の管理者とわたし(最終話)
最終話までお読みくださり、本当にありがとうございます。
なんとか完結まで辿り着くことができました。最終話は少し長くなっています。
ブックマーク等の応援もいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
新連載【三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~】も応援いただけると幸いです。
初めて乗った宇宙船は無機質で、白い壁にチカチカと点灯するボタンと、自分の頭くらいの大きさの窓がたくさんあって、温度は暑くもなく寒くもなく、でも温もりを感じない空間だった。
「いや、だからぁ、私、そんな約束してませんよ。心残りだったことでもすればいいと言われました」
シルバーじゃなくて白に近い色の宇宙服?でぴったりと全身を包んでいる宇宙の管理者に、私は堂々と胸を張って反論した。
いきなり宇宙船に拉致しておいて、第一声が「ナニヲシテイル! コノママデハ、ジンコウガハンブンニナルゾ!」って・・・何なのよいったい。
はあ? 予言者としての責務を果たしていない? 発展途上の星へ行って種を蒔けと命じただろう?
……命じた?
……そなたの能力はそのまま引き継げるって聞いたけど、命令なんて受けてないわよ? それに、種ならいっぱい撒いてるじゃない!
宇宙人だろうが宇宙の管理者だろうが、言い掛かりは止めて欲しい。
私は自分なりに精一杯やってきたつもりだ。だから、転生してからの苦労の日々を3分に纏めて言ってやったわ。
本当は30分でも語りつくせないけど、目の前の人?がポチッてスイッチを押したら、私のデーターが画面にダーッと表示されたから、要点だけを説明したわけ。
「フム、サンギョウヤ、キョウイクハススメタカ・・・シカシ、ヨゲンハドウシタ? マモナク、ダイキキンガクルゾ」
「はあ? 大飢饉? そんな予言は受けてないわよ!」
「ナニヲイウ、オマエガウラナッテ、ヨゲンスルノダ。シゴトヲシロ! コレハメイレイダ」
宇宙の管理者には感情が有るのか無いのか分からないけど、聞き取れる言葉がカタカナ表記っぽいのはなんで?
業務連絡するならもっと早く来てよ! そんな大きな災害があるなら、映像で教えてくれればいいじゃん。
……何を当たり前のように責任を押し付けてるのよ! 理不尽。
「天聖であるソワレさんに伝えたらいいでしょう? えっ? 管轄が違う? この宇宙船は星の寿命や星の変動を管理してる?」
「トニカク、イチネンハンゴ、アメガフラナイ。イカスモコロスモ、オマエシダイダ」
「私に人類の存亡を託すのは止めてー!」って大声で叫んだら、そこは拉致された聖地マーヤの外れだった。
……ちょっと、宇宙船は何処よ! なんで人の話を最後まで聞かないかなぁ!! プンプン。
はぁーっ・・・ここで腹を立てても仕方ないか・・・ふう。
たまには運動も必要だからと、馬車じゃなくて徒歩にしたせいで、本教会まで歩いて1時間はかかる。
混乱する頭を整理するには良かったかもしれないけど、今は年末よ、寒すぎ。
拉致されたのは夕方だったのに、もう日が昇り始めてるから早朝ね。
凄く短い時間に感じたけど、宇宙まで出たから結構時間が経過したのかも。
で、とぼとぼ歩いてホワイティ(株)本社に辿り着いたら、私を見た社員が全員走り寄ってきて泣き始めた。
「社長、生きて、生きて帰ってくださり、あ、ありがとうございます」
私の右手を取り、大袈裟に泣き崩れたのは副社長のアレンさんだ。
「ああぁぁ、マシロ様、良かった。心配したんですよー」と号泣するのは秘書のレイラだ。
「ごめんね、昨夜は宇宙の・・・いや、神に呼び出されて帰るのが朝になっちゃった」
あまりにも皆が大袈裟に泣くもんだから、ここはちゃんと謝っておこう。
確かに聖人である私が夜になっても帰らなかったら、皆は心配するわよね。
たまたま護衛のアステカが、私の忘れ物を孤児院に取りに戻っていた数分の間に拉致られたから、もしかして大騒ぎになっていたのかしら?
「神様に呼び出されたんですか? だからって、だからって1ヶ月も居なくなったら心配するのは当たり前ですマシロさまー」
レイラの後ろから、私の護衛のスピカがぽろぽろと涙を零しながら訴える。
「えぇっ? 1ヶ月ですって! それじゃあ今は1月末なの?」
びっくり。どうりで寒いはず。凄く短い時間に感じたのに・・・謎だわ。
あら? 今年はいつものように寒いけど、雪は降ってないのね・・・
たくさんの人に心配を掛けていると分かり、私はスピカと一緒に会社の馬車に乗って、急いで本教会へと戻る。
母様も父様も心配してるだろうなぁ・・・早く大学にも顔を出して、皆を安心させなきゃ。
教会に到着すると、セイントやセントを含めた皆に泣かれた。
天聖ソワレ様は、私と同じように行方不明になっていたけど、こっちはいつものことだと思われていたようだけど、私の方は誰かに誘拐された可能性が高いと、大陸中に捜索依頼が出されていたらしい。
「マシロ様、おかえりなさい。無事でよかった」
賢者トマスも涙を浮かべ、私の無事な姿を見て安堵の息を吐いた。
私はトマスと一緒にソワレ様の執務室に向かい、暫く2人で重要な会議をするからと人払いした。
そしてトマスに何があったのかを説明し、宇宙の管理者に言われた不吉な大飢饉について助言を求めた。
「真冬なのに雪が降らないということは、雪解け水による春の作付けが難しくなる可能性があるな」
「じゃあ、来年の夏に起こるであろう大飢饉は、今年からその前兆が現れているってことね。
どうしよう・・・今からできることは何で、最優先事項は何だろう?」
自分が1ヶ月も行方不明だったことも、突然の大飢饉宣告を聞いてしまったこともあり、私は軽いパニックになっていた。
「マシロ様、今こそ占ってみればいいのでは? 貴女はマーヤ・リーなのですから」
トマスは、こんな時でも優しく微笑んでアドバイスをくれる。
人生経験は私の方が長いけど、さすが賢者様だけあって頼もしい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学部長室の窓から聖都の街並みをぼんやりと眺めながら、ふと、10年前のことを思い出した。
あの時は大変だったけど、直ぐに世界会議を招集して大飢饉に備えたなぁ。
世界中で少雨でも育つ野菜やイモ類を植え、なんとかかんとか乗り切った。
原初能力を使った野菜を乾燥させる技術と、火山の近くに温室をたくさん作り、温泉水の熱を活用し冬の間もガンガン植物を育てた。
この時の大飢饉を切っ掛けに農学部も誕生し、総合大学は発展していった。
教育分野は改革も躍進も目覚ましく、身分より実力という風潮が広がっている。
ホワイティ(株)は、8社の100%出資子会社と7つの商会を傘下に置いている。
ホワイティ商会を立ち上げたメンバーの多くは、子会社の社長になったり、自分で会社を立ち上げ活躍している。
商業法は改正され、出資金が500万トールあれば誰でも会社を設立できるようになった。
……私の下で学んだ者たちは、スポンサーシップを実践してくれ、貧しい農村にも学びの機会が与えられるようになった。
ギョデク貴族共和国は完全に時代に取り残され、シュメル連合国は第三王子サイスが改革を断行し、今では平民が王宮で働くのは当たり前になっている。
マセール王国の王孫ミレアは、学園の理事長に就任し教育改革を続行中だ。
ダグラス王は引退し、王太子が国王になったが実質指揮を執っているのは、ミレアの弟である若き王太子シャレアである。
弟のショーヤは、自国の発展のためホワイティ(株)の観光事業部で勉強中だ。
トマスは総合大学での教育活動を中心に生活しているけど、各学部や教え子と一緒に会社を立ち上げ、産業革命を日々前進させている。
ガッツリ手を組んでいるヨンド共和国は大陸一の大国になり、貧しいギョデク貴族共和国からの流民を受け入れ始めた。
トマスの秘書になったノイエンは優秀で、大学の講師も兼任している。
何故かノイエンは、30歳を過ぎた今でも【マシロ様を崇める会】の会長をしている。
……私の応援より、早く結婚したらいいのに・・・
私は月に1度は占いをして、何かあれば各国の王に厳しい指示を出している。
大学はたまに講義を受け持つが、1年の半分は小説を書き、あとは商売の傍ら世界各地を回って問題を見付け、せっせと解決のための種を蒔いている。
作家ブルー・アースは、【王宮メイドは見た】という新刊を先日出版した。
さてと、今年の運勢は・・・ん、この星のカードと運命の輪のカードは何? マーヤ・リーデの使命が他の星への移動か結婚?
いやいや、いやいやいや、ないから。よし、見なかったことにしよう。
私は傍若無人な聖人だし、宇宙の理は意外と曖昧よ。うん。 【完】
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
これにて完結となります。
【三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~】という新作の連載を開始しました。ブックマークして応援いただけると嬉しいです。
ありがとうございました。感謝感謝です。




