表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/126

98.“血塗れの大蛇”①

イアンと“カラス”は見回りの賊を排除しながら、奥へ奥へと歩を進めていた。

ただ、洞窟の構造は複雑に入り組み、地下深くに伸びている。

突入してからすでに一時間以上は経過しており、イアンは焦りと苛立ちを隠せないでいた。

「おい、本当にこっちで合ってるのか?」

「ここまでの道のりは一本道だった。隠し通路がある様子もない。少なくとも最深部へは近付いているはずだ」

「にしても、ダラダラし過ぎだろ」

「これでも急いでいる方だ。“血塗れの大蛇”の構成員は決して弱くない。下手に行動をすれば、こちらが返り討ちに遭う」

“カラス”は慎重に探知魔法で索敵を行い、再び歩き出した。

さらに30分ほど行くと、通路の先から騒がしい声が聞こえてくる。

そこは天井の高い、広大な空間となっており、盛大に酒宴が開かれていた。

騒いでいたのが商隊を襲撃した連中であると分かると、衝動的にイアンは飛び出しかけるが、“カラス”に制止される。

「待て。この数をまともに相手にするのは分が悪い。戦闘を避ける方法を考えるべきだ」

「避けるといったって、先に進むにはここを突破する以外にないだろ」

「君も浮遊の魔法は使えるだろう?薄暗い天井付近を通れば、酒に酔った彼らが気付くことはない」

“カラス”の提案は悪くはなかったが、イアンは首を横に振った。

「俺はこいつらに返す借りがある。お前は手を出さないでいい。俺一人でやる」

“カラス”が止める間もなく、イアンは一歩前に出ると、アーススパイクを発動させた。

突然地面から飛び出した無数の棘は、幾人もの身体を貫く。

その場は阿鼻叫喚の騒ぎとなり、賊たちは大混乱を起こした。

「狼狽えるな!侵入者だ!殺せ!」

まとめ役が声を上げたことで、正気に戻った賊たちは武器を手に取ってイアンに襲いかかってくる。

イアンは迫りくる敵を一人一人確実に仕留め、辺りに鮮血を散らした。

しかし、敵の数は予想以上に多く、背後に回った男がイアンに斧を振り下ろす。

危うく頭をかち割られるところだったが、“カラス”が魔法で男を吹っ飛ばした。

「手伝ってくれるんだな」

「ここで君に死なれても困る。増援が来る前に終わらせるぞ」

「ああ、背中は任せた」

イアンと“カラス”の連携によって、瞬く間に賊の数を減らしていく。

戦闘を放棄して逃げ出す者もおり、最後にまとめ役だけが残った。

「どいつもこいつ役立たずめ。お前ら、いったい何者なん…」

イアンの顔を認識したまとめ役は一気に青ざめ、慌てて剣を構える。

よくよく見ると、その手にあったのはイアンの剣だった。

「お、お前!なんで生きてる!?」

「何の話だ?」

「どうでもいいだろ。さっさと終わらせよう」

「この亡霊が!くたばれっ!」

まとめ役は叫び声を上げて、イアンに斬りかかった。

その攻撃を躱し、腕を蹴り上げると、剣は宙を舞う。

剣を掴み取ったイアンは、まとめ役を一刀両断した。

イアンは剣についた血を払い、しばらく上の空で死体を眺める。

「…何人か奥に逃げたようだ。すでに我々の存在は察知された。先を急ごう」

「ああ」

“カラス”に促され、イアンは先の道へと向かった。




その後、最深部を目指す道中、幾度となく戦闘が繰り広げられる。

イアンたちの侵入が伝わったことで、“血塗れの大蛇”は厳戒態勢を敷いたらしい。

ただ、隠密行動の必要がなくなったため、遠慮なく敵を倒していく。

幹部とみられる者たちとも相対したが、誰もイアンと“カラス”の進撃を止められなかった。

そして、遂に最深部と思われる場所に到達すると、腕に大蛇の入れ墨をした筋肉質な男と白衣を着た細身の男が待ち構えていた。

イアンたちに気付き、入れ墨の男が余裕たっぷりな笑みを浮かべて話しかけてくる。

「お前らが例の侵入者か?よくここまで来られたな」

「君が“血塗れの大蛇”のボスか?」

「ああ、そうだ。そっちの奴は知らねえが…お前、“カラス”だろ?最近、俺たちの拠点を潰し回っているらしいな。俺たちに恨みでもあんのか?」

ボスの問いかけに、“カラス”は低い声で応じる。

「…ポイゾ、という名に聞き覚えはあるか?」

「ポイゾ?ホレス、知ってるか?」

「もちろん知っているとも」

ホレスは下卑た笑みを浮かべ、透明な液体の入った小瓶を懐から取り出す。

「これは“ポイゾ”という毒だ。気化したこいつを一息でも吸えば、全身が焼けるような痛みとともに死に至る。この毒は僕の最高傑作の一つでね、完成した記念として実験場にした村と同じ名前をこの毒に付けたんだよ」

「そういや、そんなこともあったな。で、その村がどうしたって?」

「…君たちの愚行で滅んだポイゾ村は、私の故郷だ」

「もしかして実験の生き残り?おかしいな?試作品だったとはいえ、生き残れるはずがないんだけど…」

「あの日、私は隣村に出掛けていて難を逃れただけだ」

「なんだ、毒が効かなかったわけじゃないのか。あの実験は“ポイゾ”の効果を検証するものだったんだけど、僕の想定以上にバタバタと死んじゃってさ…自分の才能に思わず震えたね!」

当時のことを思い出し、ホレスは笑い声を上げる。

「黙れ」

短い一言の後、“カラス”はホレスに向かって魔法を撃った。

ただ、その攻撃はボスの剣の一振りによって阻まれる。

“カラス”は凄まじい殺気を放ち、ホレスへと問いかける。

「何がそんなに可笑しい?大人も子どもも死んだんだぞ?」

「そんな怒ること?僕の研究に貢献できたんだよ?むしろ、喜ぶべきでは?」

「人の命を何だと思って…」

イアンの前では常に冷静沈着だった“カラス”が怒りで肩を震わせる。

「おっと、昔話はここまでだ。どうやら番犬どもが集まってるようだからな。ホレス、例の改造人間を出せ」

「919号のことか?あれはまだ調教が済んでないんだけど…」

「こいつらの足止めにはなるだろ?どうせ、ここの拠点はまとめて放棄するんだ。捨てるくらいなら使っとけ」

「あーあ、また一からやり直しになるのか…」

ホレスは肩を落としながら、天井から垂れ下がった紐を引く。

すると、背後にあった鉄格子が開き、中から四本腕の異形の者が現れた。

「919号、あの二人を殺すんだ!」

ホレスの指示により、919号がイアンたちに襲いかかる。

その間に、ボスとホレスは洞窟の奥へと姿を消す。

「待て!」

“カラス”が追いかけようとするが、919号の猛攻に阻まれる。

「先に行け。ここは俺が引き受ける」

「しかし、君一人で勝てるとは思えないが…」

「舐めるな。この程度の相手、大したことない」

「…死ぬんじゃないぞ」

イアンが919号が抑えている間に、“カラス”はその脇をすり抜け、ボスたちの後を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ