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深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~  作者: 杵築しゅん
我が道

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100/110

100 甦る記憶

 言い争う声は次第に大きくなり、何事だろうかとミレアがドアを開けてしまった。


「ショーヤ、私よ、貴方の叔母ディリーナよ。貴方が心配で会いに来たの。

 ちょっと、私はエパレ公爵家三男トロイの妻よ。無礼者! 下がりなさい!」


 開かれたドアの向こうで、護衛たちに腕を掴まれ侵入を阻まれているのに、ディリーナという女性は強引に入室しようとする。


「あら、ディリーナ様、申し訳ありませんが、今は大切なお客様をお招きしているの。ショーヤに面会したいなら、お父様かお爺様に許可をお取りください」 


 ミレアは落ち着いた口調で、入室を拒否して年上の女性を窘める。


「貴女には関係ないわ。ショーヤは血の繋がった甥なの。ショーヤ、ねえ、これから私とお茶しましょう」


 甘ったるい声でショーヤを呼び、王孫であるミレアに敬意も払わない。

 ショーヤに視線を向けると、困惑というより嫌悪感まる出しで女と目を合わせないよう顔を背けている。


 ……凄い違和感。これだけ王孫に嫌われているのに、なんで偉そうなの?


「はーっ、ディリーナさま、貴女はショーヤやイツキノ叔父上との面会を国王から禁じられているはず。お引き取りください」


 ショーヤを庇うようにミレアの隣に立ったシャレアは、軽蔑するような視線を女に向け厳しく言い渡す。


「失礼ね・・・」と女が反論を始めたところで、私は激しい頭痛に襲われた。



「お母さま助けてー!」

「ミリアーノ、に、逃げて、2度と王都に戻ってはダメよ」



 ……だ、誰なの? 痛い、割れるように頭が痛い・・・ハアハア、何が、何が起こったの?


 急に頭を抱えて苦しみだした私に気付いたシャレアが「大丈夫ですか」と声を掛け、「どうされたのです姉さま」とショーヤは跪いて私の顔を覗きこむ。

 でも、痛みは増すばかりで息が苦しい。

 喉にナイフを突きつけられているようなシーンと、横腹にナイフが刺さった女性の姿が、予知と同じように映像として頭の中を流れていく。


「マシロ様、大丈夫ですか?」


 室内に居た護衛のスピカが、慌てて私の肩を抱くようにして声を掛ける。


「マシロ? 姉さまですって! まさかお前は・・・」


 ドアの所から無礼な女の声がして、私は痛む頭を抱えたまま、なんとか顔を少しだけ上げ女の顔を確認する。


 ……ん? あの醜い顔は・・・


 そこで私の意識は暗転した。




 目覚めた私はベッドの上で体を起こし、部屋の様子をゆっくりと確認する。

 護衛のスピカは部屋の入口で椅子に座って仮眠をとっており、私の寝ているベッドの直ぐ側の長椅子でショーヤが眠っていた。

 窓の外に視線を移すと、夜明けが近いのか薄っすらと明けようとする空が、カーテンの隙間から見えた。


 暖炉に火が入っているので室内は寒くないけど、2人とも毛布1枚では風邪を引いてしまうのではないかと心配になった。

 そっと起き上がった私は、予備に置いてあった毛布をショーヤに重ね掛けし、スピカの肩を軽く叩いて起こした。


「シーッ、ショーヤが寝てるわ。隣の部屋に移動しましょう。お茶を頼むわ」


 人差し指を口に当て、小声でスピカに指示をだす。

 王宮滞在中、二間続きの客室を使っていた私は、スピカと一緒に静かに隣室へと移動する。


「マシロ様、体調はどうですか? 頭痛は治まりましたか? お茶の途中で倒れられたのですが、覚えておられますか?

 王宮医の診断では、過労の可能性が高いのではと言っていましたが」


 凄ーく心配そうな表情のスピカが、香りのよいお茶を淹れながら問う。


「心配かけたわねスピカ。酷い頭痛が始まって、あの女の顔を見たところで意識を失ったのね。もう大丈夫みたい。

 ところで、あの女は、本当にショーヤの叔母だったの?」 


「はい、ですが・・・常識では考えられない行動の数々に、第三皇子イツキノ様や王様、ご実家のアーレン公爵家も頭を悩ませているようです。

 追放された元王太子妃と仲が良かったので、これまで王宮には出入り自由でしたが、現在は立ち入りが制限されているようです。

 今回は夫との離婚協議で、法務部から呼び出しを受けていたそうです」


 そこから私は、お茶を飲みながらスピカが調査したディリーナという女の素性と素行について詳しく報告を受け、間違いないと確信した。


 王族の間では、第三皇子イツキノに執着する頭のおかしい女と認識されており、要注意人物ではあるが、実家も婚家も公爵家で、面会禁止くらいの措置に留めておいたらしい。

 ショーヤはあの女が苦手で、私の可愛いショーヤと言いながら、腕や太腿をあざができる程につねられたことがあるらしい。


「フッ、相変わらずダグラス王は甘いわね。

 どうやら、この体の真の主であるミリアーノは、あの女のせいで亡くなったようだわ。そして・・・ミリアーノの母親は、あの女に刺されて亡くなったみたい。

 頭が割れるように痛かったのは、ミリアーノの記憶が蘇ったからだわ」


「はい? 実の姉と姪を殺したのですか?」


 スピカは信じられないと首を振りながら、その瞳に怒りを宿していく。


「スピカが大ケガを負った襲撃も、その前の襲撃も、全てあの女の指示よ。

 あの時は、教会騎士も亡くなったし、父様も大ケガをしたわ。

 フフフ、ようやく犯人に辿り着いたのね。

 姉の夫を略奪しようと企み、命まで奪うような性悪女は退治しなきゃね」


 ミリアーノの母親が殺されるシーンを思い出した私は、ミリアーノに代わって真実を白日の下に晒す決心をした。

 神が、いえ、聖人の力が夢の中で真実を見せたということは、決着をつけてから聖地に帰れってことよね。


 ……3歳のミリアーノが泣いてる。怖い、助けてって。母様を見付けて欲しいって。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から最終章がスタートします。

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