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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
時代をつくる者たち

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108 改革と躍進(1)

 2回目の試験以降、研修者の大多数は必死に講義を受け、真面目に勉強するようになった。

 残念ながら知力の足りない者や不真面目な者もおり、15日で脱落し自国に強制送還された。


 私は強制送還される全ての者に、国王宛の書簡を持たせた。

 勿論その手紙の中には、お前の国はやる気があるのかコラァ!って書いてある。

 研修参加者のこれまでの成績を全部記入し、是非王宮で貼り出してねという指示付きで【国別対抗成績表】を同封しておいた。


 


 研修が30日を経過した頃、各国の大臣とか王族とかがやって来て、研修者たちに鞭を打ち始めた。

 総合大学の学長が、以下の内容で各国の国王宛に送った書簡が効いたようだ。


① 今回の研修で最優秀となった国には、賢者トマス様が褒美として新しい産業のヒントを与える。

② 最下位となった国の卒業生は、自国の無能な上司や先輩の下で働きたくはないだろうから、人材確保が難しくなる可能性がある。

③ 国別対抗の最終成績は、各国の教会にて公表する。


 ほんの数年前まで国の推薦枠というものがあり、各国から毎年5人くらい勉強はできないけど爵位だけは高いバカ息子やバカ娘が入学していた。

 現在は推薦枠なんてないから、入学者が激減している国もある。

 まあ国によっては優秀じゃなくても爵位で仕事に就けるから、無理して総合大学に進学する必要はないのだろう。


 ……それでも国別対抗となると、プライドが許さないって国王は多いよね。


 ……今じゃ完全に、現役学生の方が研修者を下に見てるからねぇ・・・まあ平均点が20点以上違うんだから仕方ない。


 

 そもそも本来なら、各国の上位学校とかマセール学園高等部なんかの教師を研修に出すべきなんだよね。そうしたら自国で再教育ができるし。

 原初能力学部で講義を受けてる能力者だけは、なんとか頑張ってはいるけど、頭が固すぎて時代を進めるって考え方について来れないし・・・


 次の機会なんて与えないよ。私やトマスの教えを受けた学生が卒業していくから、学ぶ気があるなら学べばいいし。

 ギョデク共和国やシュメル連合国みたいに、当初の研修者が半数になっている国もある。


 残り1ヶ月になって、お金が勿体ないと考えた国が、脱落者と同人数の追加研修者を参加させるようになった。

 大学としては、お金を貰っているので定員オーバーしなければ問題ない。

 やっと勉強のできる優秀な役人が来たけど、自国では仕事が回らず困っているだろう。


 私とトマスは、研修日程の残り3日くらいから講義を受け持った。

 この頃になると、勉強することに慣れた優秀な者しか残っていないから、真剣に講義を聞いてノートを取る者ばかりで、現役学生も負けずに頑張るという相乗効果もあった。

 最終試験の平均点は現役学生が82点で、研修者も80点まで上げていた。



「ああ、国に帰りたくない。また無能な上司にこき使われるのは嫌だ」


「私も同じです。途中から研修に行けと言うくらいなら、最初から参加させて欲しかった。帰ったら山のように仕事が溜まっているはずです」


 てな話をしているのは、掲示板の前で最終成績表を見ている研修者たちだ。殆どの者が帰りたくないと溜息を吐いている。


「帰ったら辞表を出して、株式会社設立に向けて商売の勉強をしたいと思います。ホワイティ株式会社は、途中入社は募集してないんだろうか?」


「そうですよ、これからは、王宮で役人なんてしていたら、どんどん時代に取り残されてしまいます。私は今回の研修費を払ってでも辞職したい!」


 悲壮感漂う感じで自分の将来を憂いているのは、シュメル連合国とマセール王国の役人だ。

 元々大国で暮らしているから、商売に目を向けたくなる土台がある。


「帰りたくない、ああ、私はもっと学びたい。総合学科って何なんですかあれは! 革新的で学生たちが羨まし過ぎる。

 自国の原初能力部署で働いていたら、時代遅れになるじゃないですか。

 そ、そうだ! 今年総合大学を受験し直そう!」


 原初能力学部で瞳を輝かせていた研修者は、4年前に原初能力研究所を卒業していた旧ミレル帝国の出身者で、空間能力持ちだった。

 収納ボックスという新しい能力を見てしまい、すっかりのめり込んでいた。

 彼の他にも原初能力学部で学んだ者は、ほぼ全員が同じこと言っている。


 教会前の掲示板近くの屋台で、変装してお茶を飲みながらお菓子を食べていた私は、研修者の切実な心の叫びを聞きながら、ちょっと可哀想に思えてきた。

 確かに僅か3年で、大学は大きく様変わりし、講義内容は選択科目や学部を越えた学びなど、卒業生にとっては信じられない程に恵まれた環境になっている。


 今回の研修で、国を越えた感覚の共有や仲間意識も生まれ、最後まで残った研修者たちは、短い間ではあったが大きく成長できただろう。

 これからの未来を思うと、現役学生が羨ましくてたまらないのは理解できる。かといって、現在は責任ある仕事に就いている。


 ……う~ん、社会人枠を作ろうかな。試験は論文と面接くらいでいいや。大学卒者は2年コースで充分だろう。


 研修者たちが全員帰国し、全学生と私たち教師も遅めの春期休暇をとった。




 6月、いつもの日常が戻ってきた中、ホワイティ(株)は新展開を迎える。

 本日は、待ちに待った読書感想文と小説の締め切り日なのだ。

 大陸中の中位学校と高位学校で募集した読書感想文と、物語を書いてみようという一般公募で集まった原稿が、ホワイティ(株)の出版部に山のように届いている。


 これまで届いている分は、既に読んで優秀作を幾つか選んである。

 読書感想文の方は、初めての試みだから文章もぎこちないけど、自分が書いた小説の感想だと思うと心が弾んだ。

 一般公募の小説の方は、堅苦しい作品が大半だったけど、総合大学の学生が書いた小説の中に秀逸の作品を発見した。フハハハハ。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

最終話が近付いてきました。

110話目が最終話になる予定です。もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。

それと、間もなく新作の連載がスタートします。そちらも応援いただけると嬉しいです。

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