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花言葉  作者: またたくま
3/12

多田さんの打ち明け話

「どこ行くの。」

と彼女は聞いた。

 明らかに困惑するような感じで、それもそのはずだ。

 僕は近くにある喫茶店や居酒屋などをすべて無視して駅のほうに向かっていたのだ。

「駅だよ。」

「なんで?話をするっていう約束だったじゃない?」

「だって、初めて会った人にそんなこというなんてただの建前でしょ。あそこから抜け出して帰りたかっただけじゃなかったの。」

「君、あの漫画家だよね。少し前からはやり始めてる。」

 びっくりした、そんなことを知っている同年代は大地だけだと思ってたからだ。

「なんで、知ってるの。」

と僕は知られたくないことを知られたので、少し棘のある口調でそう言った。

本当に知られたくなかったのだ。

だって、あの漫画は自分にとっては思い出を残しておくための大切な創作物だったから。

 

 彼女が言っている漫画というのは僕が高校生の時に描いて、出版社で採用されたあの漫画のことだ。

 その漫画は少し創作と現実が混ざっている。

 現実というのは、六年前にあったあの女子高生との出会いと別れのことだ。

 その思い出を僕は何かの形にしたいと思った。

 ひと夏のことだったけど、僕があの人に恋をしていたことを残しておきたくて。幸い、あの人が死んだのは僕のせいだということにその時の僕はまだ気づいていなかった。

 だから、かけたのだ。今はもうあの漫画をこの世から消し去りたいと思っている。


   だって、僕のせいだから。


「ねえ、大丈夫?私の説明さっきから全然聞いてないでしょ。だから、私は大地君から聞いたの。」

「へ?」

 まさか、あの大地が僕との約束を今まで一度も破ったことがない大地がそんなことをするとは思わなかった。

「大地君をあまり責めないであげてね。彼は悪くないの。彼の秘密を私が握っていて、それをばらさない代わりに教えてもらっただけだから。」

「ちょっと待って、ということは君が大地にそういうことがあるのって聞いたわけだよな。

それはなんでだよ。」

「武田 優香。この人が君の漫画のもでるでしょ。」

 僕は一瞬のうちに息が止まったようなきがした。僕が六年前に会ったあの女子高生の名前がその名前だったからだ。

「私もあの事件の関係者なの。」

「君は何を知っているんだい。」

「何も知らない。だけど、必ずあなたの味方だよ。」

「急に現れてきて、味方だよって信じられるわけないでしょう。しかも、その人は僕の消したい秘密を知っているとなるとなおさら。それに加えて僕の親友まで抱き込んで情報を仕入れるなんてそれで信じられるとおもってるの?」

「わかってる。でも、まずは私の話を聞いて。私の名前は多田 優亜。武田優香の一番の親友だった。ここに学生証があるからみればわかるでしょう。彼女と同じ年に入学した。これが、同級生の証明。同級生だからって親友と信じて、と言われても戸惑うかもしれないけど、信じて。彼女のことについてなんでも質問していいから。それで、知り合いかどうかはわかるでしょう。」

「じゃあ、まず一つ目。なんで君は僕と一緒の学年なんだ?」

 と僕は純粋に疑問に思ったことを質問した。優香先輩の学年はあの時、高1、つまり彼女と僕との間には確実に二年の年の差があったはずなのだ。

「それは単純に私が頭が悪いから。二浪しちゃったんだ。」

 そうか、優香先輩も僕に勉強を教えてくれているときに言ってたっけ、彼女には少しできの悪くて、勉強を教えている友達がいるって。

「じゃあ、質問二つ目。優香先輩の誕生日は?」

 これは知ってたら親友とみとめざるおえない。だって、大地だって知らないことだから聞く手段はないのだ。

「十二月二十五日。クリスマスの日だよね。」

 この人は優香先輩のことを知っていると確信した。元々、最初の感じはよかったし、秘密を知られたのだって、大地のせいだ。

 しかも、もしかしたらあの事件のことを何か知っているとなったら、この人と知り合いになっておくのも悪くないなと僕は感じた。

「多田さんは本当に優香先輩の知り合いだったんですね。疑ったのはごめんなさい。立ち話も何なので、どっかお店に入りませんか。」

「まるで、君の提案のように言ってるけど、私はもともとそのつもりだったんだからね。」

「はいはい、ごめんなさい。」

 と僕は言ってスマホをいじり、近くの喫茶店を調べて、ここでいいかと多田さんにたずねると、どこでもいいという返事が返ってきたので、その喫茶店に向かって歩き始めた。

「ところで、君は優香の教え子だった子?」

「それがないとこの話成り立たないよね。今頃、それ聞くのは少しあり得ないと思う。」

 と僕は言った。本気でそう思ったし、この人には少し話してもらわなくては困ることもある。だから、強気で行こうと思ったのだ。

「そんな強気で来なくても、ただの確認よ。確認。これから結構プライベートで、知られてはいけないことも話すから、確認をしておかないと、もし違ったときにいろいろとやばいから。」

「わかった。強気で言ったのはごめん。そんな確認までするんだったら、全部話してもらうよ。」

「そのつもりで、今日の合コンもセットしてもらったから安心して。」

「そこも多田さんの策略だったのかよ。」

 とそんなことを言い合っている間に、さっき調べた喫茶店に着いた。

「さてと、まずは私が知ってることを全部話すね。」

 多田さんのあの日の打ち明け話が始まった。

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