10 秘密の共有
インカーヤ島での宝石採取体験は、大満足で大収穫だった。
ただ、採掘場の少し先に在る遺跡といわれている場所に寄った時、壁に描かれたカラフルな絵の中に、宇宙の管理者らしき絵や、葉巻型っぽい乗り物のような絵を見付け特大の溜め息が出た。
……まあいいや。私だって異星人だもん。でも、私は乗り物じゃなく深遠に落ちたんだけど・・・
帰路は風向きも良く船旅は快適で、無事シュメル港に到着した。
到着後直ぐに、採取された大きな原石たちは別の木箱に移され、盗賊に盗まれないようオリエンテ商会の護衛さんたちに守られながら、首都シュメルに向かって運ばれていく。
盗賊という物騒な話を聞いてしまったが、日本がまあまあ平和だっただけで、地球でも資源を巡る争いで海賊だって居たし、戦争だってしていた。
……人間の欲に、時代や国や星は関係ないのかもしれない。
で、現在まさかの交戦中。本当に盗賊がきたー! キャーッ!!
うちの戦力は護衛20人で、盗賊も20人くらいだって声が聞こえてきた。
今回の荷が宝石だと知っているようだから、それなりに調べて数を揃えたんだろう。大丈夫かな? 大丈夫だよね。
先頭の馬車には父様と、親友で秘書のメロルさん38歳が乗っている。
2番目の馬車は特別仕様の荷馬車で、宝石の入った木箱が5箱と、括り付けのベッドにもなる長椅子、そして幼女マシロが乗っている。
3番目は普通の荷馬車で、海産物やインカーヤ島の特産品である塩が積まれている。4番目は客車用の馬車で、護衛が8人乗っている。
他の護衛12人は、馬に乗って一行を護るように配置されていた。
剣と剣がカンキンとぶつかり合う音が聴こえて、父様は大丈夫だろうかと心配になる。
私の乗っている馬車は特別仕様で、小さな窓には鉄格子が嵌めてあり、扉は外と中からかんぬきで閉鎖してある。
どうして幼女が一人なのかって? いや、だって、インカーヤ島で可愛い革の丈夫そうなハンドバッグを買ったから、当然船の中でマジックバッグ作りに挑戦したのよ。
その性能を確かめるためには、人目がなく、入れる荷物が必要じゃない?
……凄く重い宝石の木箱が収納できれば、私はオリエンテ商会にとって役立つ子になれる。何事も実験と検証は大事。
だから私は自分の身の安全のため、盗賊の剣くらいじゃ破壊されず頑丈で、侵入もされない馬車に乗りたいと、ごねた。今回は泣き脅しじゃないよ。
ちょっとだけ瞳はうるうるしてたけど「父様の馬車だと、要人が乗ってるって分かるから怖いの」ってね。
怒声が飛び交う中、盗賊の一味と思われる男が、私の乗っている馬車の窓の鉄格子に両手をかけ中を覗き込んだ。
そして「お頭、中に人はいません。宝石の箱もありません。中は空です! 騙されました!」と悔しそうに叫んで、私の馬車から離れていった。
……いや居るよ。括り付けの長椅子の下に。大人じゃ無理だけど幼女ならギリギリ潜り込める空間だもん。へへへ。
「撤退だ! ひけー!」と盗賊のお頭らしき者の声が響く。
「よし!」と、私は長椅子の下でガッツポーズをとった。
2分後、「マシロ居るかー、大丈夫かー!」って父様の叫び声が聞こえたので、もぞもぞ腹ばいで長椅子の下から這い出る。
格子窓からは「お嬢様ー、ご無事ですかー!」と叫ぶ護衛のリーダーの声がして、「商会長、た、大変です!」という声が続いた。
……やだん、まだ木箱をマジックバッグから取り出してなかったのに。
……まあ、見られてしまっちゃー仕方ない。ここは腹を括ろう。
フーッと深く息を吐き、私は内側のかんぬきを「うんしょ」と力を入れて外し扉を開いた。
そして血の気を失った感じの父様の胸に向かって、「とうさまー」って全開の笑顔でダイブ。
ムフフ、イケおじ父様にばっちり抱きしめてもらっちゃった。
私の無事を確認した父様は馬車の中に視線を向け、10秒は固まってたかな。
そりゃ大事な木箱が無くなっているんだから、当然の反応だわ。
そこで私は父様の耳元で、「秘密のお話があるから、父様と護衛のリーダーだけ馬車に乗って扉を閉めてね」と囁いた。
空になった馬車の中で、未だに信じられないという顔をして立っている2人に、私は手招きして括り付けの長椅子に座ってもらう。
「父様、私【原初能力 空間】が使えるようになったみたい。
だけど、私の能力のことは秘密にした方がいいんじゃないかって思うの。
ああ、積み荷の木箱は全部無事だから安心してね。
今から木箱を出すから、絶対に大声をだして驚かないでね」
驚かないでと念を押し「出でよ木箱」と、それらしく呪文みたいなものを唱えて、お気に入りの革のバッグを両手で持って前に出す。
すると、木箱がポン、またポン、いや、ドスンと音をたてて次々と出てくる。
ありゃ、木箱を出す度に馬車が揺れるわ。バッグの向きを下にしなきゃ。
なんだかマジックショーみたいじゃないって思っちゃったから、全部取り出した後で、2人の方を向いて右足を少し前に出し、左手を胸の前に置き、右手をぐるりと大きく回し「じゃじゃーん」って感じで木箱の方に右手を向けてみた。
「な、なんだこりゃー!」と、護衛のリーダは大声で叫ぶ。
「し、信じられない」と、父様はちょっと大きな声で言いながら3歩下がった。
「シーっ、秘密だって!」
私は2人を睨みながら、右人差し指を素早く口にあてた。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
次話から第二章がスタートします。
【キャラ交換で大商人を目指します】という少年主人公の作品も書いています。よろしければ、読んでみてください。




