多田さんの打ち明け話2
―多田さんの打ち明け話が始まった。
私はあの時、高校一年生だったことはさっき話したからわかるよね。
高校一年生の夏休み、私は部活でテニスの練習をしていた。
それが何の関係があるかって、それが関係大ありなんだよ。
あの日も私はテニスの練習をしていたの。
結構夢中になってたんだけれど、炎が上がったときはすぐに気づいた。
焦げ臭くて、しかも急にポンって音が鳴ったんだ。
だから、気づけた。私たちはそれによって助かったのかもしれない。
私たちが避難してすぐにそばにあった校庭の窓ガラスとかいろいろなものが落ちてきたんだ。
最初ので気づけてなかったら、かなり危なかった。多分無事では済まなかっただろうね。
その時点では私たちの誰もが自分のことしか考えることができなかった。
近くにいる部活友達のことくらいなら気に掛けることはできた。でも、校舎のなかにいる人たちのことなんて考えてもいなかった。
誰かしら考えていても、いいのにそんな余裕、誰も持ち合わせてはいなかった。
弁解になるようで悪いんだけど、私は本当に優香が校舎にいることを知らなかった。
もし知っていれば、助けられたのに……
ごめん、気持ちに整理をつけたはずだったんだけど、やっぱりあの時のことを考えると後悔しか残らない。
私は何も悪くない、周りの人はそう言ってくれたけど、私はそうは思えない。
なんかやれたんじゃないか、せめて、優香と仲直りしていれば、私に声をかけてくれたんじゃないかって。―
多田さんはそう涙ながらに話してくれた。
彼女の気持ちは痛いほどわかる。
僕は彼女と反対の意味で苦しんできた。
火災が起きていたその瞬間のことを僕は知らない、気づくことすらできるはずがなかった。
でも、僕は多田さんと違って彼女が学校にいることを知っていた、予測できた。
しかも、彼女と約束をしたのは僕で、僕があの時間、あの場所で待ち合わせをしなければ、彼女は死ななかったはずなのだ。
助けられた多田さんと死の元凶になった僕、どっちが悪いなんてわかりきってる。
それは僕だ。
「ごめんなさい、感情的になっちゃった。
それで、私はあなたが来たのを見たのよ。
あなたは自転車に乗ってきた。
私ははじめ、ただの野次馬かと思っていたけれど、あなたが必死に消防士に質問をしていたのを見て、関係者だと気づいた。そこで、私の耳には信じられないことが届いたの。
優香先輩という言葉が……。だから、声をかけたのあなたに。でも、君の耳に私の言葉は届いていなかった。そして私は声をかける勇気をなくしたの。
自分にも友達の言葉は届いていなかったから。」
あの時だと僕は思った。
なんか声がした、と感じたとき、あの時の声は多田さんの声だったんだ。
女子高生の知り合いなんて優香先輩のほかにいなかったから、まさかほかの人が話しかけてきたなんて思わなかったのだ。
「ごめん、あの時声が聞こえたようなきがしたけれど、気のせいかと思ったんだ。だって優香先輩はもういないって言われた後だったし、幻聴かと思っていた。」
「いいの、それは。あの時は、あなたは私のことよくしらなかったのだし。」
「そこまでは僕も知っている話だけれど、君が僕に本当に打ち明けたかったことって何なんだい。」
と僕はせかすように言った。彼女が今悔やんでることとか悪いと思ってることを聞くのも大事だ。
自分と同じ思いでいる人がいるということを知ることができるから、でも僕の本当の気持ちは優香先輩の死の真実を知りたい。
優香先輩を殺した犯人を突き止めたい。そして、なんであんなことをしたのか聞きたい。いや、
復讐したい。
確かに優香先輩と僕との関係は一夏だけのものだった。
でも、僕は彼女のことを大事に思っていた。尊敬していた。
だから、そんなことをした犯人が許せない。
「私はその犯人の顔を見たんだ。誠治君。」