復讐の始まり
「私はその犯人の顔を見たんだ。誠治君。」
「それって……。」
「警察の人にも言った。
でも、うまく説明できなくてしかもその人が犯人なんてその時の私にはまだわからなかった。
その時はただ優香が死んだってことに錯乱していてそんなことまで気に回らなかった。
だから、その時も誰か知らない人を見なかったかと聞かれたから、そう素直に答えただけだったの。
でも、後で思い返してみるとあの人は犯人だったと思う。
いろいろな記事を調べていてわかったんだけれど、あの時あの場所にいたのは学校関係者以外いなかったらしいの。事実としてわかっていることはね。
だから、業者とかはいないはずだった。それに加えて先生でもなかった。だから、そこにいたのは犯人だけなのよ。」
「それはわかったんだけど、なんで多田さんがわかったことが警察にわからなかったのか。
それはないと思うけど。ちゃんと警察の人も防犯カメラとかチェックして、それはないとおもったんじゃないか。」
「それは私が錯乱状態にあったからじゃないかな。信憑性がないとか。」
そんなに信憑性がある話でもないけど、それで見たきになるか、普通。自分に責任を感じて犯人を見つけ出さなきゃと思ったとか。
「というか、誠治君は私の話信じてる?」
と多田さんが聞いてきた。
正直答えようがないけど、ここで信じていないとかいったらこれ以上話を聞くことができないと思ったので、とりあえず「信じてるわけじゃないけどあり得る話だとは思っている。」
「じゃあ、これを見て何か気づく?」
と写真を差し出してきた。その写真には驚くべきことが映し出されていた。
「これって、優香先輩の写真だよね。なんで彼女がこんな犯罪みたいな状況になってるの?」
それには彼女と何やら怪しげなサングラスをかけた男が写し出されていたのだ。
「それはわからない。事件と関係性があるのかすらわからない。でも、優香が何かしらの事件に巻き込目れていたとすれば、一つの可能性が上がる。」
「口封じか。」
「うん。それにこのサングラスの人私があの時、見た男に何となく似ているの。」
「ということは、犯人ってこと。」
僕はそう聞いた。正直、心の中ではもうこの話を続けるのが嫌になってきた。それは多田さんにも言っていなかったことがあったからだ。
あのサングラスをかけていた男それは僕の父親だったからだ。母と父は喧嘩別れして、僕が小学二年生の時に離婚してしまったのでもうそれ以来会っていない。だからこそ、優香先輩の死に父親がかかわってると思うと、もう話を続ける気にはならなかったのだ。
何してるんだよ、お父さん。
もう俺にはかかわるなって言って出ていったじゃないか。
本当は僕は会いたかったのに、なんでお父さんはぼくからお父さんをうばって大事な人までうばってしまったんだ。
それと同時に僕は確信した。多田さんはうそをついていないと、なぜなら、この男はでっちあげのものではないと僕の記憶が証明したからだ。
「大丈夫?なんか顔色悪いけど。」
「ごめん、大丈夫じゃない。ちょっとショックで。」
「そうだよね。私も最近これを家で見つけたときびっくりしたし。」
「多田さんの家にあったの。」
「たぶん、優香が送ってきたのを私のお母さんが私のところに置いておいたんだと思う。」
「なんで、優香先輩は多田さんのところにその写真を送ってきたのかな。」
僕は一番その時多田さんのことを不審に思った。そんな写真を多田さんに送ってくるなんて誰がどう見てもおかしいからだ。
「優香が私に送ってきた理由は、優香は学校で会おうとしてたんじゃないかな。ある程度の覚悟をして犯人に。それで最後に私にその写真を送ってきた。」
そうじゃない。と僕はそう思った。
それはない。だって、それなら多田さんにメールで送れば済むことだからだ。それに加えてお金もかけることないし、それにほかの友達にも同時に送ることだってできる。
なのに、あえて郵送という手段を用いるのはおかしいと思った。
「誠治君、今、優香がなんで郵送で送ってきたのか疑問に思ったでしょう。でも、その理由は送るのは彼女にもしもの時があったら、だと思うの。私の部屋にあったその郵便差出人は私でしかも郵便切手が不足してたの。」
「それって……。」
僕はその方法なら聞いたことがあった。しかも優香先輩から。
「うん、まず郵便局に封筒を切手の料金不足で出しておく。
しかも、差出人を自分の送りたい相手を書いてしかもそれを偽名にして。
もし自分がいなくなれば、その封筒は明らかに母親にとって怪しいものとなる。
すると、優香の母親は確実に料金を払って受け取るなんてことはせずに送り返すはず。
すると、送り返す相手は私の家になる。
もちろん、私の両親は心当たりはないから私に渡そうとするが、その時おそらく私は心を閉ざしているはずって優香は思ったのね。
それくらい親しい友達だったから。そして、もし優香になにもなかったら、優香はそのまま送られてきた手紙を受け取れば、何も問題がないことになるからね。」
確かにそれなら、多田さんの言っている話はとてもまともだと思った。
ただ、これまでの話の中で、多田さんが一度も説明してくれていなかった部分がある。
それは、喧嘩のことだ。
「今日ももう遅いし最後にもう一つだけ質問していい?」
「うん、いいよ。何でも聞いて。その代わり私も言いたいことはあるからそのあとに言わせてね。」
彼女の目は真剣そのものだった。彼女も深い後悔を抱えて生きてきたのだと改めて感じた。
彼女の話もきちんと聞いてきちんと受け止めようとそう思った。
「じゃあ、僕から聞かせてもらうね。優香先輩となんで喧嘩したんだ?」
「それ、話してなかったね。ごめん。実は私は君の話を聞いて馬鹿にしたんだ。君のこと。そしたら、優香はマジで怒った。ガチギレそのものだった。私もほんのは冗談のつもりだったから、正直逆ギレなのはわかってたんだけど、怒った。あの時、優香はもう絶交よとまで言った。優香は多分君のことが好きだったんだよ、誠治君。」
僕はそのことにうすうす気づいていた。優香先輩は僕のことを好きだった。僕も優香先輩のことを好きだった。両想いだったのに恋人になれなかった。なって、今まで一緒にいたらどんなに楽しかっただろう。
「今さら、そんなことを聞かされてもしょうがないですよ、多田さん。」
「そうだよね。ごめん。でも、喧嘩の理由はそれだったから。」
「じゃあ、僕もう行きますね。」
と僕は言った。決してさっき多田さんが言った約束を忘れていたわけではない。でも、多田さんの言葉を聞いてしまうとなんだか僕は苦しむような気がした。一生の悩みをほじくり返されるような気がした。
「待って、一つだけ言いたいことがあるんだけど。あなたは聞きたくないかもだけど。」
「じゃあ、聞かないです。」
僕は冷たくそう言い放った。今まで生きてきた中で一番突き放すような感じで。
「誠治君、あなたは何も悪くないからね。あなたはその日たまたま約束しただけ。優香のお母さんには何か言われたかもしれないけどそれはお母さんもただ苦しんでたから。だから、あなたは絶対に自分のことを責めちゃ、ダメ。あなたは悪くない。私はそう思っているから。」
僕はその言い方がとても頭にきた。
自分だって自分を責めてるじゃないか。それはいいのかと問い詰めたかった。
そして、僕は店を出ようとしていたが、振り向いた。多田さんを問い詰めるために。
でも、できなかった。多田さんはとても真剣な顔で、でもなんだか泣きそうな顔でこっちのほうを見ていたからだ。
「そんな顔されたら、文句言えないじゃん。」
と振り向いてそのまま言った。
「ごめんね。自分のこと棚に上げて、って思ってるよね。でも、君には自分の責めてほしくない。これは本当のことだから。」
僕は考え直した。この人は自分のことを棚に上げてそう言っているのではない。彼女も僕が一、二年前から少しずつ感じていたことに気づき始めているのだということに。
僕は、自分は本当は悪くないと最近思い始めてきていたのだ。
外面は自分が悪いように装っているけど、それは自分を守るための回避行動に過ぎないということに。
自分が悪いと信じ込んでさえいれば、自分には優香先輩の死を悲しむ資格はないとそう思える、だから一種の現実逃避ができてしまうのだ。
そんなことを優香先輩は望んでるはずがないのに。
「誠治君、私たち同じことに気づいたみたいだね。」
「はい、でも正直に言って気づきたくはなかったです。」
「本当に自分に納得のできる答えを出したいのなら、一つだけ方法があるよ。」
多田さんは、まるでそのことを言うためだけに僕に話しかけてきたように思えた。そして、僕自身もそのために多田さんと話そうとする気になったのだ。
「一緒に犯人を見つけよう。」
こうして多田さんと僕の復讐は始まるのだった。