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花言葉  作者: またたくま
4/12

追憶

もう中二の夏休みも終わりだな。

僕はそんなことを考えながら、絵を描いて、今日も優香先輩を待っていた。

「今日の優香先輩遅いな。」

 と僕は感じていた。今まで遅くなったことも約束の日以外に会ったこともなかったので優香先輩の連絡先など、僕は知らなかった。

 そして、時間はどんどん過ぎていく。

 約束の時間から二時間もたったので僕は一度、家に戻ることにした。

 そして、母が見ていたニュースを見て愕然とした。

 そこには、あの○○高校で放火が発生し課外と部活に来ていた高校生たちがなくなったとあったのだ。

 

そして、ピピピという音が鳴った。

携帯の音だ。見ると知らない番号だったが、一種の胸騒ぎのようなものがして、電話に出ると、母のようなおばさんのこえが聞こえてきた。

「もしもし、誠治君ですか。優香あなたと一緒にいる?」

「すみません。あなた誰ですか。」

「私は優香の母です。優香、学校に行ってから、あなたと会いに行くって言ってたけど、あなたと一緒にいる?」

「いないです。えっまさか。」

  優香先輩の母が泣き出す声が聞こえた。

「もしもし、僕とりあえず、○○高校に行ってみますね。」

 といっても、返事はなかったので、とにかく急ごうと思い、身一つで駆け出した。


 まさか、あの火事に巻き込まれていないよな。

そもそもなんで優香先輩は学校に行ったんだ。

優香先輩、部活も入ってないし、一年生だから、まだ課外もないし。なんで、優香先輩。

 そして、僕は一つの結論に至る。僕のための辞書だと。


僕は今まで古語辞典というのを持っていなかった。

学校でもまだ必要ない」といわれていたし、古語の意味は事前にプリントで配られていたからだ。

だから、僕は先輩に古文を教えてもらうときに必要な古語辞典を貸してほしいと頼んだのだ。

 僕のせいで学校に優香先輩は行った。

どうかまだ着いてないで、どうかもう出発していて。

そんなことはあり得ないと思っている。だって、約束の時間の二時間半後だから。彼女がそんな約束を破るわけはないから。

 だから、どうか。もし巻き込まれていたとしても、死なないで。先輩。

 そして、僕は○○高校に着いた。するとそこは大惨事だった。

 なんと表現していいかわからない異臭ととにかくどす黒い黒煙が立ち込めていた。

 ただ、もう火災は収まりつつあるようだった。

 僕は半ば希望を失いそうになりながらも、近くにいた消防士の人に声をかけた。

「あの、武田 優香さんっていう人を探しているんですけれど。助かった人でどこにいますか。」

「その人って、この学校に絶対にいた。」

「はい。絶対にいたと思います。」

「その根拠は。」

「僕と彼女待ち合わせをしてて、でも来なくて。彼女の母が彼女が学校にいるっていってたから、確実です。」

「そのお母さんって来るかわかる?」

「多分来ると思いますけど、彼女たちがすんでいるところはここからだいぶ遠いので、車で時間がかかると思います。」

「そうか。じゃあ、だいぶつらいと思うけど。君には先に伝えておくね。多分彼女の遺体は見つからない。」

「えっ、助かった人っていなかったんですか。」

 僕は半泣きになりながら、そのことを聞いた。

 

 彼女に生きていてほしい、それだけを願い続けていた僕にとってはそれだけで相当な絶望だったのだ。

「いや、助かった人はいるよ。」

「じゃあ、僕の言った人も、まだ生きてるんじゃ。」

「残念ながら、それはないと僕は思う。」

「あなたたちは人を助けることが使命なのではないのですか。」

 と僕はそう言った。そんなことを言いたかったわけではない。でも、僕は正直混乱していて、ショックでなんだかやりきれない気持ちになってそう責めてしまった。

 

「すまない、でも、これはただの火災ではない。放火なんだ。だから、いろいろなところに火がかけられていて、僕たちが駆けつけるころにはだいぶ燃えてしまっていたんだ。だから、僕たちが救えたのは外で部活をしていた人たちだけだったんだ。」

「そのなかに優香先輩もいたんじゃ。」

「一応確認するけど、そんな名前の人いなかった気がするよ。」

「なんで・・・なんで・・・」

 そのあと、一回だけ名前を呼ばれたような気がしたけれど、多分気のせいだろう、しかも優香先輩のような女子高生の声が。

 でも、それは幻聴だ。彼女にもう一度会いたい。その気持ちが起こさせた幻聴なのだ。


 そして、消防士の彼は僕をほっておいてくれた。

 消防士の経験で彼は多分わかっていたのだろう。火災で死んだ人の家族や友人に言葉は届かない。

 急なこと過ぎて受け入れることができないのだ。だから、僕は消防士の言葉を聞くことができない。

 ショックなのに加えて救えることもできたんじゃないかとそう思ってしまうのだ。

 そして、その事件は犯人も分からずに六年の月日が流れる。

 そして、僕の心にはまたその時の感情が再燃する。そう、彼女の手によって。

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