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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
時代をつくる者たち

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106 各国から来た役人(1)

 マセール王国の公式訪問と学園改革、そしてミリアーノの敵討ちをした私は、久し振りに聖地マーヤに戻り、総合大学の会議に顔を出した。


 ああ、そうそう悪女ディリーナは、聖地マーヤの本教会裁判で死刑が確定した。

 天聖であるソワレ様が、刑の執行はマセール王国の教会で行うと決められたので、仲間を殺された教会騎士の数人は、休暇を取ってマセール王国へ行き、教会前で民衆によって裁かれる大罪人に、石を投げることにしたとスピカに聞いた。


 日本で生きてきた私には、ちょっと違和感のある刑罰だけど、多くの人から怒りの感情を向けられ、石を投げつけられる罪人の姿は、犯罪の抑止力になっている。

 それでも反省しない罪人は多い。あの悪女は、最後まで反省などしないと思う。

 だけど仲間を失った教会騎士のように、自分の手で石をぶつければ怒りの感情は和らぎ、次に進めるのかもしれない。


 教会前の掲示板には、罪人の悪行が事細かに曝される。

 皇子妃と王孫の殺害、そして聖人に対する度重なる襲撃と教会騎士を殺した罪は、狂気の悪女として後世まで語り継がれるだろう。

 悪女の母は、自分の娘の悪行を揉み消していた罪で離縁され平民落ちした。


 父親であるアーレン公爵は、国務大臣の最後の仕事として、不正を働いていた高位貴族の爵位を1~2下げ、職を辞させて罰金を払わせた。

 また、自身も公爵から伯爵へと身分を下げ、領地を国に返して国務大臣の職を辞した。

 国王はアーレン公爵領の新しい領主として、第二皇子オルトを指名した。


 4大公爵家のうち公爵位を保つことができたのは1家だけで、2つの公爵領は王家直轄領となり、残った1家は侯爵に格下げされ領地も縮小された。

 

 ……これで少しは、弱体化していた王権は強化されただろう。





 さてと会議に意識を戻そう。

 3日前から始まった各国の役人の再教育だけど、学びに来たのに一部の国の役人の態度が悪いと、私と賢者トマスに皆から不満の声が上がった。

 役人の中には聖人を講師にしろと要求する愚か者もいるらしく、教授たちは呆れて国に帰れと言い放ったとか・・・


「へえ~、聖人に喧嘩を売るんだ。

 じゃあ、3日毎に試験をして、その結果を大学内及び本教会前広場の掲示板で発表しましょう。

 もちろん、国別の成績と個人の成績も晒し・・・ゴホン、成績を貼り出せば、もっと頑張って勉強すると思いますよ。


 折角ですから、個人総合1位と国対抗戦で最優秀になった国には、ホワイティ株式会社から褒賞としてプレゼントを出しましょう。

 なんでも、うちの会社の本店に来て、俺は貴族だ収納ボックスを売れと脅すような下品な者も居たと聞いています。


 この際ですから、ホワイティ株式会社の代表は聖人ホワイトだと公表しましょう。無知ゆえの行いかもしれませんから。

 我が社に無礼を働けば、国王宛に貴国の○○○○が本店を恐喝したので、貴国には収納ボックスを売りませんと通告してやればいい。フフフ、ハハハハ」


「ちょっとマシロ様、怖いですよ。その整った顔で毒を吐くのは止めてください」


 私の話の内容に同意して頷いていた賢者トマスは、黒く含み笑いする私の顔を見てドン引きする。

 彼は結構平和主義的な発言をするから、私の方が苛烈な聖人だと周囲から思われているみたいで、学長と各学部長、副学部長までもが同意するように小さく何度も頷く。


 ……その厳しさに期待しているくせになんでよ! なんか納得できない。



「でも世界会議で可決された内容は、文明や産業を発展させるため、優秀な若者の育成と指導者の再教育だったはずです。

 どうぞお願いしますと頼まれたから有料で引き受けたのに、このまま3ヶ月間も無能に居座り続けられると、学生たちにも悪影響が出そうです。

 総合大学の前身である高等大学卒の先輩だからと、厚顔無恥な態度なんです」


 経済学部の学部長が、特にシュメル連合国とギョデク共和国の役人の態度が悪くて、在学生にあれこれ雑用を命じたりして、学生から相談を受けていると言う。

 初日はマセール王国の役人が尤も態度が尊大だったけど、自国で高位貴族の大粛清が行われ、自分の家が降爵されたり学園改革が行われたと知り、すっかり大人しくなったそうだ。


「あら、面白いじゃない。学生にも同じ講義を受けさせ、同じ試験をしてもらいましょう。現役学生の1年と先輩、どちらが優秀なのか競争させればいいのです。

 もちろん、国別に学生と役人の成績を貼り出しますよ。

 試験後は、成績順で席の並び替えをしましょう。ああ、なんだか懐かしいわ」


 私はニコニコしながら、更なる毒を吐く。


「それは前の原初能力研究所の時に、マシロ様が行われた方法ですね。

 出身国の大きさや爵位の違いを笠に着ていた者は、すっかり大人しくなりましたから、有効な方法だと思います。

 昔の高等大学時代を懐かしむような輩は、今回の学びの人選として不適格です」


 原初能力学部の副学部長は、私が教授になって最初に行った改革を思い出し、有効な方法だと思うと後押ししてくれる。


「そうじゃな、ここは身分を競う場でもなく、卒業生が威張り散らす場でもない。

 真摯に学びたいと願う者が集う場であり、我々はそれに応えて教える教師じゃ。

 成績下位の者や欠点をとった役人は、学びの資格なしとして国に送り返せば良かろう。ああ、金が勿体ないのう」


 医学部の学部長は、今日も辛口だ。馬が合うよね私たち。

 今年に入って医療用の担架やテントを作る商売を、ヨンド共和国の商会と始めた医学部は、優秀な医者であり商人仲間でもある。

 ヨンド共和国と固く手を結んでいる賢人トマスも、アドバイザーとして協力しているらしい。


「まあ、学びの目的が聖人と懇意になりたいとか、株式会社で儲けたいとかいう奴等では、役人の仕事の効率向上など望めませんよね。

 中には役人でもない若い女性までいて、私の姿を見付けるとすり寄ってきて、勉強以外の質問ばかりするんですよ。正直、不快ですね。

 成績が全てではありませんが、真面目に学ばねば大恥をかくという作戦はアリです」


 結局最後には、賢者トマスも私の作戦に賛成した。

 翌朝、学長は大学内と教会前の掲示板で、研修者の試験実施と、現役学生との同一講座開始等についてのみ公示した。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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