11 常識知らず
第二章スタートしました。
父様と護衛のリーダーに【原初能力 空間】を発現したと知られた私は、首都シュメルまでの残りの道中、秘密を新に共有した父様の秘書メロルさんも含めた4人のメンバーで、今後のことを話し合った。
「お嬢様の出生が不明なまま、その特異過ぎる能力が知られるのは危険です」
「もちろん極秘が一番ですがメロル秘書、宝石を運搬していると誰にも気付かれずに移動できるんですよ。
お嬢さまの護衛だけなら、一般人に紛れて私と移動すれば安全です。
宝石の木箱はシュメル港で空にし、これまで通り運べば怪しむ者はいないでしょう。お嬢さまには年に数回、シュメル港との往復をお願いすることになりますが」
護衛のリーダーであるバラモン・オリエンテさん32歳は、父様の従弟だ。
昨年連合国騎士団副団長の職を辞し、商会の護衛リーダーを任されている。
オリエンテ家に多いこげ茶の瞳にこげ茶の髪で、細マッチョのワイルド系イケメンさんである。ちなみに【原初能力】持ちではない。
……う~ん、さすが大商会の親族は見目麗しい。お金持ちは才色兼備の嫁や婿を選び放題だもんなぁ。眼福、眼福。
「いや、最も大事なのはマシロだ。まだ言ってなかったがマシロは【ソードメイル】だ。これからマーヤ教会本部から護衛も来る。
マシロは【空間】と【創造】の2つの能力持ちで、今回の特異性から考えて、まだ発現していない【創造】能力は、正直、どのような未来をもたらすか想像もできない」
父様は私の方を見て、複雑な表情で首を横に振りハーッと深く息を吐いた。
なんだか申し訳ないわね。
……だけど、この星の常識なんて知らないもん。
……考えてみれば地球だって、電話・無線・テレビ・コンピューターとか、何処かの天才が開発したんだよね。皆さん・・・地球人だったのかな?
……原初能力で創造した製品に、汎用性を持たせるのって大変そうだ。
で、結局「私だってオリエンテ商会の娘なのに、このままじゃ何も役に立たない貰い子だって言われちゃうよ~」って泣いてみました。
はい、ちょっと本気で泣いたので、父様がびっくりしちゃって、「マシロはそんな心配はしなくていいんだ」って涙声で私を抱き締め、そして折れてくれた。
ただし、教会から来る護衛の許可が出たらとの条件付きだ。
あっという間に7歳の誕生日が過ぎ、8歳まであと2か月だ。
毎日がとても忙しいけど、私は頑張った。いやもう本当に頑張ったんだよ。
なにせこの1年半の私は、【手動ベルトコンベヤー】とか【ルーペ】とか【防塵マスク】の製作、【宝飾品のデザイン】その他で忙しかったんだもん。
オリエンテ商会の営業部長で【原初能力 創造】持ちのアレン(本当はアレンディ)さんが、宝飾部門の効率が悪いとか、デザインがマンネリ化してるって愚痴るから、これはチャンス到来!って、いろいろな図面まで描いてプレゼンしちゃったんだよね。
アレンさんは、私の描いた図面を見て「お嬢様が【創造】能力を発現されましたー!」って、慌てて父様に報告してしまったから、今更違うとも言えず、えへへと笑って誤魔化し、製作が決定してしまった。
しかも私には毎日、午前はお爺ちゃん先生の講義を受けて、午後は母様と楽器の練習を1時間するという日課がある。
ああ、習っているのは初心者用ハープのような形状で弦の数が15本の弦楽器だ。でも、どちらかというと、私が母様に曲を提供している感じ。
自業自得だけど、貴重な午後3時間の自由タイムは、アレンさんとのお仕事タイムになった。トホホ。
今日は久し振りのお休み。ひゃほー。
教会から来た護衛のアステカさん28歳をお供に、宝飾工房にお邪魔する。
アステカさんは、男性には珍しい【原初能力 聖 癒し】能力持ちで、シトリンの瞳に金髪、身長は168センチとやや小柄だけど、剣の腕は教会騎士団の中でもトップクラスだったらしい。もちろんイケメン青年だ。
私の護衛になったばかりの時、運搬の仕事なんて危険だからダメだとアステカさんは反対したし、マジックバッグがどんな代物か口頭では理解できなかった。
だから一計を案じ、私の能力は実際に見るのが一番ねと丸め込ん・・・説得し、シュメル港まで行って、宝石の木箱を5箱収納してみせた。
フフフ、顎が外れるくらい驚いていたわ。
マジックバッグを作ってから、いろいろ試行錯誤を繰り返してみたけど、まだ他者が使用することはできない。
だから3ヶ月に一回、護衛のアステカさんと一緒に、金持ちに見えない服装でシュメル港に行って宝石運搬の仕事をしている。
【創造】能力の方は、私のイメージがラノベの錬金術だったから、自分の夢を実現すべく宝石や金や銀の加工に絞って頑張ってみた。
しかし、現実は厳しい。
【創造】について書かれたどの本にも、金属加工系のことは記載がなかった。
でも、さざれ石の角は「まあるくなあれ、まあるくなあれ」って呪文を唱えながら撫で撫でしたら・・・まるくなった。あれれ?
だから今日は、宝飾工房に見学に行って、想像力で創造力を上げようかなって。息抜きと気分転換は、新しい発想に必要でしょう?
そうだわ、目的の宝飾工房にお土産を持って行かなきゃ。
カランと素朴な音の鳴るベル付きのドアを開けると、甘い匂いが鼻を刺激する。ここの焼き菓子はお高いだけあって凄く美味しいのよね。
職人さんは甘いもの好きが多いから、きっと喜んでくれるわ。
「お嬢ちゃん、あんた、本当はミリアーノって名前だろう? 瞳を偽装するなら、髪の色も変えなきゃな。フッ、可哀相だが死んでくれ」
焼き菓子入りの袋を抱え、上機嫌で店から出た途端、いきなり人相のめっちゃ悪い3人の男に絡まれた。
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